タイトルを見て、ギクッときた。
ここ数年、なんとなく弱っている気がするのは歳のせいだと思っていた。アラフォー、体力は絶賛下り坂。だが、私より年上の人でもはつらつと元気な人もいる。
運動不足なのは自覚していたけれど、「食」の方にも問題があるかもしれない。
「なんとなく」食べているのはもちろんのこと、食べること自体が面倒で、大抵の場合は「仕方なく」食べている。
毎日食べたいものなんて思い浮かばないし、なんとなく栄養バランスが取れていたらOK。たまのご馳走は除いて、普段はできる限り簡単に済ませたいと思っている。
そういえば、学生時代も一人暮らしをしていて食がおろそかになり、体調を崩しやすかった時期がある。
歳のせいばかりと言わず、体力改善のヒントがあるのかもしれないとこの本を読み始めた。
本書は7章に分かれており、食事に関する心身の不調の原因やその対策について書かれている。
1皿目
私が自信を持てないのは「五感」を使っていないからかもしれない
2皿目
私がコミュニケーション下手なのは美しく食べていないからかもしれない
3皿目
私が自分を大事にできないのはひとりごはんを雑に食べているからかもしれない
4皿目
私が最近イライラするのは手料理をしていないからかもしれない
5皿目
私が毎日つまらないのは同じものばかり食べているからかもしれない
6皿目
私の体がだぶついているのは残念な食習慣に気付いていないからかもしれない
7皿目
私が大人になれないのはちゃんとした外食をしていないからかもしれない
「章」の代わりに「皿目」という単位が使われているのも、「食」への愛情が伝わってくるようだ。
こうして目次を追っていくだけでも、一皿ずつ(一章ずつ)フルコースをいただいたような気分になり、不思議とホクホクとした満足感が満ちてくるような気がしないだろうか。
私が特に気になったのは、5皿目。
毎日がつまらないとまでは言わないが、日々単調である。良く言えば、平和でもあるのだが、人生の大半を占める「日常」は、旅行などの「非日常」と違ってマンネリしがちである。
でも、その「日常」を楽しく過ごすか、退屈に過ごすかは自分次第。
1日3食の食事をどう選ぶか。「食べるもの」「食べる方法」「食べる場所」などに変化をつけることで刺激が芽生え、「食」を楽しむことができるという。
何を食べるか、どうやって調理して、どんな食器を使って、どこでどのように食べるか。固定観念にとらわれていたら、全く思いもつかないような小倉さんならではのアイデアが盛りだくさん。
食の専門家である小倉さんは、「365日、24時間、ずっと食のことを考えている」という。そうした習慣を長年続けることにより彼女なりの哲学を生み出したのだと思う。
この本を読んでいるうちに私は気付いた。
最近なんとなく弱っていた原因は、「食事」ではなく「エサ」を摂っていたからなのだということ。
食べるということは毎日当然の事だが、だからこそとても重要なこと。日々の生活の中でも時間を惜しまずに大切にしたいと改めて感じた。
食を大切にするというのは、高級レストランへ行ったり、手間がかかる料理を作ったりすることばかりではない。日常の中ですぐに採り入れることのできる方法が本書には多く書かれてある。
海外在住あるあるで、賞味期限の切れた日本食材を平気で食べるようになってしまっている。
生ものでなければ賞味期限が切れいてもお腹はそうそう痛くならないが、味は確実に落ちている。貴重な日本食材、処分してしまうのはもったいないので、大事にしすぎて賞味期限が切れる前に食べるようにしなければ。
半世紀かけて著者の小倉さんの気付いてきた食の哲学を知り、実践してみれば、パワフルな人生の後半を迎えられそうな気がする。
Written by 藤村ローズ(オランダ)