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「兄はもう一度だけ自分を信じた」宇宙兄弟 小山宙哉著

2024年8月26日

幼少期から宇宙飛行士になることを夢見ていた兄弟のストーリー

1993年10月28日、サッカー日本代表に起こった「ドーハの悲劇」の日に生まれた兄、ムッタ。

3年後の1996年9月17日、ロサンゼルスドジャースの野茂がメジャーでノーヒットノーランを達成した栄光の日に生まれた弟、ヒビト。

幼少期から共に宇宙飛行士になることを夢見ていた南波兄弟だが、成長するにつれて現実の厳しさに直面し、兄のムッタは夢を諦め、サラリーマンとして働くようになる。

一方、弟のヒビトはその夢を追い続け、ついにNASAの宇宙飛行士に選ばれ、月面探査ミッションに参加することが決まる。

ムッタには「兄とは常に弟の先を行っていなければならない。それが兄としての努め」という気負いがあるものの、何をやっても弟に追い越されてしまう。

弟と自分の違いに複雑な感情を抱えながらも、ヒビトの成功を喜び、ヒビトのことをからかった上司に頭突きをして、会社を解雇されてしまう。

失業したムッタは、再び宇宙飛行士になる夢を思い出し、挑戦する決意を固める。そんな中、日本の宇宙航空研究開発機構(JAXA)の宇宙飛行士選抜試験の機会が訪れる。

これをきっかけに、ムッタは自分の夢を追い求め、弟との約束を果たすために奮闘し始めるストーリーである。

第1巻は、月へのミッションが決まり、NASAで華々しいインタビューを受ける弟ヒビトと、会社を解雇され実家に戻ることになった兄ムッタという、真逆の立場から始まる。

長女である私も「あるある」となんとなく切なくなりながら、「兄、がんばれ」と心の中で応援し、ストーリーに引き込まれていった。

突然無職になってしまい、就職活動しても前職の上司の手は同業他社にも回っていて、断られることの連続。そんな中、母がこっそり送ったJAXAの宇宙飛行士選抜試験の書類選考通過の通知が届く。

家族や周りの人たちの助けもあり、幼い頃の「火星に行く」という夢を思い出したムッタは、JAXAの宇宙飛行士選抜試験に挑むことになる。

第2次審査を受ける45名は、知力・体力ともに優れた者ばかり。もちろん経歴的にはムッタも素晴らしいが、母親似の面白いキャラクターがそこかしこで炸裂しているのも本書の魅力の一つである。

「宇宙飛行士=超優秀な人」というのは正しいが、こんなに人間らしすぎる人が今後選考を通過して無事に宇宙飛行士になれるのか、ハラハラドキドキしながら、また、心の中で声援を送りながら読み進めていける。

というか、あらかじめ「ハマりすぎ注意報」を出しておきたい。

最初の3巻をとりあえず読んでどハマりした私は、大人の特権を生かして最新刊まで大人買いしてしまった。そして、最近出た44巻を買い足し、光の速度で読了したところだ。

ムッタだけでなく、どのキャラクターも個性がしっかり立っていて、インテリジェントなのにどこかコミカルなのがどハマりポイントだと思う。

全然知らなかった宇宙飛行士という職業や宇宙についての知識も得られ、宇宙がより身近に感じられるようになるので、大人にも子どもにもおすすめしたい本だ。

特に、夢を追うことを忘れそうになっている人には、一度読んでほしいと思う。

本書は、こちらから購入できます。(アマゾンアソシエイトに参加しています)

Written by 藤村ローズ(オランダ)

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