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「笑って泣ける家族の物語」ポンコツ一家 にしおかすみこ著

2024年10月21日

 

「ポンコツ」な家族の介護と笑いと愛の日常生活

「ポンコツ」という言葉は嫌いじゃない。

意味的には、機能性が低い、役に立たない、老朽化したもの、廃品といったネガティブな言葉だが、音の響きはコミカルで可愛い。

「パピプペポ」の音が入っている言葉は、楽しさを感じる人が多いというデータがあるそうで、私が可愛いという印象を持つのもそのせいだろう。

私が「ポンコツな人」から想像するのは、「期待された仕事はできないが、嫌われているわけでもない人」であり、「よく失敗するが大らかな人」である。発音の可愛さのせいなのか、ポジティブ要素が加わってしまっている。

よって、自分が役に立たなかった時に周囲から「本当、使えない」などと言われた日には、即座に落ち込んで部屋から出たくなくなるが、「もう〜、ポンコツなんだから」と言われても「てへ、ごめん。次はがんばる」で乗り切れそうな気がするし、許してもらえそうな気がする。

今回紹介する本は、「ポンコツ一家」昔、SM女王様キャラでテレビで活躍していた芸人の、にしおかすみこさんが書く自分の家族と介護の話。

家族紹介。
うちは、
母、80歳、認知症。
姉、47歳、ダウン症。
父、81歳、酔っ払い。
ついでに私は元SMの一発屋の女芸人。45歳。独身、行き遅れ。
全員ポンコツである。

著者がふと実家に戻ると、家中が砂まみれになっていたところから、母の介護の必要性を察知して実家暮らしを始める。

さすがの芸人らしく、家族のポンコツな行動に対するツッコミがテンポ良く思わず笑ってしまう。

著者が余裕のなさからつい「ポンコツがポンコツの心配しなきゃいけない身にもなってよ!」と怒鳴ってしまう場面では、父、母、姉3人それぞれが、ポンコツって誰のことを言っているんだとキョロキョロする。無自覚の3人が可笑し過ぎる。

特にお母さんの豪快さと口の悪さが、面白さに拍車をかける。

ケンカも日常茶飯事で、苛立ちながら正直にぶつかりあう家族からは、介護のリアルが垣間見られ、著者の介護対処法や考え方も勉強になる。

本を読んで私が抱いた家族4人の印象は、
母、ダイナミックで頼もしい二児の母。
姉、大らかで優雅なお風呂嫌い。
父、行動が裏目にでる。よく怒られる。
著者、しっかりものの優しい次女

パパクソと呼ばれる酔っ払いお父さんが若干かわいそうであるが、母、姉、著者の共通の敵になることで家族がまとまるとことが多いため、重要な役まわりであるともいえよう。

そしてお母さんの存在感と二人の娘への愛にグッとくる。母の心配が姉にだけ向きがちなことに著者が寂しく思う気落ちもグッときて泣きそうになってしまった。母は偉大だ。

どんなにポンコツな状況でも、家族の絆がユーモアとともにそこにあることで、家族をこんなに愛おしく見ることができるんだなぁ。

「ポンコツ」という言葉が愛すべき存在や状況を正直に表現していることが伝わってくる作品。著者が家族と共に過ごす中での葛藤や喜びは、多くの人が共感し、励まされるに違いない。

本書は、こちらから購入できます。(アマゾンアソシエイトに参加しています)

Written by 周さと子(マカオ)

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