知人に「最近読んですごく良かった本がある」と紹介された本書。「淡々と生きる」というタイトルにすぐに「読まなきゃ!」と思った。
なぜなら「淡々と生きる」ということは、いつからか私の生き方になっていたからだ。
日々淡々と、粛々とやるべきことをして生きていくとはとてもシンプルなことで、読む前は「この本は224ページもあるけれど、そんなに書くことはあるのだろうか」と読み始めたが、想像以上に壮大なスケジュールで描かれた本書に学んだことがとても多かった。
まず、本書の副題「人生のシナリオは決まっているから」にドキッとした人はいないだろうか?
私はたまに家族や友人とディスカッションをするのが好きなのだが、「人の人生は最初から決まっているか?」というテーマでになると、なかなかお互いの着地点を見つけるのが難しい。
私は昔からあまり根拠なく「決まっている」と思っていたのだが、息子は「じゃあ、生まれてすぐ死んでしまう赤ちゃんの運命って何?」と返してきた。
私は「その赤ちゃんが周りに影響を与えることが運命だったのかもしれない」などと答える。もちろん彼はまったく納得しないのだが。
運命があるかどうかは自分で見て確認することが難しいので、なかなか信じられないことだと思うが、ヘレニズム期の哲学を代表するストア派が紀元前の時代から「あらゆることは運命に即じて生じる」という運命論を説いている。
さて、本書を読み始めると、冒頭から思いもかけない言葉が飛び込んでくる。淡々と生きることの原点をたどると、「超能力」と関わったことに行き着くという。
正直に言うと、「あれ、胡散臭い本?」と思ってしまったのだが、東京工業大学の教授が主催する「超能力研究会」という至極真面目な団体に学生時代の著者が入ったということだった。
そこから、釈迦、聖徳太子、空海、坂本龍馬など歴史の教科書に出てくる人物が登場してくる。彼らは現代に生まれ変わってきているという。
人の生まれ変わりにはパターンがあり、人によって200年、300年、400年、600年ぶりとそれぞれとのこと。私もそうなのだろうか?まったく記憶はないが、そうだとしたら、自分の命に重みが増すように感じる。
私たちがこの世に何をしに来たかというと、「争わないで、戦わないで、目の前の人を一人一人、全部味方につけて生きていく」という風潮をつくるためだそうだ。
悟りとは、「自分の欲求や欲望をぶつけて、その結果をほしがることではなくて、そういう執着を全部捨てて、ただ受け入れること」だと言う。
一人だとつらいが、たくさんの人が集まればそういうことができるそう。確かにそうかもしれない!
また、「ありがとう」と感謝する心がとても強力な力を持っているという。リラックスして、楽しんで、喜んで、感謝するという状態でものごとに対すれば、人間の脳と宇宙とつながるらしい。
この生き方は、昭和時代くらいまで主流だった「気合いと根性」の世界とは真逆であり、「なんとかするぞ」と思った瞬間からなんともならなくなってしまうという、実に切ない話である。令和まで生き延びててよかったわ、私。
ここまでほんの冒頭部分を紹介したが、この本は平たく言うととてもスピリチュアルであり、実在の人物や著者自身に実際に起こった話が書かれているものの、やっぱり胡散臭いのかもしれない。
私自身は「信じたいけれど、実際にこの体で体験するまでは信じづらい」という中道派だが、いつか自分の目で見て体験できる日を楽しみにしている。
でも、スピリチュアルなことをまったく信じられない人にとっても、「感謝すること」「事実を受け入れること」ということはいつからでもできることだ。
生きることに困難を感じているとしたら、実行することでかなり生きやすくなるに違いない。
そして、もし生きる前から運命が決まっているとしたら、やはりとても生きるのが楽になるのではないだろうか?
すでに決まっているのだから、自分がやりたいことをやればいい。やりたくないことはやらなくてもいい。その結果を受け入れる。本当に簡単なことだ。
最後になるが、自分のことはなんとかなっても、子育てには悪戦苦闘してきたという人も私だけではないのではないだろうか?
「本当の親の愛情について」も本書の中に書いてあるので、気になる人はぜひ購入して読んでみてほしい。
Written by 藤村ローズ(オランダ)