ベストセラーシリーズ『フランス人は10着しか服を持たない』の第2弾である本書。
著者がフランス・パリで出会ったホームステイ先の名家を取り仕切るマダム・シックの暮らしを、アメリカの自宅で実践する姿を通して、「シックな暮らし」とは何かを具体的に示しています。
仕事や子育てで慌ただしい日常の中、もっと心地よく暮らしを楽しみたいと思った時、私はこの本を手に取りました。
「今の家でもっとシックに暮らす」とはどういうことか、知りたかったのです。
著者は「シックというのは、その人の雰囲気や心の状態。それに、生き方や在り方そのもの」と表現しています。
裕福であることや広い家に住むことがシックであるのではなく、日々の小さな所作を丁寧に行い、穏やかに暮らせる人こそがシックなのだと語ります。
そうした人たちは、内側から滲み出る不思議な魅力を備えており、それが人を惹きつけるのだと教えてくれます。
本書の魅力は、抽象的な概念にとどまらず、慌ただしい毎日でも少し意識するだけで日常に取り入れられる具体的なヒントが豊富なところです。
・特別な一日にするために自分らしいコーディネートを見つけること
・出かけない日でも身ぎれいにすること
・散らかりやすい場所は目にするたびに片付けること
・お気に入りの飲み物をゆっくり味わうこと
など、どれも特別な道具や大きな出費がなくても取り入れられる工夫ばかりです。
日常の小さな瞬間に意識を向けるだけで、暮らし全体に心地よい余白を生み出せると感じました。
子育てに関する内容でも印象的な言葉があります。
「学校や幼稚園が目的地なわけだけど、そこに行くまでの道のりも楽しんでほしいから」
家のこと、子どものこと、自分のことなど、やることに追われ頭の中が常に忙しい日々でも、移動の時間さえも楽しむ視点を持つことで、家族との時間を豊かにできると感じました。
私自身、天気の良い日はなるべく電車を使わず子どもと一緒に歩き、子ども目線での発見や会話を楽しむようにしています。
時間はかかりますが、効率よりも「この瞬間を味わう」という意識は、本書で学んだ「一つのことに集中する」という考え方と重なります。
さらに、日々の小さな動作に意識を向けることで、心が整う感覚も実感しました。
例えば、洗濯物を畳む、コーヒーやお茶を入れるなどのほんの些細な作業でも、それだけに集中すると、頭の中で考えていた心配事や悩みがスーッと消えていくのです。
著者も、人が多くの時間を悩みや考え事に費やしていることに触れ、日常の単純な作業に意識を向ける大切さを説いています。
本書は、日々の選択を丁寧に積み重ねたい人に、具体的なヒントとやさしい刺激を与えてくれる一冊です。
深呼吸をして、一つの作業に集中する。楽しみながら家事をする。
自分なりに少しずつ実践していくことで、家での暮らしに満足感を持ち、内側から滲み出る不思議な魅力を少しずつ育てられる気がします。
Written by 藤田久美子(日本)