コンサルタントとしていくつもの事例を見てきたし、あんなにも覚悟していたのに、私はまんまと「アイデンティティクライシス」に陥りました。
体中の力が抜けて地面に落ちていく感覚、やる気が出ないのにそわそわして、毎日パソコンで検索しました。何か私に出来る事はない?クリック、クリック。
そして、ほぼ同時に二つのボランティア活動と出会う事が出来ました。
一つは、海外在住の方が日本語で話せるヘルプデスクの相談員、そしてもう一つは、世界中にいる駐妻達のコミュニティで自分の専門性も活かせる活動です。
どちらもオンラインがメインで、世界各地に仲間がいます。同じ目的を持って確かに繋がっている事を実感し、元気を取り戻しました。
ペルーへ旅
その後、日本の友達の紹介でコラムを書き始め、翌年にはここ「世界ウーマン」にも加えていただきました。
少し行動したことで、次の活動へと繋がっていきました。活動を始めると、一気に歯車が回り出した気がしました。
同時に街の中にも顔なじみの人が出来、サポートしてくれるブラジル人との交流も出来るようになりました。
心にも余裕が出来、旅行も楽しめるようになりました。ブラジル国内は勿論、南米内やアフリカまでも行きました。日本にいたら絶対行けない所ばかりです。
反面、日本の常識では考えられないような事が日常茶飯事起こります。
ウチではよく電化製品が壊れます。洗濯機に至っては、3回壊れました。
その都度、修理を呼んでもすぐには来ないし、約束の日も何時に来るのか分かりません。来ても、今日は部品を持ってないとか、取り寄せに時間がかかるとか、いろんな事を言います。
冷蔵庫が壊れた時には、食品が腐るのではと氷を買いに走ったり、空き巣未遂騒ぎの後はドアの修理がなかなか終わらなくてヤキモキしました。
お陰で鍛えられ、期待のハードルが低くなり、呑気に構えられるようになりました。
カンピーナスの空
今、この2年を振り返って、3つの事に気付きました。
何もする事がなく、自己肯定感を失っていたけど、よく考えてみると私自身は何も変わってはいなかったのです。
仕事や人間関係は全てリセットして、何も持っていませんでしたが、自分自身が無くなったのでも変わった訳ではありません。
ゼロからのスタートの中で、環境の変化を出来るだけ早く受け入れて、できる事を小さくスタートさせる事が大切だったと、今思います。
世界中がこれまでに無い生活を強いられたこの数ヶ月は、あの頃感じた無力感や孤立感に似たものを感じました。
でもそこにいる自分は自分なのだから、できないことを嘆くのではなく、今出来る事を自分らしく行えばいいのだと気付きました。
ブラジルでは一年中、何か花が咲いている
駐妻の中には、帯同期間中に帰国後を見据えて語学を磨いたり、MBAを取得する人も多く、みんな素晴らしい努力を重ねています。
そう言ったハードスキルに対して、駐妻経験から得た人間力やストレス耐性、メンタルタフネスは、駐妻のソフトスキルとして大いに評価されるものだと感じています。
実際、日本へ帰ってから再就職活動すれば、それを評価してくれる会社も多々あります。
だから仕事という面では「ブランク」かもしれないけれど、ここはちょっと「ブレイク」して、ヒューマンスキル向上のため英気を養っているのだと考えています。
私も間違いなくこの2年間で大抵の事には驚かなくなり、どんな状況にあっても問題を解決する力が備わった気がします。海外暮らしは、アクシデントをいかに楽しめるかですよね。
マリアフマッサ カンピーナス↔︎ジヤグアリューナ観光用蒸気機関車
何と言っても、誰かと繋がる事が大切です。
夫達は会社へ行けば、良きにつけ悪しきにつけ、そこに人間関係が有りますが、駐妻は自分からネットワークを構築しない限り孤立です。
物の本によると、人は多様な繋がりに幸福感を感じるのだそうです。また、深く強い繋がりばかりでは疲れてしまうそうで、ゆるく繋がる事もコツのようです。
その意味では、日本へ置いてきてしまった繋がりにもゆるく関わり、海外へ出た後築いた関係も大切にするのが良いかな、と思います。
出来たら多様な、数カ所の知り合いを作ることおススメします。特に、私は同じ目的を持つ仲間との活動を通して、日々救われています。求められ学びを得、認められてやり甲斐を感じ、仲間に勇気付けられる事が多いです。
これらが、ブラジル生活3年目に突入する私が今思うことです。
これから海外へ出られる皆様!何も持っていなくてもあなた自身に変わりはない、そこにいることに価値があります。
是非新しい生活の中で人間的バージョンアップを図ってくださいね。
そして何より仲間は大切。色々な人と知り合い、ゆるーく繋がって、ハッピーなな日々をお過ごし下さい。Seja forte, seja feliz.
Written by 岩井真理(ブラジル)
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