コロナが始まった頃のブラジルの様子
周囲の駐妻との良い関係を続け、現地の知り合いも増えました。南米を中心に旅行に行ったり、ボランティア活動をしたり充実した日々が2年ほど続いた頃、コロナがやって来ました。コロナは私達の暮らしを大きく変えました。
日本人家族のほとんどは、会社の方針で日本へ一時避難帰国をしました。帰国する彼女達もまた、突然の不可抗力により駐在生活を中断する事になりました。
我が家は夫の仕事の都合で残留が決まり、2020年の4月の末には、私の周りには数人の駐妻しか残っていませんでした。
「また、戻って来れるのかな?」「このままじゃ終われない」「まだ、やり残した事があるのに」など、みんなそれぞれの胸に複雑な気持ちが渦巻いたと言います。
残る私も、いつという確信の持てない「またね」という挨拶に、胸が痛くなりました。
それから半年ほどすると、同じ地区に最後までいたご家族がアメリカへの転勤が決まり、私は地域唯一の日本人駐妻になってしまいました。かつて25人ほどいた駐妻たち。何かと頼りにしてたのに、ひとりぼっちとは。
そもそも人に会うこともなかったけれど、それでももう近くには誰も居ないのだと思うと、少し心細くなりました。
世界中がパンデミックに振り回され、心の問題を抱える人も少なくないと感じる事が多くなりました。自分自身も「明日のことは分からない、とにかく今日を何とか生きなくては」という気持ちでした。
そして、年の瀬が近くなった頃、夫の帰任について内示が出ました。最後の一年、どこへも行けず、何もしてないのに、これで駐在生活が終わるんだな〜と、やや消化不良な気持ちになりました。
私の中にも、「こんなはずではなかったのに」という思いが少なからず込み上げました。
帰国した祖国日本の景色
その後、コロナ禍で帰国した人達が、それぞれのモヤモヤする胸の内を語ってくれました。
「日本の暮らしが窮屈に感じる」
「予定外の帰国に、心がついていかない」
「なんだか胸にポッカリ穴が空いたみたい」
「日本は自分の国なのに、違和感がある」
「海外での出来事は、あまり話せないかんじ」など、異口同音に、なぜかしっくり来ないと言います。
実はこの感じ、私も薄ら感じます。コロナで色々な事が変わってしまい、余計に以前の日本とは違う感じがします。ニューノーマルと称して、これまでにない事が取り入れられています。一方で、街中や電車の人混みの多さには、ビックリ。
来た来た!これは、噂の「リバースカルチャーショック」に違いありません。
リバースカルチャーショックとは、海外生活を終えて自分の慣れ親しんだ環境(文化圏や国)に戻ってきた人が経験する、自分の文化への再適応に伴い感じてしまう驚きや戸惑いのことです。
それでもまた、生活を立て直さなくてはなりません。帰国後最初の2週間は、自粛生活で身動きが取れませんでした。その後、引越、役所巡り、荷物が届く、荷解き、足りない物を揃えたり、とにかく目まぐるしく動きました。
身体はフル回転ですが、心は空回りします。何故だろう、自分の国にいるのに、またモヤモヤします。
再度フリーランスとして働こうと考えているので、これまでご縁のあったところや新たなお仕事相手を模索中です。コロナの影響もあり、ややゆっくり目ですが、ありがたい事にいくつかお仕事は入っています。
しかし私には、特にココという行く場所はありません。それにひきかえ、夫にはとりあえず会社という行くべきところがあります。
日本から海外へ出た時も、海外から日本へ戻った時も、その土地の文化や生活に馴染もうと努力すればするほど、自分の居場所や立ち位置を探し、悶々とします。
戻ってきたココ日本そのものが、自分にとってのHomeというわけではなく、自分が居心地良くいられる場所や立場が、本当のHomeなのだと思います。
海外生活後のリバースカルチャーショック、そうなるのはよくある事で、当たり前なのです。逆に海外に出たからこそ知ったこと、感じた事もあって、それは間違いなく新しい経験値になっているのです。
これから日本へ帰国する方、またはいつか帰国する方、行きも帰りも、心は揺れます。
でも、知っておけば大丈夫!環境変化の中で、頑張ったからこそ、この心理的動きが大きいのです。
Written by 岩井真理(日本)
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