ロンドン内で演奏する場合、ライセンス(許可)の申請が必要な場所、そうでない場所、パフォーマンスの種類によって決められた場所など規則があります。ロンドンの地下鉄の構内で演奏するにも許可が必要です。
音楽関係の知人に、「興味があるならオーディションが開催されているので受けたらいいよ」とアドバイスを受けて、さっそく調べて申し込みました。
しかし、すぐに自動返信メールが返ってきて「オーディションは2017年まではやっていたんだけど今は募集してません」とのことでした。せっかくチャレンジしてみようと思ったのに、自動返信メールですぐに道が閉ざされる。チーン。。。
この駅でバスキングをするための場所取りも大変なんだとか。半月ほど前に、電話で予約申し込みをしなければならないそうなのですが、電話もつながりにくいし、人気のある場所はすぐ埋まってしまうそうです。
ロンドン地下鉄の公式バスカーになった日本人も過去に何名かいらっしゃいます。
オーディションに通りやすいのはやはりなんらかの特徴のあるパフォーマンスとのことで、日本人なら日本人っぽくするのも手だと教えてくださった方がいらっしゃいました。日本の楽器や日本の演奏スタイルなんか、受けるかもしれませんね。
今回、私は地下鉄のバスキングのオーディションすら受けるチャンスがありませんでしたが、実際にオーディションを受けて活動し始める際には、保険への加入が推奨されています。
駅構内で演奏するバスカー
バスキングをしている時に起こりうる様々なトラブル、例えばバスカーのチップを盗んだり、ゴミを投げて来たり、酔っ払いにからまれたり、楽器が傷つけられたりなど、様々なことが考えられます。
試しに見積もりを取ってもらったところ、月に約25ポンド(約3800円)。日割りで保険をかけることもできるとのことでした。
どこの国や都市もそうかもしれませんが、現在、ロンドンではキャッシュを使う機会は極端に減っています。特に、ロックダウン以降は人の手を介する現金を避け、キャッシュレス化が加速したように思います。
こうなると、困るのがバスカーたち。ギターケースや帽子を自分の前に置き、「チップを入れてね!」という紙が書いてあるのがバスカーですよね。
私もバスカーを見たら必ずギターケースの中にチップを入れるようにしていますが、最近は現金を持ち合わせてないことも増えてきて、チップを渡したいのに渡せない状況が発生していました。
現在の市長のサディク・カーン氏が指揮している「Busk in London」というプロジェクトの一環で、バスカーたちにもカードや携帯をピッとタッチすればチップを贈ることができる機器が提供され始めているそうです。
あるバスカーの横に「カードをタッチしてチップをください」とこの機器が置いてあるのを初めて見た時は、びっくりして2度見してしまいましたが、最近ではこの光景も見慣れてきました。
今まで見かけたのは2ポンド(約300円)が自動引き落としされる仕組みになっていました。金額を変えたい時はどうすればいいのかな?!と思いながら横を通り過ぎています。
バスキングできる場所に案内してくれた警察官と
動き出しはじめると、世界が変わりはじめる!有難いことに協力してくださる方が出てきました。私の着付の先生が「よっしゃ!手伝おう」と言ってくださり、ユニオンジャック柄の帯も用意してくださいました。
ロンドンでの名だたる美術館でもお仕事をされている先生なのですが、「着物の文化の発信」の一環として今後もお着物を提供してくださったのです。月に一回程度のバスキングに、今後も付き添ってくださることになりました。
路上デビューには、そこまで繁華街というわけではないですが、家からもアクセスがよく、演奏しても差し支えないと聞いた場所を選びました。
重い器材をスーツケースの中に詰め込み、運びました。初めにセッティングしようとした場所は、ショッピングモールの敷地内だったらしく、許可が必要な場所で、すぐに警察官から注意を受けました。
でも「あっちなら大丈夫だから。連れて行ってあげるよ!」と場所を案内してくださいました!なんと心優しい警察官でしょうか。
初めてロンドンの街で歌った自分の歌。練習不足でどうしようもなかったけど、有言実行にしたかった。そして、無理やりだったかもしれないけど、決めた日にとりあえず実行しました!
演奏のレベルはロンドンクオリティをかなり下回ってしまい申し訳ない気持ちもあったけど、もうこれから精進するしかありません。着物姿が珍しいのか私が歌っている動画を撮影されている通行人の方もいらっしゃいました。
「ニーハオ」とか「アンニョンハセヨ」などと声をかけられたりもして、欧州の地から遠い東の果ての文化はまだまだ浸透していないのだな、と思い知らされたりもしました。
でも私の国の言葉だなと思ってその国の言葉で挨拶をしてくださった方々のその気持ちが本当に嬉しく、感謝しかないです。新人ロンドンバスカーとしての道は続きます♪
Written by 伊藤結子(イギリス)
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