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2021年夏、スペイン・バルセロナの世界遺産、サグラダファミリア聖堂を訪れて

2021年9月27日
ホーゲデウア容子 (ベルギー)

自然界に着想を得た樹木を思わせるシンボリズムの森が創造された教会の内部

敬虔な宗教家であったガウディの想いが至る所に

1882年、聖ヨセフの日に聖堂の礎石が置かれ、建設が始まったこの聖堂は、最初、建築家フランシスコ・デ・パウラ・ヴィリャールに依頼された。だが、ヴィリャールは教会の建築に使う建材のことで教会と話し合いがつかず、すぐに辞めてしまう。

1883年暮れ、もう一人の建築家ジュリアン・マルトレイが当時31歳の若き建築家、アントニ・ガウディを起用するよう提案し、彼が設計し直してスタート。

敬虔な宗教家であったガウディの想いは、至る所にある。

生誕のファザードと呼ばれる、イエス・キリストの誕生、生命の歓喜や愛情が様々なところに表現されている。その彫刻群は、秘密コードのようにありとあらゆるところから見られる。

また、自然界を愛してやまなかったガウディの特徴として、植物の形をモチーフにした素晴らしい柱頭が作られ、床のモザイクには葡萄や葡萄のつる、鳥が描かれたり、自然が沢山、盛り込まれている。

幼少の頃から、自然が大好きで、自然を感じていたガウディならではの発想である。全ての像、可愛らしいモチーフにも全て意味があるのだ。

ガウディが、ブルジョアの家の建設の仕事をしていたことは有名だ。海のような不思議なマンションを作ったこともご存知な方は多いはず。公園も一番の理解者だった豪商グエル氏とのプロジェクト、カサ・バトリョの家の建築などでも有名だ。

だが、ガウディは60歳を迎える頃、自分の人生の残りの日々を聖堂、生誕のファサードの建設、教会の残りの部分を設計することに捧げると決心。グエル公園内の邸宅を離れ、サグラダファミリア聖堂内の、仕事場に寝床を構え、没頭することになる。

 

同じところを何度も見て、感じ、日々違うその景色を楽しむ

ガウディの印象的な言葉、「正しく物事を行うのに、先ずは、愛だ、次に技術」

プロジェクトの遅れを気にするワーカーたちに対して、「私のクライアントは、急いでないよ」と神がクライアントだという想いで芸術性に妥協せずに、仕事を進めるガウディだったという。

この想いを感じずにはいられない、壮大な夢の中にいるような教会。これは、百聞は一見に如かず。

こうして世界遺産を今この時期に訪れてみて、経済的な事情を抜きにして、このくらいの人の中でいつも見れたらいいなとの印象を持った。

通常だと、有名な世界遺産などを訪れると、画像で見た方が感動的で、観光客が多すぎて辟易して帰ってきたという経験も少なくない。

旅行は自粛されている方も、近くの世界遺産を改めて、また楽しむのも良いかもしれない。いつもより深く勉強したりしながら、来訪すると、新たな発見があるはずだ。

日本人にも人気のフランスの哲学者アランが、その著書”幸福論”の中で、

「私は、旅行で多くのところに行き、行ったことだけを自慢する人達を理解できない。一箇所で、同じところを何度も見て、感じ、日々違うその景色を楽しむことが幸せなのではないだろうか」と言っている。

近所の世界遺産、国宝級の建物、町を守ってくれているお寺や神社、観光客が来ない今のうちに、日々、季節の変化を感じながら、自分のものとして楽しむのもいいかもしれない。

グエル公園のモザイクのベンチで。普段ならこんなにゆっくり座れないかも

Written by ホーゲデウア容子(ベルギー)

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