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今が旬!イタリアのトマトの話。種類や歴史、使い方など

2022年6月30日
桜田香織 (イタリア)

イタリアにトマト嫌いな人はいない?!

シチリア在住、桜田香織です。イタリア料理に欠かせない食材と言えば、まず第一に挙げられるのがトマトでしょう。

意外かもしれませんがチーズ嫌いなイタリア人は結構な割合で存在しますが、私の知っている限りで「トマトは苦手」と言う人には出会ったことがありません。一年中何かしらの形で食卓に登ります。

南北に長いイタリア、そして統一された国となってからたったの160年くらいということで、郷土愛の強い国であることは以前触れたかと思いますが、その理由で土地によって郷土料理も変わります。

そんな中でトマトだけは確固たる立ち位置を持っているようです。

イタリアのトマトの種類は豊富でありますが、日本のように「桃太郎」だとか、「アイコ」だとか、固有名詞はつけられていないと思います。少なくともシチリアではありません。トマトの品質によって名前がつけられているだけです。

 

一口にトマトと言っても形は様々

左:サラダ用のトマト。緑色ですが、しっかりと味はあります。右上:セミドライトマト。右下:エストラットを作っているシニョーラ

今の時期はもちろんフレッシュなトマトが美味しく、私も毎日せっせと食べています。では実際、イタリア料理において、トマトはどのように使われているのでしょうか?

生:サラダ用。普通にレタスと合わせたり、シチリアではトマトサラダも人気です。更に、玉ねぎ、インゲン、茹でたじゃがいもと一緒に食べる物美味しいです。

加熱する場合は、少し刻んでパスタのソースに加えたり、魚のローストにも使います。トマトソースを使用するよりもフレッシュ感があります。

トマトソース(ペースト):トマトを煮込んで裏漉しをします。勿論瓶詰も売っていますので、それを使用することもありますし、水煮缶使って作ることも。特に冬場はもっぱらこちらを使用します。主にパスタに使いますが、ミートソースやシチューを煮込む時必要。

エストラット:トマトソース、もしくはペーストを天日で完全に水分を抜いた物。時々混ぜながら、どんどん水分を抜いていきます。数日かかります。

これは北イタリアでは見かけたことがなく、フィレンツェ在住時代は知りませんでした。南イタリア特有だと思われます。

水分が全くない粘土状の物で、濃縮度が高いため、ほんの少量を水に溶いて使用すると、ソースも野菜スープもあっという間にできてしまう便利品です。

ドライトマト:日本でも知られていると思いますが、イタリアでもよく使用されます。完全に乾燥した物は、一度水で戻してから(干し椎茸の感覚)、私はセミドライの方が使いやすくて好きです。

特にチェリートマトのセミドライは常備してあり、帰国の際のお土産にも。そのままオリーブオイルやハーブ、唐辛子と漬け込んでも美味しいし、オムレツの具や、サラダに入れることもあります。

 

トマトの歴史

魚料理にも溢れるトマトソース

イタリアでこれだけ愛されているトマトですが、実は割と新しい野菜です。

16世紀にスペイン人が南アメリカに到着し、唐辛子、じゃがいも、とうもろこしなどと一緒にヨーロッパに持ち込みました。そして当時スペイン統治下であった南イタリアに持ち込まれました。

最初は有毒であると考えられていて、もっぱら観賞用とされていましたが、徐々にイタリアの貧困層の人達が食用にしようと考える人が出てきて、試行錯誤がなされたとのこと。

一般の食用となったのは、18世紀に入ってからです。これはあくまでも南イタリアの話で、北イタリアではもっと遅かったということです。

一方日本では17世紀半ばに持ち込まれ、やはり最初は観賞用でした。食用となったのは明治以降で、更に日本人の味覚に合うよう品質改善が行われ、一般に好まれるようになったのは何と昭和に入ってからでした。

トマトは大好きですが・・・、最後に個人的なことを少々。夏になるとシチリア人の食卓には、週3回くらいはトマトソースを使用した料理が登場します。ほとんどの場合、やはり夏野菜である茄子と合わせた、「ノルマ風パスタ」というパスタです。

これはシチリア人のソウルフードの一つでありますが、そして美味しいのは間違いないのですが、飽きてしまう!家人が好むので作りますが、私は8月中旬には「もういらない」となってしまいます。

そして北と比べると、南イタリアのトマトソースは量が多いのです。本当に溢れるトマトソースの愛に溺れる、そんなシチリアの夏の食卓であります。

Written by 桜田香織(イタリア)

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