左:ホストが用意した乾杯のための歌詞カード、右:ザリガニが溢れるテーブル
ゲストが到着したらアクアヴィートで乾杯、クレフトシーヴァの始まりです。
ザリガニは頭を捻って離し、味噌を味わい、胴とハサミの殻を割って身を取り出し食べ進めますが、ここで予想外だったのは殻が硬いこと。
指の皮が剥けそうになるので私はすべて夫に任せています(笑)。チャレンジしたい方は、ぜひ薄手のゴム手袋をご利用ください。
もちろんシーヴァですから、楽しい会話はもちろんのこと、食事中は何度もホストがセレクトした歌を全員で歌い、最後に「スコール(乾杯)!」と叫んで盃を空け、笑顔を交わし、またザリガニに向き合います。
大切な人たちとともに食べて、飲んで、歌って笑い、秋冬に備える大切なイベントがシーヴァなのです。
スウェーデンの有名湖産ザリガニ。持ち帰り用バケツにはディルの花も一緒に入れてくれます。
中医学(中国伝統医学)における春夏の養生ポイントは「春夏養陽(しゅんかようよう)」。
太陽が輝く夏の間に自然界の「陽」を体に取り入れ養うことで、今を元気に過ごしつつ、やがて来る秋冬に冷えによる不調を起こさないように体を調えます。
陽は明るくて勢いよく動くエネルギー。日光浴や楽しいイベントは陽を高める養生ですし、体を温めて滋養になるものを食すことも陽を補うことになります。
そうやって「蓄えられた陽が、寒くて暗い秋冬と戦うパワーの源になる」、その養生を「冬病夏治(とうびょうかち)」といいます。そのための食材の一つがザリガニなのです。
ザリガニの中国語名「小龙虾」を現代の日本漢字に当てはめると、「小龍蝦」。
文字通り龍のように力強く補う「大補」の食材で、体に陽のエネルギーを補い、胃腸を丈夫にして、体力免疫力を高めると言われています。同様に「大補」の蒸留酒とは良コンビ。
北欧の人たちが競うように夏の陽射しを浴びて集い歌いクレフトシーヴァを楽しむのは、長年の経験による知恵なのかもしれません。
本人たちが意識していなくても。長く厳しい冬への備えをする、クレフトシーヴァは立派な薬膳イベントなのです。
8月にスウェーデン旅行を予定される方はぜひ体験してみてくださいね。
※ザリガニは体を温めてエネルギーを補うので虚弱な方に良いとされる一方、体が丈夫で熱が籠りやすい高血圧の方などに不向きですが、楽しむ程度に食べることは問題ないとされています。
Written by 高見節佳(デンマーク)
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