しかし、フランスではこのように、「お客さんより働いている人の幸せを大事にする」という考えに出くわすことが多々あるのです。
例えば、パリの地下鉄。日本では当たり前の「間もなく電車が参ります」のアナウンスなどありません。
電車に乗り込んでからも、次の停車駅を親切に知らせるアナウンスはありません。乗り過ごさないように、乗客側が常に気を張っていなくてはいけないのです。
さらに、スーパーでの買い物。日本であれば、レジの担当者がかごから商品を出してレジを通し、別のかごにきれいに入れてくれるのが一般的ではないでしょうか。
フランスでは、お客さんがベルトコンベアーのように動く台に、購入したい品物をかごから出して置き、すべて出し終わって会計をしたら、自分で袋に入れていくというように、せっせと動かなくてはいけないのです。
一方、レジ係は何をしているかというと、ベルトコンベアーを動かして悠々と品物をスキャンし、袋詰めのスペースへ置くだけです。
フランスに来た当初は、「フランスの人は全然仕事しないな」ぐらいにしか感じていませんでした。
でも、仲良くなったフランスの人に私達が経験してきたことを話してみたところ、「働いている人の幸せを大切にしているんだよ」という答えが返ってきて、その時すべての行動が繋がったように感じました。
先程の遊園地の例も、従業員が働いた後の休む権利を大切にしており、そのためにはお客さんを待たせることになっても構わないのです。
どの時間帯でもレストランで食事ができることは確かに便利です。でも、その素晴らしいサービスや利便性が長時間労働の原因になってしまうので、フランスではしないのです。
地下鉄のアナウンスも、働いている人の仕事が増えてしまうので、あえてしないのです。
スーパーでも、レジ係の仕事は会計をすること、お客さんができる袋詰めはお客さんにと、ある意味合理的です。
違いを理解していないと、「こうするのが当たり前でしょ?」と、相手を責める気持ちだけが強くなってしまいますが、違いを理解することで、不必要な衝突や不満を減らすことができます。
フランスの生活は、日本のように利便性を求めることはなかなかできませんが、不便な中で工夫して生きていく術を身に付けることができたと感じています。
お読みいただきありがとうございました。私達の経験が皆さんの家族で話し合う、1つのきっかけとなりましたら幸いです。
私自身が海外と日本で教育を受け、海外と日本で子育てをしてきたからこそお伝えしたい、ご家庭でできるグローバル共育。
Family Journey1.2.3では、グローバル親子コミュニケーションを通して、日常生活を楽しく学びにするヒント、フランスのバカロレア・トップの学校に通っている我が家の子育てなどについて、お伝えしています。
それでは、また次回のコラムでお会いしましょう!Bonne journée!
Written by NAOKO(フランス)
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