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メンタルヘルスクライシスに陥った私がようやく脱出できたきっかけ

2024年8月12日
林いくえ (カナダ)

次男の3回目の事故現場。次男は車の中から出られず助けを待っている状態

メンタルヘルスクライシスに陥る

2年前の記事でもシェアしましたが、真夏に40日間水を使えない生活を経験したことがありました。

水問題のハプニングは、その後2年間にわたって立て続けに起きる試練の始まりであったことは、あの時は知る由もありませんでした。

水問題が解決されてまもなく、次男の判断ミスによる交通事故がありました。

その5カ月後、ようやく次男一人で運転を再開した夜、交差点を渡りきるところで今度は赤信号を無視した車に横から衝突される事故に遭いました。2回とも車は全損。人が無事であったことが奇跡でした。

そして、今年の2月、次男は冬の雪道でコントロールを失い、危うく70メートルほどある崖から墜落しそうになりました。

スピードが出ていなかったおかげで、道路に設置されてあったケーブルに助けられ、前輪が宙に浮いた状態の車の中から助けを待つ次男のもとに駆けつけた時は、今度もまた次男が守られたことに感謝しかありませんでした。

次男もショックを受けていましたが、私たちにとっても水問題での出費に加わり、保険の値上がりと車の損失による予期外の出費が重なったことで、金銭的負担が一気に重くなりました。

試練の波が次々と押し寄せてきても楽観的で怖いものなしだった私が、メンタルヘルスクライシスに陥るに至ったのは、新しく子犬を迎えた後でした。

子犬でしたが、大型犬のため、修理できないほどのひっかき傷で床全体がダメージを受け、家具は破壊され、階段のカーペットも剥がされて木材がむき出し状態。

家具の買い替えも、床の張り替えも、階段の修理も金銭的に難しいため、廃屋のようになった我が家を見る度に何も改善できないことに心が重苦しくなるばかりで、無力を感じました。

 

人生の谷底を彷徨う生活

ずいぶん回復し、病棟の中を散歩して病室に戻ってきた入院中の父

ストレスにストレスが重なり、更年期障害であろう症状が体のあちこちに現れ、身体的な変化に悩まされ、戸惑う日々が始まりました。

と同時に、反抗期に入った三男との衝突も増え、常に緊迫状態であったため夫婦仲にも亀裂が入り、家族仲もギクシャクし、眠れない夜と重い体を引きずる日中を繰り返す日々。

人生の谷底を彷徨うような毎日に追い打ちをかけるかのように、台湾に住む父の健康状態にも問題が起き、父の看病のために3カ月台湾に行くことになりました。

自分のメンタルヘルスもままならない時に父の看病なんてできるのだろうかという心配もありましたが、長年親元を離れて暮らしてきた私にできる親孝行は、父が一番家族を必要とする時に傍にいてあげることだという思いがあっての決断でした。

ですが、実は3カ月の台湾滞在は、私の心の癒しの旅となったのです。

息苦しい生活から一旦離れることができ、私の心の糧である御言葉とお祈り、父との会話や病気の父に付き添うことを通して異なる視点から自分の人生を見直し、思考する時間が与えられました。

私にとっては、神からの恵みであり、命綱でした。

 

環境を整え、生活を軌道に戻す

カナダに戻った私は、再び生活を軌道に戻す決心をし、最初の2週間は、断捨離と家の掃除、整理整頓に毎日朝から晩まで動きました。

子犬に破壊された家、「どんなに掃除をしても修復できないから意味がない」という諦めの気持ちから投げやりになっていましたが、汚れや埃が拭われ、家の中が整理されると同時に、私の心も少しずつ明るくなっていきました。

かすかな心境の変化ですが、「今できることをやるだけでも違う」ということが分かりました。

例年ならば、雑草に占領された庭を見る度に、庭仕事が苦手な私はため息が出るばかりでしたが、今年は覚悟を決めて、可哀そうな庭を助けてあげることにしました。

2日かけてやっと玄関の両側にある花壇の雑草を取り除くことができ、人の住む家らしくなったことに、筋肉痛になる価値があったと喜ぶ自分がいました。

その勢いで同じく雑草に占領された裏庭とほったらかし状態だったデッキも整理し、ガゼボ、不用品で頂いたパティオソファなどを配置すると、バックヤードが一新しました。

さらには、土埃や木くずに覆われ、足場もないくらいものが散らかっていた車庫も2日かけて掃除し、駐車できる状態に戻すことができたのです。

今年の夏はカナダにしては蒸し暑く、庭仕事や車庫の掃除をした後は熱中症になりかかった私でしたが、苦労した甲斐があり、カナダの短い夏を満喫できる憩いの場が出来上がりました。

 

心のお掃除は住まいのお掃除から

リフレッシュのためのリラックスできる環境を持つことの大事さを改めて実感したこの夏は、数年間のメンタルヘルスクライシスから脱出し始めた記念すべき夏です。

私の背丈以上にそびえ立つ雑草を引き抜いた瞬間、自分の心も軽くなり、整った庭や家の中を見た時、心の中もすっきりしたのが分かりました。

「環境が整ったことで心が喜ぶ」ということに気づいたのは初めてです。なるほど、日本では「トイレ掃除をしなさい!」と言われるわけですね。

環境が心を影響するのも事実ですが、環境は心の反映であるのも事実です。私の環境はまさに私の心を映し出していたんだと納得できました。

「できないことではなく、できることにフォーカスする」シンプルな原則。

自分の思うようにならなくとも、できることをすることで少しずつ何かを変えることができます。

これからは自分のメンタルヘルスをチェックする習慣を身に付け、心が喜ぶ環境を作ることを常に意識していくつもりです。

Written by 林いくえ(カナダ)

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