8月31日はムルデカ(マレー語で独立や自由の意味)、マレーシアの67回目の独立記念日です。
1511年にポルトガルに占領されてから、約450年の間、オランダ、イギリス、日本、そしてまたイギリスの植民地として支配されてきましたが、1957年8月31日にイギリスから主権を取り戻し、マレー連邦として独立しました。
そして、9月16日はマレーシアデイです。これは1963年にマラヤ、北ボルネオ(現在のサバ)、サラワク、シンガポールがマレーシア連邦という1つの国になった日です(2年後にシンガポールは分離独立)。
2つのマレーシアの祝日真っ最中の今、街でも学校でもいたるところにたくさんの国旗が飾られています。
マレー系、中華系、インド系の異なる宗教や文化が共存しているマレーシアに長年住んでいると、今では当たり前のこととして受け止めることができています。
でも、移住当初は日本とは異なる文化や習慣に驚くことも多く、どのように適応すべきか、ビジネスマナーや日常生活での注意点などが気になりました。
現在は、「みんな違ってみんないい」という、それぞれを尊重しながら我が道を行くマレーシア人のスタンスがすっかり気に入っています。
今回のコラムでは、移住当初に驚いた異なる文化や習慣について思い返してみました。
マレーシアの街中やホテルのレストランは、イスラム教の方に配慮した豚肉とラードを使用していない店が多いです。
先日、ママックショップ(長時間営業で朝から晩まで食事ができる、インド系が経営しているカジュアルでリーズナブルなレストラン)で、犬を座席に座らせて食事をしていたカップルが物議を醸し、店はしばらく営業停止になりました。
イスラム教では、犬は豚と同じように不浄の存在です。もし触れたら、決まりに従って7回の洗浄をしなければなりません。
ですので、ムスリムも訪れる店に犬を連れて来ることはマナー違反です。店主も注意すべきでしたが、ノンハラルの店ではペットOKのカフェなどもあります。
マレーシア人と食事する際、ムスリムと一緒ならノーポーク・ノーラードの店を選ぶことはもちろん必須ですが、インド系の方と一緒なら牛を食べてもいいか確認すべきです(インド系でも牛を食べる方も食べない方もいます)。
中華系の方でも、仏教のため牛を食べない方やベジタリアンだったり、月に2回ベジタリアンデーがあったりするので、確認してから店を選ぶ必要があります。
また、1年に1ヶ月間のラマダン(断食)期間中は、私たちもムスリムの前では食べたり飲んだりしないというのが、相手を思いやるマナーになります。
イスラム教の戒律により、肌を出さないマレー系が60%以上を占めるマレーシア。イスラム教徒同士では厳しいですが、他宗教の方には寛容です。なので、基本的にさまざまな服装の人がいます。
イスラム教の女性は肌を見せない長袖、ロングスカートやロングパンツ、ヒジャブというスカーフをかぶって髪も見せないのが普通ですが、中華系はオシャレ目的や単に暑いという理由で露出の多い服を着ていることも普通です。
結構な年齢のおばさんでも、スタイルを問わずショートパンツとTシャツとビーチサンダルで歩いている人も多く、最初は驚いたものです。
運動のシーンでも、ブラトップとレギンスでお腹を出している人もいれば、中東の敬虔なムスリムのように、全身黒づくめで目だけ出してウォーキングしている人もいます。
ただし、役場など公共の場では、肌を露出しない服装でないと入れないというルールがあります。運転免許の手続きにノースリーブやミニスカートで行って、建物に入れてもらえなかったという話もよく聞きます。
映画やコマーシャルなどではセクシーなシーンは御法度でカットされますが、夜のクラブなどではポールダンスやセクシーなダンスを見ることもあります。
日本では、映画のスケジュールは上映開始時間が記載されていて、その時間までに席に座ることになっていると思いますが、マレーシアで記載されているのは入場時間です。記載時間の5分前から着席できます。
そこからコマーシャルがはじまり、本編に移るので、実際の開始時間がよく分からないことがあります。本編開始後に遅れて来る方も多く見られます。
また、エンドロールが流れるとすぐに席を立って帰る人ばかりで、場合によってはエンドロールが流れ始めたら清掃の人が入ってくることもあります。じっくり最後まで観たいのに、追い出されるかたちになることもしばしばです。
マレーシアでは「マレーシア時間(Malaysian time)」という概念があり、時間に対する感覚が柔軟な場合があります。
予定された時間よりも遅れることがマレーシアらしいというか、遅刻して来ても、「まあ普通だよね」という感覚です。
約束の時間に待ち合わせ場所に来なかったり、式典やイベントが予定の30分から1時間遅れることもしばしばあります。
逆に、オンタイムで物事がスタートすると驚くぐらいです。私は日本人らしく、時間を守るようにしていますが。
会話の中でよく使われる「マレーシアボレー(Malaysia Boleh)」という言葉。「マレーシアはできる・可能」というような意味です。
楽観主義や決意を込めた、「マレーシアとその国民が偉大なことを成し遂げられる」というスローガンですが、笑いながら言う場合、「マレーシアでは交渉次第でなんとでもなる」という意味合いでも使われます。
この「自分次第でどうにでもなる」という柔軟さが堅苦しくなく、気に入っています。
飲食業界(F&B、食品メーカー)向けのビジネスマッチング、視察コーディネイト・ガイド、ハラル製品化コンサルティングについて仕事を受けています。お問い合わせはインスタグラムのメッセージでお願いします。
Written by 土屋芳子(マレーシア)