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東南アジアの働く女性を支えるメイド文化から学んだこと

2024年10月30日
大野由佳 (ベトナム)

東南アジアの働く女性を支えるメイド文化

Xin chào!(シンチャオ)こんにちは!ベトナム・ホーチミン在住のグローバルキャリアコーチYukaです。

東南アジアの女性はとにかく元気で、活発によく働きます。仕事も子育てもしながら、社会の中で活躍する女性の存在感は年々増しているように感じます。

世界銀行のデータからも、ASEAN加盟国における女性の労働参加率(15〜64歳の女性人口比、ILOモデルによる推計値)は、2021年にベトナム(74.2%)、カンボジア(73.6%)、シンガポール(72.6%)、タイ(68.5%)と高い水準を示しています。

ちなみに日本の同年における女性労働参加率は73.8%。

出典:ジェトロ「ビジネス短信」2023年6月2日版より

数字で見れば日本も高いのですが、冒頭に挙げたような「社会の中で生き生きと働く女性たち」というイメージが日本ではあまりしっくりこない気がします。

私自身、日本と東南アジア(シンガポール、タイ、ベトナム)で働き暮らしてきた経験を通じてそのギャップを考えた時、女性が働きやすい社会の仕組みに一つ鍵があると思います。

中でも最も大きな違いとして挙げられるのは、家事・育児のサポート体制が整っていること。

駐在員などの外国人に限らず、現地の一般家庭でもメイドやベビーシッターを使うことがごく普通のことである点が挙げられます。

実際、私もシンガポール赴任を機に東南アジア暮らしが始まってからは、メイドさんにお世話になっています。

今回のコラムでは、私のメイドさん体験から得られたことについてシェアしたいと思います。

 

各国で異なるメイド事情

私にとって最初のメイド雇用体験はシンガポールでした。当時、息子2人を連れて母子3人でスタートした海外生活でしたが、慣れない土地で仕事と家事と子育てを回すのは早々に限界を迎えました。

その時にシンガポールオフィスの先輩女性から言われた「あなたは仕事をするためにここに来ているのでしょう?ならば、仕事でパフォーマンスを出すためにメイドを雇いなさい」という言葉は今でも忘れません。

「家事・育児は自分がやらなくては」と思うがあまりに、本来の目的を見失っていたことに気が付きました。

そこから周りの友人や同僚にメイドの探し方や雇用の仕方を教えてもらい、住み込みメイドを雇うことにしました。

シンガポールでは、メイドはフィリピン、インドネシア、マレーシア、ミャンマーなどからの外国人労働者がほとんどで、住み込みでの雇用形態が一般的です。

各家にはメイド用の部屋やバスルームが備え付けられているので、一つ屋根の下で暮らすことが可能です。

一方、タイやベトナムでは、パートタイムで通うタイプの雇用形態が一般的です。掃除だけ、料理だけ、ベビーシッターだけというように、用途に応じてサポートをお願いするケースも多く見られます。

また、現地で出産される家庭では、メイドの他に赤ちゃんのお世話を専門にするナニーを雇うことも珍しくありません。

シンガポールでもタイでも、現地の女性たちは産後2カ月で現場に復帰するのが普通です。これこそ、家族や周りのサポート体制ができているからこそ実現できることと言えます。

 

敢えてすべての家事を手放したことで見えてきたこと

我が家で実際にお願いしていたことは、シンガポールではフルタイムの住み込みメイドだったので、家事全般(掃除、洗濯、買い物、食事、片付けなど)に加えて、子どもたちのスクールバス出迎え、習い事への同伴、長期休み中のお出かけまで全面的に頼りにしていました。

私自身は平日はすべての家事タスクを任せ、休日は自分たちがやるスタイルを取りました。

それでも当初は、「食事くらいは自分が作らなくては」「日本の味を子どもたちに食べさせたいから」と私が頑張っていました。

しかし、みんなが外に遊びに行ってしまった家で独り食事の支度をしていた時に「私は一体、何をやっているんだろう?」と急に虚しさを感じ、自分の優先順位が違っていたことに気付きました。

「私が得たかった時間は子どもたちと一緒に過ごすことではないのか?」。

そして、すぐにメイドに「平日3食すべてお願いしたい」と相談し、日本食のレシピをいくつか渡したところ、どれもとても美味しくて、「私じゃなくても良かったんだ」と安心して、感謝の気持ちと共に手放すことができました。

 

無意識に抱えている「ねばならない」は?

一方、タイ、ベトナムに来てからは、子どもたちも成長したことやコロナ禍で私たちもリモートワークにシフトしたこともあり、家の掃除のみをお願いするようになりました。

共働き子育て家庭においては、子の成長に応じて、その時々で必要となるサポートも異なっていきます。

シンガポール時代にメイドを勧めてくれた先輩女性も、「子供に手がかかるのも一時のことなのだから、今この時間を大切にしなさい」という言葉を一緒に掛けてくれました。

「東南アジアで働く」という機会を得たことから巡り合ったメイド文化でしたが、私にとっては、「今この瞬間の自分にとって大切なことが何なのか」「いまやり遂げたい本当の目的はどこにあるのか」について考える大きなきっかけとなりました。

一度、思い切って手放してみたことで、改めて、「どんな場面においても私たちは自分の得たいものを取捨選択していける」ということにも気付きました。

皆さんも自分の中で無意識に抱えている「ねばならない」があるのではないでしょうか?ぜひこれをきっかけに少し考えてみてはいかがでしょうか。

ベトナムでの暮らしの様子や日々の気づきはInstagramアカウントで発信しています。ぜひこちらもフォローしてくださいね! 

Written by 大野由佳(ベトナム)

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