以前、オーストラリアでのワーキングホリデー体験を、日本のメディアがもてはやしている報道を目にしたことがあります。
「オーストラリアの最低賃金は時給2千円以上」「めちゃくちゃ稼げて貯金もできる」「働きながら英語スキルもゲットできちゃう」と、あたかも簡単に一攫千金が狙える国として、オーストラリアを持ち上げていました。
この報道で多くの若者たちが大きな期待を胸に、「オーストラリアにワーキングホリデー体験に来た」と聞いています。
しかし、最近のメディア報道は180度反対の内容になっているようです。
「オーストラリアではなかなか雇ってもらえない」「仕事をすぐにクビになった」「物価が高すぎて経済的に困窮する」など、今度はオーストラリアのワーホリ体験のトラブルにフォーカスする報道が目につきます。
今回は、そんなオーストラリアのワーホリ報道に対する私個人の考えを、自身の経験と共に書いてみたいと思います。
私はワーキングホリデーの経験はありませんが、日本からシドニーに移って来たばかりの頃は、ホスピタリティ専門学校の学生でした。
当時の私は、それまでまったく経験がなかった「調理師」としての仕事を得るべく、現在のワーホリの皆さんがやっているように、ネットで求人に応募したり、街のレストランに履歴書を持ってお願いに行ったこともありました。
そこで痛感したのは、「業界での職歴や経験」を評価する雇用主の多さでした。
一刻も早く仕事を見つける必要があったにも関わらず、職探しが難航した私は、就職エージェントを使って調理師の仕事を得ました。
そして、シドニー在住歴が10年を迎えようとしていた2018年に調理師からキャリアチェンジを図りました。
それまでまったく経験がなかった精神障害者のサポート業界で仕事を探し始めましたが、ここでもまた「経験の壁」にぶつかりました。
手当たり次第に障害者サポート団体に履歴書を送るも、まったく返事が来ない日々が続き、たまに返信が来たかと思うと、「今回は採用は見送ります」という内容でがっかりする日々がしばらく続きました。
経験がない業界で仕事を得るというのは私にとって時間を要するものでしたが、最終的には仕事を得ることができ、現在もその職場で働かせていただいています。
最後に、メディア報道の真偽について私の意見ですが、「まったくの偽りではない」ということです。
オーストラリア政府が定める最低賃金は日本のものより高いので、職種の選択や働き方によっては確かに稼げるでしょう。
日本人ワーホリの方々と交流があるシドニー在住の友人に話を聞いたのですが、社会人経験と英語力があるワーホリの方々はホテルの仕事やオフィスの仕事などを得て、生き生きと頑張っている人が多いそうです。
その一方で、「経験や語学力が不足しているワーホリの方々が職探しに苦労している」という報道もされており、個人的には納得できる報道です。
オーストラリアでは即戦力になる人材が求められることが多々あります。雇われたとしても、その職務を遂行するためのスキルが英語力を含めてあまりにも低かったり、それに加えて「向上しよう」という意識が見られないと、解雇されることもあります。
スキル不足の理由だけではありませんが、今までの私の職場でも解雇になった職員は複数います。
片面の報道だけを信じるのではなく、例え失敗して日本に帰国したとしても、その経験をこれからの人生の糧にする力がある人は、オーストラリアでのワーホリ体験を一生の宝物にできる「ワーホリ成功者」なのではないでしょうか。
思い切って日本を飛び出し、「海外で働く」という大仕事に挑戦した勇気だけでも称賛に値するものだと信じます。
・シドニーの旅のお手伝いします – ロコタビ
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Written by 野林薫(オーストラリア)