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笑いは言語を越えられる?ジョーク通訳の難しさと成功させる秘訣

2025年1月15日
Yoko van Veen (カナダ)

ジョークの通訳は難しい?

A HAPPY NEW YEAR from Canada! 皆様今年もよろしくお願いいたします!

ここ最近、元日は友達と「Polar Bear Plunge」というものをしています。文字通り「Polar Bear (白クマ) 」のようにほぼ凍っている湖に 「Plunge (飛び込む) 」して気合を入れる!というものです。

昨今は寒中水泳や冷水シャワーの健康へのメリットが科学的に実証されており、健康に関心のある人やとにかく元日に何かしたいというカナダ人の間では、このPlungeが毎年恒例のイベントになっています。

水温が低いので、今まで感じたことのない不思議な感覚に包まれますが、何となく厄が落ちる感じもあり、新たな気持ちで新年を迎えられました。

「今年も笑いの絶えない年にしたいな」と願いながら今回のコラムの題材を考えていたのですが、「笑い」つながりでジョークの通訳について書くことにしました。

ジョークの通訳は毎度とても悩みますし、仕事が終わってから反省することが多々あります。

ジョークは言葉遊びや文化的な背景と深く関わるため、それらを共有しない人に違う言語で的確に面白さを伝えるのは容易ではありません。

大半はジョークを通訳した後に、その意味や補足説明をしなければならないので、通訳自体も長くなってしまいます。

ジョークを言った方は通訳が終わるまで、皆さんが笑ってくれるかどうかを不安げにじっと待っているので、私としては「簡潔にかつオリジナルの面白さを保たなければ」と余計に緊張します。

 

冗談が全く通じず、変な空気に…

例えば先日のことです。カナダ人があるトピックに関してプレゼンを行い、日本人男性30名ほどが聴講をしていました。

プレゼンの途中でカナダ人の方がトロント出身の世界的有名なラッパーであるドレイクの名前を出してさらっと高額納税者に対する冗談を言いました。

通訳者である私はその通りに日本語に訳しましたが、聴講者は皆さん50代前後。誰一人としてドレイクの存在を知らなかったために、それが裕福な方だとも分からず、結果その冗談が全く通じず、変な空気になってしまいました。

私は慌てて「ドレイクさんとは・・・」と説明を追加してやっとスピーカーの冗談の意図を分かってもらえましたが、長い通訳になってしまったために瞬発力がなくなり、冗談の面白さは減ってしまいました。

カナダではどんなに有名なドレイクでも、国や場所、聞き手の年代によっては彼の認知度は全く違うものとなるということをスピーカーがきちんと理解していれば、このような事態は必ず避けられます。

ですが、私がスピーカーに「むやみやたらに冗談を言わないで」ということはお願いできませんし、それは私のわがままな願望でしかありません。

むしろ冗談が飛び交う雰囲気であるということは、スピーカーがリラックスしているという喜ばしい状況と捉えるべきです。

ですので、通訳困難なジョークが出てきた時には「通訳者としての実力が試される場をもらった」と感謝できるようになれればなと思っています。

 

訳すのが大変なジョークを必ず笑ってもらう方法

笑いは世界共通だと言われますが、それは共通の認識や背景が理解できて初めて成り立つものですので、その分野に関する通訳は一筋縄ではいきません。

ですが、訳すのが大変なジョークを、背景説明をせずに必ず笑ってもらう方法が一つあります!

それはと言いますと、もし誰かがジョークを言いましたら、「ただいま〇〇さんがジョークを言いました。しかし、通訳不可能なジョークですので、とにかく思い切り笑ってあげて下さい!」

これは誰も傷付けない外交通訳でもあり、正当な通訳方法ですので、皆様もジョークの通訳に困ったら使ってみて下さい!

今年もたくさん笑って過ごしましょう!

元日の「Polar Bear Plunge」で見る初日の出

Written by ファンフェーン庸子(カナダ)

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