前回、日本で働くインドネシア人についてのコラムを書いたのは約3年前になります。この3年の間に、状況はどのように変化しているでしょうか。
データと、私自身が通訳やライティングの仕事を通して見聞きしてきたリアルな状況を、書ける範囲で書こうと思います。
日本の人口は未だ減少傾向にあり、少子高齢化もさらに進んでいます。これにより、日本国内の労働力人口不足もさらに進んでいます。
一方で、インドネシアの人口は3億人に届こうとしていて、統計局のデータによると、総人口の中でも子どもと20-40代の人口が占める割合が大きいです。
世界の平均年齢を見ると、日本の平均年齢が50歳に届こうとしている一方で、インドネシアの平均年齢は30歳くらいで、労働力となる世代人口の差は一目瞭然です。
長い目で見ると、今後数十年の間にインドネシア国民の平均年齢も上がり、高齢化が少しずつ進む見込みと言われていますが、現状はまだまだ労働力となる若い世代が多いです。
私はインドネシア語レッスンの主宰以外にフリーで通訳の仕事もしていますが、この1-2年の間で携わらせていただいている通訳案件の多くは、インドネシア人材に関するものです。
日本留学・就職フェアの会場。このようなイベントが年に何度も開催されています。
例えば、多くのインドネシア人材が活躍している製造、食品、介護、農業などの業界では、今もなお多くのインドネシア人材を求めています。
日本の企業や介護施設、そして自治体からもたくさんの方々がインドネシアを訪問していて、「インドネシア人はまじめで人当たりが良い」という声も多く上がっています。
社員として正式に雇用され、インドネシアから家族も呼び寄せ、日本で長く働くことが期待されている人材も一部見られます。
外国人材の雇用のための制度がどんどん整えられる中、今注目を集めているのがドライバーの仕事です。都市部・地方いずれも、ドライバー不足が深刻だと言います。
公共交通機関もやむを得ずダイヤを大幅に減らしたり、物流業界では物の配送が遅れたりと、人材不足は人々の生活に影響を及ぼし始めています。
そんな中、全国初の外国人バスドライバーとして採用されたインドネシア人のニュースは、日本とインドネシアの両国で大きく報じられ、話題となりました。
今年に入ってからすでに複数組の協会や企業のインドネシア訪問に通訳として同行させていただいていますが、ドライバー不足問題の解決のため、インドネシア政府や警察などの機関とのやり取りが活発に行われています。
首都ジャカルタで開催された日本の空港スタッフの採用会。
冒頭で挙げたインドネシア人材についてのコラムの公開から3年の間に、日本国内の外国人材の数は増え続け、今では200万人を超えています。
まだまだ外国人材の需要は増え続けていて、バスやトラックなどのドライバー人材だけでも、少なくとも40万人の人材が必要だと言われています。
もちろん日本の人々の安全にも関わる業種なので、日本基準の安全を条件に、日本・インドネシア両国で対策も話し合われています。
インドネシア以外の国々、特にミャンマー、フィリピン、ベトナムでも同様に多くの人材が求められているようです。
介護やドライバーなどほとんどの業種では、対人関係や規則を理解するため、一定レベル以上の日本語能力が求められ、それはビザ取得の条件でもあります。
私自身はインドネシア語講師で日本語は教えていませんが、それにも関わらず、「日本語講師をしてくれませんか」という依頼を何度もいただいています。
この外国人人材獲得の動きは、海外で働きたい、または海外の企業と働きたいという日本人にとってもチャンスを広げていると感じます。
外国人材をビジネスチャンスと捉え、大きな企業から個人起業家の方々までがインドネシア進出を行っています。
日本語能力試験対策の指導ができる日本語講師や、職業訓練校や送り出し機関での指導ができる日本人材の求人の話もよく見聞きします。
そういった面でも外国人材の分野は、今後も多くの日本人の皆さんから注目されるのではないかと思います。
その反面、増え続ける外国人との共生に不安を感じる日本人も多いと聞きます。人口減少・少子化がますます進む中で、日本政府の対策や国民の声・動きに注目が集まります。
今は人口が多いインドネシアを含め、世界の他の国々も数十年後には同様の問題を迎える可能性があります。
海外在住の一日本人としても、今後の日本がどのようにこの問題と向き合っていくのか気になりますね。
参考文献:我が国の人口について|厚生労働省
参考文献:拡大する外国人材雇用、その背景と今後の期待とは(ジェトロ)
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Written by スパルディ杏子(インドネシア)