パブリックスピーキングとリーダーシップスキルが学べる教育団体「トーストマスターズ」をご存じですか?
トーストマスターズは、1924年にアメリカで創立されて以来、世界143か国で35万人以上のメンバーがコミュニケーション力とリーダーシップスキルの向上を目指して活動しています。
私がトーストマスターズを知ったのは十数年前のことです。言語表現が不得意だった長男のために子ども向けのトーストマスターズがあると聞いたのです。
期待しながら調べたところ、最寄りのクラブは1時間半ほど離れたトロント市内にあると分かり、その時は泣く泣く諦めました。
昨年、知人が20年間もトーストマスターズに関わっていることを知り、社会人向けのトーストマスターズは私たちの住む小さなカナダの田舎町にもあると聞いて、成人した息子に勧めました。
私自身も興味があり、気軽に見学できると聞いたので、卒業前で忙しい息子より一足先にトーストマスターズを体験してきました。
今回は、その時の様子をシェアしたいと思います!
気軽に参加できる会とのことだったので、勝手に「カジュアルなスピーチの練習会」をイメージしていました。
実際は、講演時のマナーやルール、時間管理、メンバーからの論評などが組み込まれており、思っていたよりも正式な会で驚きました。
例えば、講演者が前に移動する際には、在席の方が拍手をします。講演者が「ステージ」に立つと、司会者は講演者と握手してから自席に戻り、着席します。
スピーチ終了後、講演者がステージを去る時も、司会者と握手してから席に戻るというルールがあります。
拍手は講演者への敬意を示すものであり、司会者との握手はマイクの前に立つ方のバトンタッチを象徴しているそうです。
75分間の例会では拍手の音が途切れず、常に握手が交わされていたのが印象的でした。
普段なじみのあるカジュアルな北米文化をほとんど感じない「フォーマルな雰囲気」に、少し違和感を覚えるほどです。
例会では、司会者の挨拶に始まり、出席者が参加の理由を含めた簡単な自己紹介を行います。その後、ユーモア担当者(Humorist)が最近あった面白い出来事をシェアします。
次に、司会者があらかじめ用意した「今日の単語(Word of the Day)」を紹介し、その意味を説明します。
新しい単語を学べると同時に、その日のスピーチの中で使うことで即興力のトレーニングにもなります。即興でその単語を使った方には、メンバーから拍手が送られました。
ちなみに、この日の単語は「Resplendent(きらびやかな)」で、初めて知った単語だったので勉強になりました。
毎回の例会では、決められた話題(Table Topic)に対して、2分以内の即興スピーチを行う機会があります。メンバーだけでなく、見学者や初参加の方もスピーチに挑戦できます。
すべてのTable Topicのスピーチが終了した後、その日のTable Topic Masterを匿名投票で決定します。
Table Topic Masterが決まると、いよいよその日の講演者(2〜3名)による7分間のスピーチが始まりました。
時間内にスピーチを終えることも重要なポイントの一つであり、時間管理を担当するタイマーがいます。
赤・黄・緑のミニ信号のようなライトを使って、1分前、30秒前、時間終了のタイミングでそれぞれの色のボタンを押し、講演者に知らせます。スピーチ時間も記録され、フィードバックに活用されます。
そのほかにも、講演者一人ひとりに評論者が割り当てられ、評論者はスピーチを聞きながらメモを取り、スピーチ終了後にマイクの前に立って2〜3分間のフィードバックを共有します。
私がただ内容を聞き入っていたのとは対照的に、評論者たちは、
「〇〇と言った瞬間に体をこちらに向けたのが良かった」
「〇〇の話をしている時にスピードを落として、注意を引いたのが良いテクニックだった」
「〇〇を言っている時にはこうするとさらに良くなると思う」
といった、非常に具体的で的確なフィードバックをしていたのが印象的でした。
その後、参加者全員に紙が配られ、匿名でのフィードバックやベストスピーチの投票が求められました。素人の私が…と恐縮しながらも、素晴らしいと感じた点をシェアさせてもらいました。
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