今回は、海外キャリア20年を振り返るコラムの続きです。新卒時代とインドネシアの縁を書いた【前編】はこちらからどうぞ。
日本でホテル勤務をしていた時、留学時代の友人がタイのホテルに転職したことをきっかけに、タイ旅行へ行きました。
友人が勤務するバンコクのホテルに宿泊させてもらい、タイのホテルでの仕事についていろいろと聞かせてもらいました。
そこで、これまで考えていなかった「アジアのホテルへの転職」という選択肢が浮かびます。
友人の協力もあり、その後すぐにタイ国内のホテル就職の話が決まりかけますが、当時のタイの政治状況によりこの話はなくなります。
既に気持ちはアジア転職に向いており、ここでやめるという選択肢はありません。そこで思いついたのが、インドネシアへ行くこと。
インドネシアにはたくさん友人もいるし、旅行で一度行っているので大丈夫だと確信し、すぐに行動しました。ジャカルタ市内のホテルの求人を見つけて応募し、スカイプで面接をして内定をいただきました。
海外への就職となると、家族に反対されることもあると思います。
私の場合、高校卒業後すぐに海外に出ているため、海外就職自体は家族の反対はないだろうと思いました。
しかし、インドネシアというまだまだ日本で馴染みの薄い国への海外転職だったので、家族に話す前に準備をしておこうと考え、インドネシアの最低賃金や生活費などの情報をまとめた資料を用意し、プレゼンして無事に承諾を得ました。
この時のことを今振り返ると、「本気で何かをやりたい時、人はすぐにこんなに行動ができるものだ」と思います。
こうして、インドネシア・ジャカルタでのホテル勤務がスタートしました。
ホテル業、語学、海外生活、すべて学生時代からやりたいと思っていたことです。仕事が大変でも「楽しい」としか思いませんでした。
好きなこと・やりがいの二つが重なると、こんなに仕事も生活も充実するということを実感する毎日でした。
同業のホテル業界の日本人ともつながりを持ち、最初のホテル勤務一年目が終わる頃に、他の五つ星ホテルでの仕事のオファーをいただきました。
面接では「なぜ自分がホテルで働くことが好きなのか」を自分の言葉で伝え、結果として採用していただくことに。人・タイミングなど、すべての条件が揃った幸運なジャカルタ市内での転職が叶いました。
転職先のホテルでの仕事も毎日楽しく、若いうちにこのような経験をさせていただいたことに感謝しています。
二十代後半になり、インドネシア人の夫と結婚。夫の仕事の関係で、ジャカルタから地方へ引っ越します。
第一子を出産後、「また仕事復帰をしたいな」と思っていたところ、ホテル時代の先輩から「日系企業で通訳ができる人を探している」と聞き、すぐに応募・面接し、仕事が決まりました。この日系企業で約10年働くことになります。
この期間で、製造や労務関連などさまざまな会議での通訳やイベントのスピーチの経験を経て、ビジネスインドネシア語が大幅にレベルアップ。
さらに、海外取引先とのミーティングや通訳といった多くの経験を積ませていただき、英語・インドネシア語を常に使う環境で仕事をしました。
コロナ禍に10年勤務した会社を退職してからはフリーランスとなり、インドネシア語レッスン主宰、ライティング、そしてインドネシア語の通訳・翻訳業を始めます。
会社員時代にフリーランス事業に向けての準備をしており、活動も少しずつ始めていたことから、フリーになってすぐの時期にもありがたいことにお仕事をいただけていました。
コロナ禍でSNSでの発信をする人が増えたこともあり、オンライン上でのご縁が広がり、通訳や翻訳の機会も増えます。
コロナが明けると、オフラインでの会議やイベント、日本からの視察や訪問、展示会出展などでインドネシアを訪れる日本の方たちも増えました。
また、日本での深刻な労働人口減少によりインドネシア人材の需要も増え、昨年以降、人材関連の案件も急増しています。(このことについて書いたコラムはこちら)
フリーになってからも、人とのつながりとタイミングに恵まれ、やりがいのあるお仕事を楽しみながらさせていただける状況が続いています。
改めてこの20年の海外キャリアを振り返って総括すると、私はいつも人に恵まれてきました。
海外歴が長い先輩に「チャンスや仕事は人が運んでくるんだよ」と言われたことがあります。
いただいたお仕事をしっかりとこなすことは大前提ですが、目の前にいる人、協力してくれる人、気にかけてくれる人、いつも周りの人に感謝の気持ちを忘れずに接することはとても大事です。
「人とのつながり× 行動力」が掛け合わさると、自分で思う以上の可能性が広がります。初心を忘れず、これからの20年目以降も、いただくお仕事を一つ一つ丁寧にこなしていこうと、改めて身が引き締まる思いです。
インドネシア語やインドネシアの生活・文化について、インスタグラム & ブログで発信しています。ぜひ覗きにきてくださいね!
Written by スパルディ杏子(インドネシア)