突然ですが、映画における「文化コンサルタント」という職業をご存じですか?
一言で言うと、日本国外で撮影・公開される映画のセット、小道具、衣装、台詞において、日本語や日本の文化が正しく描写されているかを監修する仕事です。
そこに描かれる言語や文化が正確で、かつ敬意をもって表現されるように修正やアレンジを加えていきます。
分かりやすい例を挙げると、撮影中に柔道の選手が靴下を履いて試合をしていたとします。
日本人や柔道経験者であればすぐに間違いに気付きますが、柔道に馴染みのない制作スタッフの中には、何が違うのか分からない人も多くいます。
そこで出動するのが文化コンサルタントです。この間違いを指摘し、靴下を脱いで撮影してもらいます。
『賭ケグルイーBET』予告編ーNetfrixより
最近、ネットフリックスで公開された『BET』というシリーズの撮影に、私は日本文化のコンサルタントとして参加しました。
このシリーズは、人気アニメシリーズ「賭ケグルイ」の北米実写版としてカナダで撮影されました。
主人公は日本生まれという設定でした。
そのため、彼女が使用する小道具に書かれている日本語の文章は正しいか、セットにかかっている掛け軸の書道の文字は正しいかなど、一秒も画面に映らない箇所まで隅々確認していきます。
「日本文化の誤解や炎上を防ぎたい」という製作チームの思いがとても強く、「日本文化をリスペクトしてくれてありがとう」という感謝の気持ちがあふれました。
映画にはさまざまな分野の専門家がコンサルタントとして参加します。
今回の作品にはカードゲームの場面が多く、カードの持ち方やディールの方法を役者に教えるために、カジノからプロのカードディーラーを雇っていました。
喧嘩のシーンには武道の専門家、動物が出てくるシーンにはその動物の専門家、車が爆発するシーンには爆発の専門家(!)が参加していました。
日常ではまったく出会うことのない職業の方々と知り合い、それぞれが自分の専門分野を監修しながらも、相手の領域を尊重して一つの作品を作り上げていきます。
映画製作に各分野の専門家が参加することは、一般的には当然と思われるかもしれませんが、「文化の専門家」がコンサルタントとして参加するようになったのは、比較的最近のことです。
多くの人が目にする作品に誤った表現が使われていれば、日本文化に対する誤解を生むだけでなく、時間やお金をかけて制作した作品の信憑性やリアリティを欠く危険性もあります。
だからこそ、一人でも多くの人に日本の文化を忠実に伝えるために、文化コンサルタントを制作メンバーに加えるこのトレンドには、私は大いに賛成しています。
Written by ファンフェーン庸子 (カナダ)