インドネシアの首都ジャカルタの中心地に、「サリナデパート(Sarinah)」というデパートがあります。
中心地にありながら、周囲には大型の高級モールが多数立ち並び、失礼ながら少しさびれて目立たない存在でした。
そのサリナデパートが、2020~2022年にかけて大規模なリノベーションを終え、現在では多くの住民や観光客がショッピングや飲食を楽しむ場として再び賑わいを見せています。
実はこのサリナデパート、1962年に初めてオープンした国営デパートという歴史があります。当時のスカルノ大統領の肝いりで建設されました。
目的はインフレの抑制と国民生活の安定であり、日本からの戦後賠償金を活用し、日本の大手ゼネコンによって建設されたのです。
そして、1962年の独立記念日である8月17日に、インドネシア初の国営百貨店として華々しく開業しました。
この建設から開業に至る経緯については、書籍などでデヴィ夫人も言及しているのを見かけたことがあります。
初の国営デパートというだけでなく、館内にはインドネシア初のエスカレーターも設置されました。現在は使用されていませんが、展示として残されています。
また、1966年にはインドネシアで初めてのマクドナルドがオープンしたことでも有名です。
1990年代以前のサリナデパートを知る人々に話を聞くと、「地下にあったスーパーマーケットは、外国人が日用品を買う場の一つだった」と、思い出があるようです。
館内では、衣類や食品、インドネシアの工芸品など、魅力的な商品が販売されていました。
最先端だったサリナデパートですが、近代化と経済成長の波に伴って次々と建設される高級モールの陰に隠れるように。いつの間にか古びた建物は徐々に存在感を失っていきました。
しかし、2020~2022年のリノベーションを経て、サリナデパートはモダンな姿へと生まれ変わり、再び人々を惹きつける場所となったのです。
リニューアル後のロビーには、サリナデパートの歴史を紹介する展示コーナーも設けられています。
特にお土産品のフロアでは、インドネシア国産ブランドのチョコレートやコーヒー、お茶などが、おしゃれなパッケージに包まれて販売されており、見ているだけでも楽しめます。
工芸品も従来の銀細工や木彫りの人形だけでなく、モダンなデザインのインテリアや食器、かわいらしい民族衣装を着た人形など、多彩に揃っています。
さらに、リノベーション中には、機械室だったとされる場所から驚くべき発見がありました。
スカルノ大統領から譲られたとされる、長さ12メートル・高さ3メートルの巨大な石の彫刻(トップ画像)です。
数十年もの間、そんなものが眠っていたとは驚きです!この石の彫刻も、現在はロビーに展示されています。
お仕事や観光、フライトの乗り継ぎなどでジャカルタに立ち寄る機会があれば、ぜひ訪れてみてください。
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Written by スパルディ杏子(インドネシア)