広場に建てられた夏至柱Midsommarstång 白樺の木に草花で飾り付けをします
スウェーデンの人々が待ち望むもの、それは夏!
冬が長い北欧の人々にとって、太陽が輝く夏は万物の生命力を実感する季節です。
その喜びを表し、豊穣や子孫繁栄を願って行われる夏至祭は、クリスマスやイースターと並ぶ三大行事の一つです。
一年で最も昼が長く陽が極まる夏至の日は、スウェーデンではミッドソンマル(Midsommar)と呼ばれ、毎年6月下旬の夏至に最も近い土曜日と、その前日の金曜日を祝日として家族や友人たちと集います。
2025年は6月21日(土)と、その前日の20日(金)に当たります。
Midsommarstångを囲んで踊る人々 南スウェーデン、スコーネ県(2024年)
スウェーデンの夏は本当に美しく、空も木々も草花もすべての色彩がとても鮮やか。
そんな季節を祝う夏至祭のシンボルは、広場の中央に建てられる「夏至柱」です。
「ミッドソンマルストング(Midsommarstång)」や「マイストング(Majstång)」と呼ばれる柱は、伝統的には白樺の木に草花を飾り付けたもので、遠くからでもその存在がよく分かります。
お祭りでは夏至柱の周りを囲むように老若男女が手を繋ぎ、輪になって童謡に合わせて歌い踊ります。
リハーサルがあるわけではないため、参加者の動きに統一感はなく、左右への動きがずれてぶつかってしまうことも。
一年ぶりのぎこちなさに照れ笑いをしつつ、「小さなカエルたち(Små grodorna)」など題名もメロディーも可愛らしい曲に合わせてダンスが進む様子は、初めての参加者でも思わず笑顔になる楽しさです。
アコーディオンの音色も、どこか懐かしいお祭りのムードを盛り上げてくれます。
国営テレビSVT1の天気予報コーナーでは、キャスターの女性も花冠姿で(2024年)
広場に集まる女性や子どもの多くは、花冠「ミッドソンマルクランス(Midsommarkrans)」で装います。
取り合わせや色合いに個性が出る冠は、基本的に手作りですが、近年はアートフラワーも人気です。
タクシー運転手さんの「私も生花の方が好きだけど、長時間運転するから枯れない花が便利なの」という言葉に納得でした。
そうそう、夏至の日に摘んだ花々を枕の下に置いて寝ると、未来の結婚相手が夢に現れるという言い伝えもあります。
お祭りでの服装に規制はなく、近頃はカジュアルスタイルが主流ですが、美しい景色で知られるダーラナ地方では、今でも伝統的な衣装に身を包んだ人々によるお祭りを見ることができます。
二種類のニシンのマリネ ペーパーナプキンのデザインは夏至柱Midsommarstång
夏至のお祝い料理に欠かせないのは、やっぱりニシン。栄養豊富で塩漬けにしても美味しく食べられるニシンは、北国の人々の生命を繋いできた自然の恵みです。
今ではさまざまなバリエーションがあり、好みに合わせて数種類を選ぶのが主流のようです。
また、この時期の新ジャガは絶品です。小ぶりで可愛らしい姿と瑞々しい美味しさは、格別の味わい。茹でてディルを添えると、「夏が来たのだ」と実感します。
デザートには、太陽をたっぷり浴びたイチゴが定番です。北欧のイチゴの旬は夏。お店にはEU諸国からの輸入品も多く並ぶものの、一番人気は地元産です。
私自身、デンマークにいるときはデンマーク産のイチゴ、スウェーデンにいるときはスウェーデン産のイチゴが一番美味しく感じられるのは気のせいではないと思います。
自分が立っている土地の気を受けて育ったものこそが、美味しく体を養ってくれることを実感します。
なお、夏至と反対の時期にあたる冬至の頃には、以前ご紹介した光の祭「聖ルシア祭」が行われます。
自然を愛するスウェーデンの季節行事を、これからも大切にしていきたいと思います。
赤い宝石のような旬のいちご 北欧の夏を感じます
Written by 高見節佳(デンマーク)