このコラムでは、世界中の読者から寄せられた仕事やキャリアに関するお悩みに対して、キャリアコンサルタントの岩井真理さんにご回答いただいています。
この春、本帰国したばかりの50代のL子です。夫の海外赴任に伴い、15年間で4か所の海外に暮らしてきましたが、日本に戻った今、再就職活動にとても不安を感じています。
現地ではその時々にできることはしてきたものの、定職ではなく、年齢の壁もあり、何より日本で働くのが久しぶりすぎて、何から手を付けたらいいか分かりません。
なんとなく以前の業界へ戻るよりも、海外経験を少しでも活かせる仕事を探したいと話していたところ、知人から「手伝ってほしい」と声をかけられました。
しかし、未知の分野ですし、自分に向いているのかどうかも分かりません。
この際、今からでも学び直して新しい仕事に挑戦すべきでしょうか?
こんにちは。世界中どこにいても輝けるキャリア&ライフを応援する真理です。
L子さん、長い海外帯同生活、本当にお疲れさまでした。複数の地を渡り歩き、その都度生活を立て直しながら、夫を支え、子育てをしながら奮闘されたL子さんのことを思うと、胸が熱くなりました。
言い尽くせないほどのご苦労があったと思いますが、よく頑張りましたね。
そして今、また日本に帰り、新しい生活の中でお仕事を始めようとされているL子さんは、きっと数々の体験によって、たくましさと柔軟さを備えたバイタリティあふれる方だと察します。尊敬します。
とはいえ、久しぶりの日本の労働市場に戸惑われるのも無理はありません。確かに、15年前とは労働環境も大きく変化しています。
でも、だからこそ、この変化をポジティブに捉えて、再就職活動に挑んでいただきたいという思いを込めて、ご回答させていただきますね。
まず、就職活動をする時、いきなり求人票を見る前に「自己理解」を深めながら、
①何をするか
②どんなふうに働くか
この2点について考えてみてください。
①「何をするか」というのは、どんな仕事に就きたいかということです。そのためには、L子さんの「興味・能力・価値観」を徹底的に洗い出す必要があります。
前職でどんなお仕事をされていたかは分かりませんが、本帰国を機に海外経験を活かせる仕事に興味を持たれたということは、L子さんが築いてこられた「キャリア」の中から湧き出る自然な興味・関心です。
キャリアとは仕事だけを指すのではなく、L子さんが海外で生きた15年間の生活そのものが「ライフキャリア」として、これからの人生に活かされていきます。これは大きな財産です。
ミドルシニアの再就職において、現在注目されているのは「キャリア自律」と「リスキリング」の2点です。
まず、「キャリア自律」についてご説明します。
かつては企業の敷いたレールの上に乗っていれば、目の前のことに一生懸命取り組むだけでキャリアアップできる時代もありました。
しかし今は、「自分のキャリアは自分で考える」ことが求められており、企業にはその支援を行う義務もあります。
つまり、「自分は何がしたくて、この先どうなっていきたいのか」をとことん考えてみてください。
また、フルタイムの正社員で働くことだけが正解ではなくなっていることも実感されるはずです。
「週に何時間働くのか?」「一つの仕事だけをするのか?」「報酬を得る仕事以外に、ボランティアの役割をどう考えるか?」「ライフワークになる活動とは何か?」こうしたことも含めて、自分の働き方を考えてみてください。
キャリアを主体的に考えることは、人生をどうデザインするか、セカンドキャリアをどう構築するかにもつながります。
現実味がないと感じたり、「そんなの無理」と決めつけたりせず、ご自身の気持ちに誠実に向き合って、自由に考えてみてください。
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