
こんにちは、カリフォルニアで心理セラピストとして活動しているYukoです。私は多くのアジア系アメリカ人や日本人クライアントとオンラインセッションを行っています。
そこで頻繁に話題になるのが「親との関係」です。
「もう大人なのに、まだ親のことを引きずっているなんて」と恥ずかしさを口にする方もいます。
しかし、親子関係が大人になっても心に影響を及ぼすのは、決しておかしなことではありません。むしろ、ごく当たり前のことなのです。
子ども時代に浴びた言葉や態度、期待、そして無視。そうした体験は、私たちの中に「自分はこうあるべき」「愛されるには○○しなきゃ」という無意識のルールを生み出します。
さらに、どれだけ安心して甘えることができたか、気持ちを受け止めてもらえたか、傷ついた時にそばにいてくれたか。そういった経験は自己肯定感の土台となり、人との関係の築き方にも影響を与えます。
そしてそれが、大人になった今も人間関係や働き方、自己評価に影響を及ぼしているのです。
特にアジア文化圏では、親を敬うことや我慢することが美徳とされがちです。そのため、「親を批判しているようで申し訳ない」と自分の気持ちに蓋をしてしまう人も少なくありません。

クライアントの中には、親との関係や子ども時代の経験が、今のキャリアや人間関係の選び方に大きく関係している方もいます。
たとえば、「あの時、自分を守ってくれなかった親のようにはなりたくない」という思いが原動力となり、ジャーナリストや心理職、教育職などを選ぶ方もいます。
一方で、親からの評価を得るために、親が望む社会的地位(例:お金持ち、医者や弁護士など)を最優先し、本当の自分を犠牲にしてしまう方もいます。
海外とつながりの強い方の中には、「親にすごいと思われたくて留学を選んだ」「親元から離れたくて海外に行った」という動機を持つ方も少なくありません。
また、「両親のような夫婦にはなりたくない」「もっと欧米的な、愛情にあふれた家庭を築きたい」といった思いを原動力にしている方も多くいます。
さらに、「ちゃんと泣けなかった過去」や「伝えられなかった怒り」「傷ついた気持ち」に蓋をしていると、ふとした瞬間に強い不安や孤独感として表れることもあります。
その感情はわがままだからでも、過去を引きずっているからでもありません。大切な人との関係が、自分にとって深い意味を持っていたという証なのです。

親との関係は、実は恋愛にも強く影響します。心理学では「愛着スタイル(アタッチメント・スタイル)」という概念があります。
子どもが親との関わりの中で身に付けた「人を信じられるか」「自分は愛される存在か」という感覚が、大人になってからの恋愛や対人関係に反映されるのです。
たとえば、幼少期に一貫した安心感を得られなかった場合、「不安型愛着」と呼ばれるスタイルになりやすく、恋愛において「相手に見捨てられるのでは」と不安を感じやすくなります。
一方、感情を抑えて親に気を遣ってきた人は「回避型愛着」の傾向が出やすく、親密さを避けたり、自立に過剰にこだわったりすることがあります。
そしてそれらは、現在の恋愛や結婚における「なぜかうまくいかない」「安心できる関係が築けない」といった悩みとして表れます。
親へのさまざまな思いを原動力に、国際恋愛や国際結婚を選んだ方の中には、モラハラ的な関係や過度な依存によって、お互いに苦しくなる経験をする方もいます。
そうしたパターンは、子ども時代の経験や愛着スタイルと深く関係していることが多く、自分の成長過程をふり返ることで、その理由が少しずつ見えてくることもあります。
このように、子ども時代の体験や親との関係性は、今の自分の感情のクセや人間関係のパターンにしっかりと根付いているのです。

こうしたテーマに向き合うことは、親を責めることではありません。
むしろ、自分がどれほど一生懸命生きてきたか、自分のニーズや気持ちをどれだけ後回しにしてきたかに気付く、大切なプロセスです。
「本当はこうしてほしかった」「さみしかった」「怖かった」。そんな自分の内側の声に耳を傾けることで、少しずつ心が解きほぐれていきます。
愛着スタイルは固定されたものではなく、意識的な振り返りや人との関わりの中で変化していくものです。
「自分はこういう傾向があるな」と知ることで、自分に合った恋愛の築き方や人との距離の取り方を見つけることができます。
いくつになっても、親との関係が現在の自分に影響を与えていることに、ハッとする瞬間があるでしょう。しかし、それを恥じる必要はまったくありません。
過去にあったことをなかったことにせず、「そうだったんだよなぁ」と受け入れる。
自分の感情に優しくなれる時、回復は静かに始まります。
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Written by 佐古祐子(アメリカ)