
私はオーストラリアで精神障害者の日常生活自立支援の仕事をしています。
人の心に寄り添う仕事をしていると、「大変ですね」と言われることがよくあります。
たしかに、メンタルヘルスの現場は簡単ではありません。
誰かの不安や気持ちの揺れに触れる日々の中で、自分自身も少し疲れていると感じることはあります。
けれど、「仕事は心をすり減らすだけの場所ではない」と私は思うのです。
今回は仕事が私に与えてくれる安心感や、人とのつながりについて書いてみました。

仕事をしていると、つい「みんな忙しいんだから、自分で解決しなきゃ」という意識にかられる時があります。
けれど、私の職場では一人で抱え込まないこと、「チームなんだから、助けを求めて当たり前」が自然と共有されています。
私のマネージャーの口癖は、「I’m happy to help」です。
その一言に、どれだけ救われてきたか分かりません。「大丈夫?」と声をかけてもらうだけで、張りつめていた心がふっとゆるむこともあります。
チームとは、競い合う関係ではなく、同じ方向を見て、助け合いながら進んでいく関係です。
この仕事を通して、チームワークの本当の意味を知りました。
そして、今はその関係の中で「私は支えられている」と感じています。

忙しい日々の中では、つい効率を優先してしまいがちです。
けれど、業務とは関係のない短い会話や、ふとした笑いが、思いがけず心を整えてくれることがあります。
ほんの数分の雑談や同僚たちの笑顔が、その日一日の気持ちを少しやわらかくしてくれます。
そんな経験は、誰にでもあるのではないでしょうか。
個人で仕事に集中する合間にも、笑顔や声かけを心がけることで、自分自身や同僚の気分転換につながることがあります。
その小さな積み重ねが、気付かないうちに、働く場の心地よさを作っているのかもしれません。

職場の中に、「そのままの自分でいてもいい」と思える人がいる。それだけで、人はずいぶん安心して働けるものです。
私の職場では、3か月に1度マネージャーとの個人面談があります。
仕事の評価ではなく、あくまでスタッフのメンタル面のチェックやサポートのための時間です。
自分の正直な意見やプライベートの現況を話すことで、ずいぶんと心が軽くなります。
特別なことをしなくてもいい。ただ同じ場所にいて、同じ空気を共有できる関係があること。
それが、心の回復につながっていると感じます。
「仕事=消耗するもの」という考え方は、決して間違いではありません。けれど同時に、仕事は人と継続して関わっていく場所でもあります。
その関わりの中で、心が整っていくこともある。心の回復の場所は職場の中にもあるのだと、私は思います。
Written by 野林薫(オーストラリア)