
最近、出張で訪れたジュネーブ。街を歩きながら、「自分がここに住んでいたなんて」と、何となく信じられないような気持ちになりました。まるで、遠い別の人生だったよう。
こんにちは。スイスに8年、ドイツも8年目。会社員をしながら、愛する家族とヨーロッパを旅するように暮らす、Towamiです。
このコラムは、私がどうやって今の生き方にたどり着いたのかを、自分自身の記録として、そして、「もし海外で働きながら、自分らしく生きてみたい」と思っている人がいたら、何かヒントになれば、という思いで綴っているストーリーの第4回目です。
第1回、第2回、第3回では、「海外で生きたい」と思った原点、そして、憧れて渡ったジュネーブで、一度すべてを失ったように感じ、どん底の中から少しずつ生活を立て直していったことを書きました。
・第1回:私の海外移住の原点。ヨーロッパで生きる私の選択と気付き
・第2回:「海外に行きたい!」挫折から駐在をつかむまでのリアル体験
・第3回:海外移住の理想と現実。孤独なジュネーブ生活を救ったサルサとフランス語
さて、サルサやフランス語学習を通して少しずつ現地の友達ができ、生活に「自分のコントロール」を取り戻した感覚が出てきた頃。プライベートは、少しずつ楽しくなってきていました。
一方で、仕事では相変わらず雑用ばかり。「使えない人」のポジションで、本当に自信をなくすことばかりの毎日が続いていました。
そんなある日、会社の中で大きな再編が起こりました。
同僚が次々に解雇され、オフィスもいくつも閉鎖され、組織が大きく変わっていく中で、私の上司も変わりました。
そして、その新しい上司との出会いが、私の仕事人生を大きく変えるきっかけになったのです。

1人で、暇な時によく佇んでいたジュネーブの湖沿いの日光浴場「バン・デ・パキ」
その上司は、赴任してきてから半日ほど私の仕事ぶりを見たあと、突然こう聞いてきました。
「君、毎日何やってるの?」
そこで私は、毎日やっていた雑用や細々とした業務について説明しました。すると、上司は一言こう言ったのです。
「それ、もったいないよ。君、本当に何もやってないじゃん。もったいないよ」
私はジュネーブに転勤してからずっと、自分のことを「仕事ができない人間」だと思っていました。
何をやってもうまくいかない。雑用しかできない。小さな存在。だから、「もったいない」と言われたのは、その時が初めてでした。
「もっとできるよ」。そう言ってもらえたことで、少しだけ勇気が出たのを覚えています。
そこから、その上司は私にどんどん仕事を振り分け始めました。
「君はこれをやって」「次はこれ」。それまでとは、ワークフローが一気に変わりました。

その上司はとても愛情深い人でした。でも同時に、本当に厳しかったです。
ある日突然、「じゃあ今からこのお客さんに電話して。今すぐ」と言われました。
私はそのお客さんのこともよく知らなかったし、話す内容もまったく準備していませんでした。
「何を話せばいいか分からないですし、準備もしてないんですけど……」
そう言うと、「それでもいいから、今すぐ電話して」と言われました。
私はその場で上司の目の前で電話をかけ、しどろもどろになりながら挨拶のようなことを話しました。
そこから毎日電話をする日々が始まりました。もちろん、最初は全然うまく話せません。今振り返れば、内容もかなりごちゃごちゃだったと思います。
それでも、電話をする→依頼をもらう→調べる→また返す。
そんな当たり前の営業活動が、少しずつできるようになっていきました。

またある日、企業訪問である街へ出張することになった時、上司にこう聞かれました。「他にお客さんに会う予定はあるの?」
私は、「特にないです」と答えました。すると上司は、「せっかく行くんだから、空き時間でお客さんを訪ねてきなよ」と言いました。
でも当時の私は、まだ本当に何を話していいか分からない状態でした。
「そんな状態で行ったら、迷惑だと思います」。そう答えると、上司は言いました。
「そんなことないよ。遠くから君がわざわざ来てくれたら嬉しいよ。チョコレートでも一つ持って行ってきな」
私は言われるがまま、小さなチョコレートを買い、お客さんにアポイントを取り、訪ねていきました。
本当に話すこともなく、モジモジしながら会いに行ったのを覚えています。でも、お客さんたちは優しく迎えてくれました。
それを繰り返していくうちに、少しずつ親近感を持ってもらえるようになり、依頼をもらえるようになり、関係もできていきました。
そういう小さな積み重ねを通して、私は少しずつ自分に自信を持てるようになっていきました。
いろんなお客さんと話せるようになり、準備不足でも、とにかく飛び込んでいける強さも少しずつ身に付いていきました。

お天気の悪い日も多かったです
もちろん、普段は本当に厳しかったです。上司が怖すぎて、朝オフィスに着いても入口の前で3分くらい立ち止まり、
「今日はもう引き返して家に帰ろうか」「いや、でも入らなきゃ」と迷っていた日もよくありました(笑)。
それでも、愛情を持って厳しく仕事を与えてもらい、毎日指導され続ける中で、私はだんだん仕事が面白くなっていきました。
ある日、夜遅くまで上司と2人で残業していた時。
お客さんへのメッセージを一緒にまとめながら、いろいろな話をして、私も質問をしたり議論したりして、やっとメッセージを完成させました。
最後に、ふとこう言われました。
「仕事って、楽しいな」
その時、私は自然にこう答えていました。
「楽しいですね」
その瞬間、自分が仕事を「楽しい」と思えるようになっていることに気付いたのです。

毎日通勤で見ていた風景。最近、出張でここを歩いた時、ここを毎日自転車で通っていた自分が他人のように思えました
今振り返ると、あの経験から学んだことがあります。
それが良いことなのか悪いことなのか、今の時代に合っているのかは分かりません。
でも、少なくとも私自身の経験として言えるのは、どれだけ辛い状況でも、どれだけ報われないと感じても、続けていると、ある日突然、風向きが変わることがある、ということです。
人が変わり、環境が変わり、突然チャンスが巡ってくることがある。
私にとって、その上司との出会いは、まさにそういう転機でした。
もちろん、辛すぎる時は、他のことで気を紛らわせてもいいと思います。私にとっては、サルサや語学勉強がそうでした。
でも、それでもとにかく淡々と続けていると、ある日突然、天気が変わるように、状況が変わる瞬間が来る。
私は、それを実際に経験しました。
そして、その上司はよく私にこう言っていました。
「努力は、絶対に誰かが見てるから」
「すぐには何も起こらないかもしれない。でも、過去の努力は絶対に誰かが見ている。時差はあるかもしれないけど、必ず何かにつながるから」
私はその言葉を信じて、報われないと感じる時期も努力を続けることができました。そしてきっと、それが今の私の働き方につながっているのだと思います。

最後まで読んでくださって、ありがとうございます。
次の記事では、私がどうしてジュネーブに住み着きたいと思うに至ったのか、ヨーロッパ永住を決めるまでの流れもご紹介したいと思います。
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Written by Towami(ドイツ)