MENU

マカオだけで使える通貨「パタカ」その歴史と面白い文化

2026年7月24日
周さと子 (マカオ)

ルーツは、大航海時代の海のロマン!?

こんにちは、マカオ在住21年目の周さと子です。今回は、マカオ独自の通貨「マカオパタカ(MOP)」についてご紹介します。

「マカオパタカ(MOP)」は、世界中でここマカオだけで使われている、なんともローカルで、しかし壮大な歴史を秘めた通貨です。

名前の「パタカ」という響き、どこかかわいらしくて耳に残りませんか。

実はこの言葉はポルトガル語ですが、語源をさらにさかのぼると、アラビア語の「アブー・タカ(窓のあるもの)」にたどり着くと言われています。

大航海時代、中東の商人たちがヨーロッパから流れてきたコインの模様を見て、そう呼んだのが始まりなのだとか。

それがやがてポルトガル人の間で、当時アジア貿易で広く流通していたメキシコ銀貨を指す言葉となり、1894年、マカオの公式通貨が誕生する際、そのまま「パタカ」という名前が採用されました。

現在のマカオパタカは、6種類の紙幣と7種類の硬貨で構成されています。

紙幣の種類:10パタカ、20パタカ、50パタカ、100パタカ、500パタカ、1000パタカ
硬貨の種類:10アボス、20アボス、50アボス、1パタカ、2パタカ、5パタカ、10パタカ

10アボスは10分の1パタカ。10パタカ硬貨はほとんど見かけないレア硬貨です。

ちなみに2026年7月現在、1パタカは約20円です。

 

マカオでの買い物に注意


そんな歴史あるパタカですが、現在のマカオの商店やローカルな小売店へ行くと、レジ横によくこんな張り紙が貼られています。

「現金支払い MOP 1:HKD 1:RMB 1」

これは、「マカオパタカ・香港ドル・中国人民元のどの現金で支払っても、同じ額面として受け取ります」という意味です。

マカオでは、お隣の香港ドルも、中国本土の人民元も日常的に使えるお店がほとんどです。

旅行者にはとても便利なシステムですが、実は在住者からすると「ちょっと待って!」というポイントがあります。

実際の為替レートは、仮にマカオパタカを100とすると、香港ドルは約97、人民元は約84ほどです。

つまり、香港ドルや人民元で額面どおり支払ってしまうと、実は少し損をしてしまいます。知らずに旅行で訪れた方は、現金払いだとうっかり損をしているかもしれません。

とはいえ、実際のところWechat pay や Alipayなどの電子決済が多く、為替レートは自動換算される場合が多いです。

ちなみに、マカオでも広く使える香港ドルですが、「10ドル硬貨」だけは別です。

マカオの多くのお店では、「これは受け取れないよ」と断られてしまいます。

昔、偽造硬貨が大量に出回った時期があったらしく、その警戒心が今でもローカルなお店に根強く残っているのです。

 

私が受けたマカオパタカ紙幣の衝撃

左のビルは中国銀行。右のビルは大西洋銀行。隣同士に立っています

マカオパタカを眺めていると、もう一つ面白いことに気付きます。

それは、お札を発行している銀行が「中国銀行(中国系)」と「大西洋銀行(ポルトガル系)」の二つあることです。

同じ10パタカ札でもデザインが二種類あり、お財布の中で中国銀行のお札と大西洋銀行のお札が仲良く同居しています。

注目したいのは、以前大西洋銀行が発行していた紙幣。現在でも流通していますが、漢字部分がなんとも言えない丸文字のフォントです。

国家の公式紙幣に、そんなポップなフォントを採用してしまうなんて……。

初めて見た時は、「国家としての懐が広いのか、それともポルトガルのノリ!?」と衝撃を受けました。

また、この二つの発行銀行があることで、以前、お隣の香港でも驚く出来事がありました。

用事があって香港のHSBC銀行の窓口を訪れた際、手持ちのマカオパタカを香港ドルに換金しようとしました。

すると窓口の女性スタッフが「ちょっと待って」と言い、世界各国の紙幣が掲載された分厚い図鑑のような本を持ってきたのです。

スタッフは本と私の紙幣を見比べながら、真顔でこう言いました。

「この紙幣、この本に載っていないので受け取れません」

私は思わず、「え〜! すぐ隣の街の、れっきとした法定通貨ですよ!?」と声を上げてしまいました。

後から判明したのですが、その本には中国銀行発行のパタカは掲載されていたものの、大西洋銀行発行の紙幣は掲載されていなかったのです。

結局、私が持っていた大西洋銀行発行の紙幣は受け付けてもらえませんでした。マカオパタカの使用可能範囲の狭さを思い知らされた瞬間でした。

また、香港でも中国本土でも、買い物や商取引にマカオパタカは利用できません。マカオパタカは、マカオだけで使える通貨なのです。

 

集めて楽しい10パタカの「干支めぐり」

切り絵画風の干支紙幣、背景はWynnカジノ内、干支の天井が大迫力の観光スポット

そんなマカオパタカですが、実はコレクション要素もあります。

中国銀行と大西洋銀行は、2012年の「辰年(龍)」から2023年の「卯年(兎)」までの12年間、毎年その年の干支を切り絵風にデザインした「10パタカの干支記念紙幣」を発行していました。

12年かけて、自分の生まれ年の干支や家族の干支、そして12支すべてを揃えていくコレクションです。

当時は、友人たちの間で「私、今年の干支のお札が余ってるよ!」「じゃあ私の持っているあの干支と交換しよう!」と、まるでお気に入りのカードを交換するように、お札を通したコミュニケーションが生まれていました。

相手の干支を尋ねたり、それぞれの干支にはどんな特徴があるなどの会話が弾むきっかけになりました。

この干支シリーズだけでなく、マカオには「中国返還20周年記念」や「北京冬季オリンピック記念」といった、街の歴史の節目を祝う記念紙幣がいくつか存在します。

面白いのは、これらがコレクション用として引き出しに眠るだけでなく、今でも普通にお店のお釣りとしてお財布に紛れ込んでくること。

カフェでラテを頼み、何気なく受け取った20パタカ札が、よく見ると返還20周年の華やかな記念デザインだったりするのです。

現在では、現金より電子マネーを利用する人が多くなりましたが、このような嬉しい出会いがあると、つい紙幣をじっくり眺めたくなります。

マカオを訪れた際は、お釣りで受け取る一枚にも、ぜひ注目してみてください。

Written by 周さと子(マカオ)

この投稿をシェアする

イベント・セミナー一覧へ
コラム一覧へ
インタビュー一覧へ
ブックレビュー一覧へ
セカウマTV一覧へ
無料登録へ