
20歳の頃、仕事を辞めて、世界一周(仮)をしました。その時の様子を、旅エッセイのように連載しています。
「(仮)」というのは、日本を出発し、シェンゲン協定の上限である3か月間ヨーロッパをうろうろし、その後アメリカに渡り、知人を東西南北訪ねて歩いた結果、気付けば地球を西回りでぐるっと一周していたからです。
いつか五大陸制覇を叶えたいという思いもあり、将来への期待も込めて「(仮)」としています。
第1話:スマホなし、計画なし、20歳の世界一周(仮)
第2話:20歳の世界一周(仮)第1日目、パリ
2日目、初日のエッフェル塔探しですっかり疲れ切った私は、癒しを求めてリュクサンブール公園へ。
パリ6区にある、総面積が22ヘクタールにもなるこの公園には、緑色の椅子が無造作にいたるところに置かれている。
誰かが管理しているというより、来る人それぞれが好きな場所に椅子を動かして、円を作っておしゃべりをしたり、ひとりで本を読んだりしているような場所。
椅子自体は何を言うわけでもないが、「座っていいよ、動かしていいよ」と、日向ぼっこの生産性のなさに正当性と安心感を与えてくれる。なかなかの名脇役である。
みんな思い思いに時間を過ごしていた。誰も誰を気にしていなかった。
「私」という自意識を意識する必要性が、少しずつ薄れてゆく。また、周りで何を話しているのか、まったく分からないのもよかった。
聞こえてくるフランス語は私にとっては意味を持たないため、響きを楽しむだけのBGMという贅沢。誰かの会話に耳を傾ける必要もないし、誰かに合わせる必要もない。
いろいろなものから解放されているような気がした。ただ、憧れていたパリは、私にはまだ少し大人すぎた。
街の品の良さに惹かれる一方で、そこに自分が馴染めている感じはしなかった。
滞在を延ばすこともできた。それでも、もともとのプランどおり、8日間でパリを後にすることにした。
次の街は、バルセロナ。
理由はいたってシンプルだった。航空券が異常に安かった。ライアンエアーで、12ユーロ。当時のレートで1,600円ちょっと。
無職旅においては、もはや行かない理由が見つからなかった。

そうして着いた、スペイン・バルセロナ。肌で感じられる空気が違った。
「肌で感じる」って、実際こういうことを言うのか、なんて呑気に考える。
パリから直行便で、空の上を2時間弱飛んだだけ。それなのに、街の様子が随分と違う。
明るい。陽気。なんだか楽しそう。
駅から降りてすぐ、何かのパレードかと思うような光景に出会った。
仮装をした人たちが、太鼓を叩き、笛を吹きながら行進している。
何か特別なイベントなのかと思ったら、ただ楽しそうなおじさん3人衆だった。
まず向かったのは、サグラダ・ファミリア。
「まあ、楽勝で着くでしょ」なんて思っていた。
読者の中には「この女、パリでまったく何を学んだのか?」「何時間かかってたどり着いたんだ?もう忘れている??」そんな困惑とツッコミが浮かんだ方もいるかもしれない。
ここに記しておきたい。地図上では直線で、まっすぐ行けば着くはずだったのだ。繰り返そう。直線だ。
気づけば、サグラダ・ファミリアとは全くの逆方向にいた。

このまま一日が終わるのは嫌だ。そう思い、ふと髪を切ることを思いついた。
最初に目に入った美容室に入って、なりたい髪型の写真を見せると、「ああ、できるできる。入って」と、すぐに始まった。
本当に大丈夫なのかな、と疑いながら施術を受ける。
途中で、「写真、見ますか?」と、もしかしたら途中経過を確認したいかと思い、念のため聞いてみた。
すると、「いや、大丈夫」の返事。いや、確認せい!こっちは気が気じゃないねん!
そして完成。結果は……、1950年代のハリウッド女優と見間違う、見事な大ぶりのカール。もう二度と海外の美容室は信用しない。
そのトラウマもあって、このイタリア留学では結局、1年間髪を切らずに終わりそうだ。
そんな事件を乗り越え、別日に仕切り直して、再びサグラダ・ファミリアへ。
ついに見えた!遠くから見ているのと、実際に目の前に立って見るのとでは、全然違う。
さらに、横から見るのと正面から見るのとでは印象がまるで違って、驚いた。

バルセロナで一番印象に残ったのは、意外にも建築ではなく海だった。
朝10時からのセーリング。時間には余裕を持って出たはずだった。
なのに、9時50分。なぜか山の中にいた。また迷子だった。
とにかく下り道を探して歩いていると、奇跡的にタクシーに出会った。
そこから事情を察してくれた運転手さんがものすごい勢いでかっ飛ばしてくれて、なんとか間に合った。
いや、正確には間に合っていなかったのだが、他に遅れている人が何人かおり、その人たちを待つことになった。
そして、予定時刻より15分遅れて、何事もなかったかのように海へ。
風を切って進むヨットが気持ちよかった。「地球をからだで感じる」といえばいいのか。地球という惑星に遊びに来たような感覚だった。
もはや自分でも何を言っているのか意味不明だが、理性を遠くに置いてきたような、童心に帰ったような、そんなピュアな喜びがあった。
なにせ、頭の中で流れているのは「青い、青い、青いー!」だけだった(笑)。
目の前に広がる青さに比べて、自分がちっぽけなことにひどく安心した。
次はもっと自然に囲まれたい。そうして向かうことにしたのは、ギリシャ、自然満点のコルフ島。
現在、インスタグラムで留学生活の様子や旅、日々書いているジャーナルノートを発信しています。ぜひ覗いてみて下さいね!
Written by 高倉舞(イタリア)