
「人って、きっかけがあれば動けるんだな」
そう思った出来事を、私は6年前のブログに書いたことがある。
2020年の夏、我が家では書斎を娘の部屋に作り替えるために模様替えをしていた。クローゼットやベッドを用意し、新しいライトを設置して…と進めていたはずだった。
ところが、気がつくと家の中に「洞窟」ができていた。娘の部屋ではなく、バスルームである。
既存のバスルームを、洗面台やタイルなど剥がして洞窟状態にしたのは夫。
実は夫には、以前から「大きなバスタブのある、理想のお風呂場を作りたい」という夢があった。
とはいえ、改装工事となれば時間もお金もかかる。だから「いつか」「そのうち」と、夢のお風呂場を想像する日々を過ごしていた。
ところが、娘の部屋づくりをきっかけに、突然スイッチが入った。
「今、やっちゃおう!」
そこから彼の行動は驚くほど早かった。工事業者を探し、タイルや浴槽、洗面台を選び注文した。食事中までお風呂場のことを考えているほどの熱中ぶりだった。そして本人大満足のバスルームが完成した。
その姿を見ながら、私は思った。
人は、やりたいことがあっても、なかなか動けない。でも、何か「きっかけ」があると、一気に動き出すことがあるのだ。

夫の親友夫婦と台湾で再会!これが私のきっかけに
そして6年後の今年、今度は私自身が、そのことを実感することになった。
この夏、私が熱中したのは中国語の勉強だった。
マカオに暮らして21年。マカオでは広東語が使われているので、これまで中国語(普通話)が話せなくても、それほど困ることはなかった。
もちろん、「中国語が話せたら便利だろうな」「いつか勉強できたらいいな」と思ったことは何度もある。
でも、やらなかった。
過去のコラムに書いたように広東語の習得だって簡単ではないのに、今さら中国語まで勉強する気力がなかったのだ。
ところが、今年6月、台湾で夫の親友夫婦と過ごしたことが、私の気持ちを大きく変えた。
彼らと会うのは約20年ぶり。再会した彼らは、「会えてうれしい!」という気持ちをストレートに表現してくれた。
そして、たくさん話しかけてくれた。私たちは共通点を見つけてはいちいち盛り上がり、たくさん笑った。
その心遣いと包容力に、私はすっかり心をつかまれてしまった。
彼らと私の会話は英語。でも、楽しい時間を過ごすうちに、ふと思った。
「この二人と、中国語でもっともっと話したい!」
それが、私のスイッチだった。

台湾から帰った私は、さっそくHSK3級という中国語の能力試験に申し込んだ。しかも試験日は1カ月後。
「勉強してから試験を受けよう」ではない。「先に試験を申し込んで、自分を追い込もう」という作戦だ。
私はコツコツ計画的に努力するタイプではない。締切に向かって動くタイプ、しかも直前に。ならば、その性格を利用するしかない。
実際、試験まで2週間と迫ってから勉強を開始したが、とにかく朝から晩まで中国語を聞いた。
YouTubeを活用し、耳を中国語に慣らした。娘に先生になってもらい、発音の練習もした。
もちろん、まだまだ課題はある。それでも、1カ月前には全く聞き取れなかった中国語が、少しずつ耳に入ってくるようになった。
そして、HSK3級を終えた今、私はすでに次の4級を目指している。
6年前、私は夫を見ながら、「誰もがきっかけを待っている」というタイトルのブログを書いた。でも、今なら少し違うタイトルにするかもしれない。
「きっかけ」は、突然空から降ってきたわけではないと感じるから。
私の場合、中国語を勉強するきっかけは、台湾での友人との再会だった。
でも、その前に21年間のマカオ生活があった。中国語を耳にする日々があり、「話せたらいいな」という小さな気持ちもずっと存在していた。
自分の中にずっとあった「いつかやりたい」という気持ちに、ある出来事が触れたことで、スイッチが入ったのだと思う。

だから、「いつかやってみたい」と思っていることがあるなら、今すぐ大きな決断をする必要はないのかもしれない。
・気になっていた本を一冊買ってみる。
・行ってみたい場所を調べてみる。
・会いたい人に連絡してみる。
・興味のある講座を覗いてみる。
・5分だけやってみる。
そんな小さな行動が、次の行動を生み、いつか自分を動かす大きな「きっかけ」になることもある。
あなたにも、「いつかやってみたい」と思いながら、そのままになっていることはありませんか?
もしかしたら、それは「やりたい気持ちが足りない」のではなく、まだ自分を動かすきっかけに出会っていないだけなのかもしれません。
そして、そのきっかけは案外、すぐそばにあるのかもしれない。
あなたの「いつか」を動かすきっかけは、何でしょうか?
Written by 周さと子(マカオ)