
前回、「女性のライフイベントをキャリアの力に変えるためにできること」というコラムを書いた。
そして今、まさにそのライフイベントの渦中にいる私。それは、子供の成人と高校卒業だ。
今年1月に、私の息子は18歳の誕生日を迎えた。18歳になったからといって、まだ高校生である彼の生活は大きく変わるわけではない。
本当の意味で大きく変わるタイミングは高校卒業になると以前から思っていた。
もともと彼が高校を卒業したら、大学進学や就職をきっかけに実家を出ることを想定していた。
進学するにしても、働き始めるにしても、子供は一旦実家を出た方が成長できると自分自身の経験や周りを見て思っていたからだ。
もちろん、オランダの厳しい住宅事情の中、息子の進路が今の近くということになれば同居という選択肢もあった。
だが、息子が成人した今、その決定を待ち続けることで、これ以上私の時間を止めたくなかった。
だから息子の卒業式がある5月末を一つの区切りとして、自分自身も大きな決断をすることにした。

2015年にオランダに移り住み、今年2026年でちょうど11年が経った。
当初は2年か3年のつもりだったが、気づけば仕事や教育のベースがオランダにシフトしていて、逆に中途半端なタイミングで動くことが難しくなっていた。
息子は国際バカロレアのコースを続けながらプロサッカー選手を目指し、私は副業を続けながら会社員となり、このまま定年までオランダにいたらある程度安定した生活を送れただろう。
それでも心のどこかでずっと感じていたのは、「ここは私が永住する場所ではない」ということ。
振り返れば、私の本来の計画は海外留学した後、日本に戻って働くことだった。それが大きく変わり、気づけば海外生活は20年を超えている。
20年以上の時を経て、働きたい場所は日本に固執しなくなり、オンラインで働ける選択肢も広がった。
そして今、子供の成人という節目をきっかけに、もう一度人生を仕切り直すタイミングが訪れた。

オランダを離れる決断をした理由はいくつかあるが、1番大きなものは気候が合わないことだ。
オランダは秋と冬がとても長い。秋冬の期間が年の半分以上あり、その間の日照時間がかなり短い。
寒さにはある程度慣れたが、この光の少なさは毎年確実にメンタルに影響を与えてくる。
今はまだコントロールできても、これからもっと歳を重ねた時に元気でい続けられる自信がないのだ。
もう一つの理由としては、ここに家族の拠点がないこと。
私の家族は日本に住んでいるし、息子の進路は執筆時点で決まっていないものの、オランダ以外に行く可能性は全然ある。私のパートナーもオランダにはいない。
そう考えた時、これ以上オランダに留まる理由が見つからない。
オランダの好きなところもたくさんある。オランダの夏、英語で仕事ができること、ざっくばらんな人たち、多国籍で差別が少ないところ、治安の良さ、綺麗な建物、チーズ、じゃがいも、、、。
挙げきれないほどたくさんあるものの、これらの理由で退職する68歳まであと20年以上過ごせそうにない。
逆に、オランダでやるべきことはやり切った感はとてもある。

アメリカ・フロリダ州の滞在先。朝夕のプールが日課に
改めて振り返ってみると、女性にとって出産・子育てがどれだけ大きく影響するかということだ。
特に私にとっては、「自分の子供を産み、育てること」が人生でやりたいことリストの上位にあったので尚更だ。
それに一旦区切りを付けられつつあることで、達成感と共に次のステージに向かうことができる。
しばらくは日本を拠点に今までできなかったことをやってみたり、行きたくても行けなかった場所に行ってみたい。
また、現在アメリカのビザを申請しており、今後は拠点をアメリカに移す予定だが、まだ決まっていないことも多い。
今後のことがはっきりしない状態ではあるものの、不思議とあまり不安はない。
それは、心身が健康でいること、そしてこれまでのキャリアとしばらく働かなくてもいい資産があることは大きいと思う。
何より、これまでの海外生活で不条理な困難を何度も乗り越え、積み上げてきたものが自分の中にある。
私はこの期間を与えられた人生のご褒美であり、貴重な余白として受け止めている。言い換えるなら、これは私にとってのキャリアブレイクだ。
人生のバケーションともいえる期間に、自分を見つめ直し、できなかったことに挑戦していきたい。
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Written by 藤村ローズ(オランダ)