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2人以上なら走行可、オーストラリア「T2レーン」に見る共有を大切にする社会

2026年3月11日
野林薫 (オーストラリア)

日本には存在しない車線

オーストラリアで車を運転し始めた時、道路標識に書かれた「T2」「T3」の文字に戸惑いました。

高速道路表示の種類かと思いきや、それは「2人以上や3人以上乗っている車だけが走れる車線」のことでした!

「人数で走れる車線が変わるなんて」と、最初は不思議に思いましたが、慣れてくると、この仕組みの面白さに気づかされます。

誰かと一緒に乗っていることで、優先車線を走ることができるのです。

今回は、日本には存在しない、オーストラリアのT2レーンをご紹介します。

 

みんなで移動するとちょっと得しちゃう車線!?

左:T2レーンの表示

T2レーン、T3レーンを走行するのに、特別な資格も申請も必要ありません。

ただ「運転手を含めて2人以上や3人以上で乗る」だけ。

多くの場合、T2レーン、T3レーンは朝夕の渋滞しやすい時間帯に設定されており、それ以外の時間帯は誰でも利用できます。

つまり、同乗者がいれば、混雑時でも少しスムーズに進めますよという設計です。

ここにあるのは、禁止や罰則で縛るのではなく、「選択肢を用意する」という考え方。

渋滞緩和や環境負荷の軽減という目的を掲げつつも、「こうしなさい」と強制するのではなく、「こうするとちょっと得ですよ」と静かに背中を押す。そんな柔らかい誘導が感じられます。

 

「一人」を前提にしない社会

日本にもバス専用レーンはありますが、同乗人数で区別する仕組みは一般的ではありません。何人で乗っていても、基本的には同じレーンを走ります。

そこには、「ルールはすべての人に平等に適用する」という価値観が強くあるのかもしれません。

一方、T2レーンは、「条件を満たせば違う道を選べる」という発想。平等と公平の捉え方の違いなのかもしれません。

どちらが正しいというわけではなく、社会が何を優先するかの違いが見えてきます。

T2レーンが示しているのは、「移動は一人である必要はない」というメッセージのようにも感じます。

誰かと共有することが時間の短縮や効率という形で評価される。そこには個人の自由を尊重しながらも、共に動くことをさり気なく後押しする空気があります。

2人で走るだけで使える道が変わる。もし日本にT2レーンがあったら、私たちの移動や人との距離感は少し変わるでしょうか?

もしかすると、通勤の風景や家族との朝の時間が少し変わって見えるかもしれません。

T2レーンの発想の向こうにあるのは、効率だけでなく、共有という価値をさりげなく織り込んだ社会の姿なのかもしれません。

Written by 野林薫(オーストラリア)

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