
日本で10年間、美容師として働いてきました。
その中で私が大切にしていたのは、技術はもちろんのこと、お客様や一緒に働く仲間へのリスペクト、感謝の気持ち、そして常に学び続ける姿勢でした。
長い年月を日本で過ごしてきたので、日本の生活や常識、価値観は私にとって当たり前のものになっていました。
けれど、その後アメリカに渡って美容師として働き始めると、その「当たり前」とはまったく違う世界がありました。
最初は驚きや戸惑いの連続で、私は新しい土地で新人としてゼロからのスタートを切ることになりました。

技術には自信があっても、自分の気持ちをうまく英語にのせることができず、悔しさを感じることも多くありました。
そんな時に私が心がけたのは、「シンプルでもいいから感謝の気持ちを伝える」ことでした。
「Thank you for coming today」
「I’m happy to see you」
「You look beautiful」
シンプルなフレーズ。でも、その言葉に心を込め、笑顔で伝えるようにしました。
「髪の毛を任せてくれてありがとう」と感謝を一生懸命伝えました。
すると、言葉は完璧でなくても、お客様の表情がぱっと明るくなる瞬間があるのです。
その時「大切なのは言語のうまさではなく、思いの強さなんだ」と心から実感しました。

そして、気づいたのです。
日本の常識やルールは、そのまま海外では通用しないことが多い。けれど、相手を尊重する姿勢、感謝を伝える心、一生懸命に学び続ける姿勢―それらは国境を越えて共通している。
むしろ、そうした普遍的な部分こそが、海外で働く上で一番大切なものなのだと。
美容師として働く中で、お客様が鏡を見て笑顔になったり、「ありがとう」と言ってくれたりする瞬間が、私にとって一番のやりがいです。
その気持ちは日本でもアメリカでも変わりません。
文化や言葉が違うことで戸惑うことはあっても、誠意を持って一生懸命に取り組めば、必ず相手に気持ちは伝わります。
渡米してからの数年間で、どんな環境にあっても自分が大切にしたい「人への思い」は変わらず大切にするべきだという確信を持つことができました。

海外で働くということは、期待と同じくらい不安も大きいと思います。慣れない文化や言葉の壁にぶつかり、自分を見失いそうになる瞬間もあるかもしれません。
私も最初は何度も戸惑い、悔しさや不安に押しつぶされそうになりました。
ですが、「リスペクト」「感謝」「向上心」そうした思いはどこに行っても通じ合える普遍的なものです。
環境が変わるからこそ、その芯を持っていることで、自分らしく生きられるのだと思います。
もし今、海外で挑戦してみたいと考えている方がいるなら、どうかその気持ちを信じてみてください。
完璧じゃなくても大丈夫。言葉がつたなくても、慣れない環境に不安があっても、あなたの一生懸命な思いは必ず誰かに届きます。
新しい世界に飛び込むことで、自分でも想像していなかった景色や可能性に出会えるはずです。
その一歩を踏み出した先に、あなたにしか見つけられない宝物がきっと待っています。
Written by 北村友香里(アメリカ)