こんにちは、シチリアから食文化を中心にコラムを書いている桜田香織です。思えばこの世界ウーマンのサイトで書かせていただくようになって早1年が過ぎました。
そしてふと気が付いたのです、まだパスタの事を書いていないと。北から南までイタリア全国、パスタなしには語れません。
イタリアには驚くほど沢山の種類のパスタがあり、更にそれぞれの地方で特有の物も存在しますから、30年近く住んでいる私でさえ知らない物があります。
世界中に知られているスパゲッティにも、調理し食べる時にいくつかのルールがあります。
今回は、スパゲッティについて書いてみたいと思います。
短いスパゲッティは子供だけ⁈
昔友人が持ってきてくれた料理の雑誌は「フライパン一つで作る料理」という号でした。これは便利そうと思って眺めていたら、「フライパン一つで作るパスタ」という章がありました。
「水分の多いソースを作り、そこへ半分に折ったスパゲッティを入れる」と書いてあり、「あーこれはダメだ、うちではできない…」と思いました。そう、折ってはいけないのです。
一度「何故折ってはいけないのか、味が変わるのか?」と相方に聞いて見たことがありますが、「何を言っているんだ、この女は」という視線が返ってきましたよ(笑)。「子供じゃあるまいし」ということです。
家庭で子供が小さい頃、ロングパスタをきちんとフォークで巻くのは難しいですから、その場合は半分に折ります。その長さだと子供でも巻きやすくなります。そうやってきちんと巻く練習をしていくのでしょう。
友人で子供が8歳くらいまで折ってから茹でていた人がいましたが、ある時ご主人に「いい加減折るのはやめてくれ、子供はもう大きい」と言われていましたっけ。要するに折ったスパゲッティは子供用という事なのかしら?
上記したように子供の頃から巻く練習をするので、スプーンは必要ないですし、ましてロングパスタを「切る」という行為は許されません。
カレーだってフォークとナイフで食べるイタリア人。スープを飲む時以外でスプーンの出番はないのです。必ずフォーク一本で食べます。
ムール貝のスパゲッティ
これは何故だかはっきりとして理由は不明なのですが、「絶対に合わない」と思っているらしいです。単なる思い込みというような気もしますけど。
私はフランス料理では魚介にバターやチーズを合わせるし、美味しいと思っていますが、イタリア人はダメ。
レストランで魚介のパスタをオーダーしたらチーズは出てきません。頼めば出てきますが、変な顔されます。されても良いのですけどね。個人的には好きなように食べれば良いと思っています。
パスタが出てきたら、それだけをひたすら食べなくてはいけなせん。
例えば日本では、パスタとサラダを一緒に食べる事が多いと思います。パスタを一巻き、そしてサラダを一口・・・。そして手を止めてお喋りして、又パスタを一巻き。こういう光景をよく目にしますし、私の友人達もこうやって食べます。
しかしイタリア人は違います。真剣にパスタだけに向き合い、たとえ横にサラダがあっても手を付けません。お喋りなイタリア人ですから食べている間も会話は途切れませんが、食べるペースは一定しています。
飲み物を手にする時以外、フォークを離す事がまずありません。すっかりこのやり方に馴染んでしまった私、帰国中友達とパスタランチを頼むと、スープ、サラダとパスタが一緒に出てきて、どうやって食べようかと悩んでしまいます。
そもそもスープとパスタの両方という事はイタリアではあり得ないので。結局パスタを食べてからサラダ、そしてスープは残すようになりました。交互に食べるという事ができなくなっているのです。
日本でよくあるセットメニューですが…
先の述べたように、パスタはそれだけに向き合わなくてはいけないので、メイン料理の付け合わせになる事は絶対にありません。
以前パリで友人宅に招かれた時、メインの魚の横にパスタと野菜が添えられていた事があります。相方がどうするかなぁと思って観察していたら、 彼はまずパスタだけを平らげて、それから魚とメインに取り掛かりました。
友人宅でしたから何も言わずに食べていましたが、同じことを私がやったら大変なことになること間違いなしです(笑)。
以上ざっと挙げてみましたが、要するにイタリア人にとって「パスタは神聖な物」ということなのです。
厳密にはリゾットでも同様です。つまりプリモピアット、第一の皿を食べる時は他の物を食べないのです。
これらの一部はフィレンツェで一人暮らしをしていた時には見えてこなかった事。もちろん友人宅へのお呼ばれも多かったものの、一緒に暮らさないとわからない事でした。
地域によっての差はあるかと思いますが、私がシチリアでシチリア人と暮らして初めて知った事でした。
相方作のイカ墨スパゲッティ
Written by 桜田香織(イタリア)