
昨年、ロッキー山脈のあるアルバータ州のレスブリッジ(Lethbridge)という街への国内出張がありました。
国内といっても、カナダの国土は日本の27倍です。私の住むトロントからレスブリッジへは飛行機で5時間、その後バスに乗り換えてさらに2時間という長旅でした。
このレスブリッジという土地、実は日本と深い歴史的・経済的なつながりが存在している場所である事を皆さんはご存知でしょうか?
その背景にあるのが第二次世界大戦です。大戦中、カナダ政府は日系カナダ人を強制収容する政策を実施しました。
日系人というだけで不当に所有物を没収され、一部の日系人は労働力不足の解消のため、レスブリッジ周辺への強制移住を強いられました。
彼らは農業や商業を通じて地域社会に根を下ろし、街の発展に貢献してきました。この地で生きた彼らの歴史は、今でも街の人たちの間で語り継がれています。
引用:Youtubeチャンネル「Nikka Yuko Japanese Garden」https://www.youtube.com/@NikkaYuko
その歴史への敬意として、1967年に開園した「日加友好日本庭園 Nikka Yuko Japanese Garden」にも足を運びました。
和とカナダの美意識が融合した庭園は、かつての痛みを乗り越え、異国の文化を尊重し合う歴史の象徴として存在感を放っています。
園内には池泉回遊式の庭や茶室が設けられ、四季折々の表情を楽しむことができます。
春の桜や夏の青もみじ、秋の紅葉、そして雪化粧の静かな景色まで、訪れる時期ごとに異なる趣を見せてくれます。
また、日本文化を紹介するイベントや茶道体験も開催され、地域の人々が自然に日本文化に触れられる交流の場として親しまれています。
日加親善の鐘が作られ、訪れた市民や観光客が鐘を鳴らす姿は、日本とこの街との心の距離の近さを物語っているように感じられました。

日加親善の鐘 日本酒も味わえる
【日加友好日本庭園 Nikka Yuko Japanese Garden】
Address:Mayor McGrath Dr & 7th Ave South, Lethbridge, Alberta
ウェブサイト:https://nikkayuko.com/

こうした歴史は、現在の経済的な関係にもつながっています。
レスブリッジ周辺は農業と畜産が盛んな地域であり、アルバータ産牛肉や穀物は日本市場とも結びついています。
特にじゃがいもの生産が盛んで、日本マクドナルドは「マックフライポテト」に使う原料のじゃがいもをレスブリッジからも多く輸入しています。
過去には、カナダ側の港湾や物流網の混乱が原因で、日本でポテトのサイズ販売制限が出る事態になったこともあるほどです。
レスブリッジの畑で育つじゃがいもが海を越え、異国のファストフード店の人気メニューとして消費されていると思うと、世界は案外小さく、私たちの暮らしは思いもよらないネットワークの上に成り立っているのだと気付かされます。
歴史に根ざし、人と人との信頼の上に積み重ねられてきたじゃがいもをはじめとするさまざまな絆は、今も確かに息づいています。
過去を忘れず未来へとつなぐ。
この街が日本と共有してきた時間は、これからの国際交流のあり方を静かに示してくれているような気がしました。
Written by ファンフェーン庸子 (カナダ)