「人生何が起こるか分からない」とはこういうことで、まさかカナダに永住するとは思ってもみませんでした。それが今年で21年目を迎えます。
カナダ国籍を持つ夫との結婚でカナダに移住したのですが、夫以外知り合いもいなかったカナダへ思い切って来られたのも、若気の至りで怖いものなしだった頃の自分の決断からでした。
初めて来るカナダでしたが、アメリカに留学中だったこともあり、同じ北米、同じ英語圏にあるカナダへの移住に対して気楽に構えていました。
しかし、アメリカでは学生生活であったのに対して、カナダでは結婚生活。独身生活と夫婦生活は全く違うものだとすぐに気づかされました。
夫とは遠距離だったため、結婚後初めてお互いを本当に理解することになったのですが、すぐに長男を授かったこともあり、妻の役目にもまだ慣れないうちに母の役目も加わったことも摩擦が絶えない時期が長く続いた原因でもあったと思います。
台湾生まれ日本育ちの私と香港生まれカナダ育ちの夫。二人とも様々な文化が入り混じった環境で育ったため、文化の違いからのすれ違い、お互いを理解できないところがかなりありました。
同じ中華圏出身なので、国際結婚だと意識したことはあまりなかったのですが、国際カップルに共通する夫婦問題にも多々悩まされてきました。
日本で育った私は間接的にものを言う習慣があり、それに対し、北米で育った夫は単刀直入にものを言います。
ですので、最初の頃は夫の一言一言に傷ついたのを覚えています。夫にしてみれば、私の言いたいことが分からず大変苦労したはずです。そしてなぜ私が傷ついているのか分からなかったでしょう。
今でも気に障るときがありますが、ようやく夫の言葉に捉われず、態度や行動の向こうにある夫の心に目を向けられるようになりました。そうすることでいちいち傷つくこともほぼなくなりました。
そして夫に話すときは、ポイントをまず伝えるようにしています。そのあとで、必要であればいきさつを説明したり、詳細を補足したりするようにしています。
これは英語でコミュニケーションをとる時にもとても大事なポイントだと思います。
日本語を話す私たちと英語を話す人の思考回路は違いますので、言葉が話せるだけではなく、思考回路も変えられるとより円滑なコミュニケーションがとれるようになります。
言葉もコミュニケーションにおいては大事な要素で、自分の気持ちを英語でうまく伝えられないこともよくあります。
特に結婚当初は悔しい気持ちを英語で伝えることができず、日本語で怒鳴りたくなったことも一度や二度ではありませんでした。
また、夫の家族や親戚、特に私たちより上の世代の方たちは広東語メインで英語は少しだけ、もしくはまったく話せないという方たちも多く、義理の両親とのコミュニケーションもとれない状態でした。
そんな中、夫が仕事の間、私はコミュニケ―ションもとれない家族たちと過ごしたのですが、お互いを理解できないもどかしさがあり、「言葉が通じていたらもっと親しい関係を築けたはず」と今でも惜しく思う気持ちがあります。
遠距離恋愛の後、二人だけの時間を持つこともできず、固い基礎がまだないまま私たちの夫婦生活、家族生活が始まりました。
国際カップルのため更なるチャレンジもありましたが、20年後の今、夫婦生活を始めようとしている方、始めたばかりの方、特に国際結婚をされた方へのアドバイスがいくつかあります。
まずは、摩擦の時期が必ずあるということ。そして摩擦期に必要なのは、いつもよりも相手の立場に立って考えるように心掛けることだと思います。
そして言葉や文化の違いは、誰が正しくて誰が間違っているということではないということ。お互いを理解する努力をし、コミュニケーションを絶やさないようにするのはとても大切だと思います。
最後に一番大事なのは、「簡単に諦めないこと」ですね。
コミュニケーションがうまくとれず、文化相違のある異国の地での結婚生活、出産、子育ての経験は、自分が鍛えられ、磨かれた月日であったと改めて思います。
夫婦仲がギクシャクしている時には絶対不可能だと思っていた関係も、人生の段階が変わることで変化してきます。
国際結婚は困難も多いかもしれませんが、感謝の心を忘れず、良いところに目を向け、夫と一緒に歩む人生を満喫し、素晴らしいものにしていきたいです。
Written by 林いくえ(カナダ)