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北欧の空の下で身土不二を生きる。異国で「薬膳」を伝えるということ

2026年4月6日
高見節佳 (デンマーク)

薬膳師の北欧移住 ― 健康管理はどうなる?

コペンハーゲンに移り住んだ2020年以降、中医学と薬膳料理を伝える私。

在留邦人から寄せられた悩みの多くは、予想以上の気候の違いの中で健康を維持することの難しさでした。

美しく、安全で住みやすい国です。一方で、湿度がなく肌を刺すような夏の太陽、午後3時には夜が訪れる厳しい寒さの冬があります。

慣れ親しんだ「体に良い食材」も手に入らない。その不安は、異国生活そのものへの自信を揺るがせます。

しかし、私が確信を持ってお伝えしているのは、知識さえあれば世界のどこにいても、その土地の恵みで健やかに過ごせるということです。

 

北欧ならではの薬膳生活

住む場所によって、季節によって、薬膳食材も料理も異なります

「薬膳には特別な生薬やレシピが必要」と思われがちですが、ほんとうはとてもシンプルです。

大切なのは、住んでいる土地の気候に合わせて暮らす「天人合一(てんじんごういつ)」と、その土地の旬をいただく「身土不二(しんどふじ)」という考え方です。

季節ごとに現れる食材には、同じ自然の中に暮らす私たちの体を守る力が宿っています。

本来の薬膳、薬食同源は、この考えに従い、今の自分の状態に合わせて食材を選び、食べることです。

料理に生薬を入れれば体に良いという意味ではありません。

そう考えると、塩漬けのニシンや燻製サーモンも、寒く乾燥する北欧ならではの薬膳食材です。

日本で「お洒落」「ヘルシー」と人気のロブロ(ライ麦パン)も、小麦が育ちにくい寒冷地で生き抜くための先人の知恵の結晶です。

誰が、どこで、何を、いつ、どう食べるのか。

自然の恵みを中医学の視点で考えることで、アジアでもヨーロッパでも、自宅のキッチンが自分や家族を守る薬局に変わります。

この気づきによって、多くの方が安心感を得て一歩前に進んでいるようです。

 

北欧でも広がるYAKUZEN

外食でも叶う薬膳ライフ。北欧名物のニシンと甘エビで陰陽を補いバランスをとる

北欧には「ヒュッゲ(居心地の良さ)」や「ラーゴム(ほどほどに、ちょうど良い)」といった調和を重んじる文化があります。

その精神性は、自然を尊び季節に寄り添う日本食の在り方とも共鳴します。

だからこそ、現地の方におにぎりや味噌汁といった馴染み深い日本食を薬膳の視点で紹介すると、「ヘルシーで素晴らしい!」と敬意を払っていただけるのだと思います。

そのうえで北欧の伝統料理について言及すると、クリスマスやイースターの食卓に当然のように並んでいた料理こそが、彼らに合った「薬膳=YAKUZEN」だったと納得していただけます。

「自分の体の声を聞くきっかけになった」「伝統料理の意味を知った」との感想もいただきます。

 

老舗ジュエラーでの「美味しいジュエリー」

コペンハーゲン中心地にあるティファニーと準備中の写真

昨年は、薬膳の可能性が広がる出来事もありました。

Tiffany & Co. コペンハーゲン旗艦店の中秋節イベントで、薬膳月餅のオーダーをいただいたのです。

老舗ジュエラーにふさわしく、西太后も愛した真珠の粉を練り込み、植物由来の色彩で仕上げた三色の月餅は、「食べるジュエリー」としてゲストに驚きと喜びで迎えていただきました。

世界的なブランドが薬膳の考えを受け入れてくれたことには、大きな意味があるのではないでしょうか。

 

世界中が養生の場所

この季節の野草Ramsløgはいろんな料理にアレンジ可能。春の体を目覚めさせてくれます

異国で暮らすのは、時に孤独で心細いものです。しかし、薬膳という知識を得ることで、他の誰でもない「自分自身の心と体」を調える鍵を持てると考えています。

30代までのつらいアトピーや虚弱体質を乗り越え、50代の今は更年期の揺らぎにも苦しむことなく元気に過ごしている私自身の姿は、その証拠でもあります。

そのためか、ヨーロッパのさまざまな場所から「対面で学びたい」という声が増えてきています。

この時代だからこそ、オンラインでは伝わらない五感で分かち合う温度が求められているのだと感じます。

世界のどこに住んでも、自分を慈しむ術(すべ)は持てます。

その確信と知識を、必要としているすべての方へ大切に手渡していきたいと思っています。

私を受け入れてくれたこの地の人たちが、より健やかであるように。また、海を渡って活躍する同胞たちが、自信を持って活躍できるように。

Written by 高見節佳(デンマーク)

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