日本からデンマークに移り、もっとも大きく変わったのは食生活。
店頭に並ぶ食材は日本とは異なるものも多く、特に当初はデンマークの味を知りたくて、目立つものをメインに購入することも。
そして直面したのが、体の潤い不足によるお肌のトラブルでした。
日本とは比較にならない乾燥度のデンマークでは、生活水も硬水のため、お風呂に入るとさらに肌が乾くほどです。
もともと乾燥肌でもある私がそういった国に住むのだから、外からのケアだけではなく、乾燥に負けないように内側からしっかりと潤いを補うことが大切だったのです。
薬膳師でありながら、忙しさを言い訳に疎かになっていた自分ケアを反省。改めてデンマークでの薬膳ライフをスタートすることになりました。
そもそも薬膳料理とは、中国発祥の自然哲学(陰陽五行)を基にした医学理論を食に当てはめたもの。
特定のスーパーフードではなく、『”今の私”に合う食材で作った ”理想の私”になるためのご飯』によって、五臓六腑を満たし、新陳代謝をスムーズにして体のバランスを整えてくれるものです。
薬膳の基本的な考え方は、自然に合わせること。
自然界の一部である私たちは気候や季節の影響を強く受けるため、まず旬の食材やその土地で長く食べられているものに目を向けると発見がたくさんあります。
その結果が、免疫力のアップや美肌・アンチエイジングに繋がるとされています。
言い換えれば、薬膳ライフで大切なのは臨機応変に食を選べる知識。
中華料理でもアフタヌーンティータイムでも、ご自分に合うお茶やデザートを選んで、自在に薬膳ライフを楽しむことができるようになります。
では、実際にデンマークでどんな風に薬膳ライフを送ることができるのでしょう?
薬膳的には体を温め胃腸機能や元気のサポートなど、優秀食材の一つ。疲れやすい方や食欲不振、貧血、冷え性の方にもおすすめのサーモン。
数年ぶりの厳しい寒さと言われたこの冬は、ニンニクや玉ねぎを加えて温め効果と胃腸サポート力の両方をupするクリーム煮もよく作りました。
またサーモンにはビタミンDも豊富に含まれるので、冬が長く日照時間が少ないことで鬱になる人も多いとされる北欧では大きな助けになってくれそうですね。
特に冬に弱りがちな腎機能をサポートして潤いもアップ、アンチエイジングにも役立ちます。
これらの食材をたっぷり使ったパエリアは、冬の我が家で定番となりました。
ライ麦パンに、ゴマやひまわり等の種子がたっぷりトッピングされたスタイルが多く見られます。(トップの写真)
小麦の栽培が難しかった寒冷な北欧でも育つライ麦は食物繊維やビタミンB群を豊富に含み、発酵に使われる乳酸菌も合わせて栄養豊富で腸内環境も整えてくれるうえ、種子類には良質なオイルが含まれます。
そのため薬膳的には、体力アップや疲労回復、貧血対策、乾燥肌への潤いアップ、更にお通じへのアプローチ等も期待できる、乾燥寒冷なデンマークの主食にふさわしい薬膳パンだと捉えることができます。
私は朝食を種子入りライ麦パンを使ったサンドイッチ(こちらも乾燥対策になるチーズ&胃薬代わりのキャベツを合わせて)、蜂蜜とミルクたっぷりの紅茶などに替えたこともあり、乾燥を乗り切ることができました。
意外と簡単で楽しそうですか?それともありふれた食材でガッカリでしたでしょうか?
でも、生きることは食べること。こんな風に日々の食事を積み重ねることで体は不思議と変わってきます。
夫は一緒に暮らしてから数ヶ月で体重が大幅に減り、酷かったイビキもほぼなくなったので安堵しています。
そして、薬膳ライフは忙しくて外食が多い方でも実現可能です。
デンマークの国民食スモーブロー(Smørrebrød_オープンサンドイッチ)を選ぶ時も、「肌に艶がないな」「貧血だな」と思ったらビーフタルタル卵黄乗せ、冷えて疲れが溜まっている日には海老たっぷりサンドなど、迷いがちなメニューも、薬膳的に考えるとあっさり決まることもあります。
皆様も機会があれば是非、ご自分に使える薬膳ワールドをチェックしてみて下さいね。
Written by 高見節佳(デンマーク)