
オーストラリアで仕事を探し始めた時、最初に戸惑ったのは履歴書の書き方でした。
ネットで履歴書のサンプルを検索すると、生年月日や年齢を記載してあるものが一つもないのです。
最初は「本当に書かなくていいの?」と少し戸惑いましたが、こちらではこれがごく当たり前のことでした。
私の職場でも、同僚や上司の年齢を気にする空気はまったくといっていいほどありません。
今回は、そんなオーストラリアの「生年月日や年齢を記載しない履歴書」を入口に、日本とオーストラリアにおける年齢に対する意識の違いについて書いてみたいと思います。

オーストラリアの履歴書に生年月日や年齢を記載しない理由は、「年齢差別」を防ぐためです。
オーストラリアでは、年齢や性別、国籍、家族構成といった個人情報が、採用判断に影響を与えることを、できるだけ避けようとしています。
履歴書で問われるのは「何歳なのか」ではなく、「何ができるのか」「どのような形で貢献できるのか」です。年齢は判断材料の外に置かれています。
よく考えてみると、もし履歴書審査の段階で、年齢だけを理由にチャンスを失ってしまったとしたら、どこか腑に落ちない気持ちになるのではないでしょうか。
オーストラリアの履歴書には、そんな違和感をできるだけ生まないための配慮が感じられます。

一方、日本では履歴書に年齢や生年月日を記載するのが一般的です。
その背景には、年功序列や過去の終身雇用制といった、日本独自の働き方が関係しているのかもしれません。
法律上は年齢制限が原則として認められていないとはいえ、現実には「この年齢ならこの役割」「この年代ならここまで」といった、見えない線が存在しているように感じます。
これは、働き方だけでなく、日本社会における「年齢の捉え方」と深く関係しているのかもしれません。

オーストラリアでは、年齢はただの数字であり、それ以上でも以下でもないものとして扱われている印象を受けます。
もちろん、年齢を伏せればすべてがうまくいくわけではありません。それでも、年齢を知らなくても人を評価できる、という前提に立つ社会には、どこか軽やかさが感じられます。
履歴書に年齢を書かないこの国で暮らしていると、ふと考えることがあります。
私たちは、知らず知らずのうちに「年齢」という数字で、自分や他人を判断してしまってはいないでしょうか。
「もう〇歳だから」「〇歳のわりには」という見方が、自分自身や周りの人たちの可能性や個性を見逃している気がしてなりません。
「もう〇歳なんだし」という言葉を、頭の中から一度消去してみませんか。
Written by 野林薫(オーストラリア)