メンタルヘルスサポートワーカーとして働き始めて、この9月で4年半になる。
私の職場はグループホーム。65歳以下の精神障害を持つ人達が共同生活を行う、シェアハウスのようなものだ。
閑静な住宅街の中に建っているこのグループホームは、外から見ると一般の住宅となんら変わりはない。看板を掲げているわけでもないので、周りの住宅と完全に馴染んでいる。
私は2軒のグループホームに通っていて合計7人のクライアントをサポートしているのだが、2軒それぞれに個性があり、そこに住んでいるクライアント達もみんな違って面白い。
一軒には4人のクライアント達が住んでいる。この家には、クライアント各々のベッドルーム、キッチン、ダイニングとバスルーム、そして、スタッフが泊まりシフトで寝泊まりする部屋がある。
このスタッフの部屋は、クライアント達が普段服用している薬や、彼らの重要書類の保管場所でもある。グループホーム用のパソコンやスマホも備え付けてあり、パソコンでクライアント達の情報やスケジュールにアクセスしたり、報告書を提出したりもする。
2年程前、リビングルームにあった古いテレビがスマートテレビに変えられて、クライアント達はソファーにゆっくりと座ってNetflixやYouTubeも楽しめるようになった。
そして、グループホームには車も必要不可欠。ドクターとのアポイントメントに同行する時や、レジャーでクライアントをドライブに連れて行く時、クライアントの要望で買い物に同行する時などいつもフル稼働している。
私が働くグループホームで飼われているアビーはクライアントの和ませ役
グループホームの住人達は皆、精神障害を持っている。鬱、自閉症、統合失調症、ダウン症、知的障害、そして複数の障害を併せ持つクライアントも珍しくない。
人とコミュニケーションがあまり取れないクライアントもいれば、人懐っこいクライアントもいる。
そんな個性豊かなクライアント達の生活支援を仕事としている私達スタッフ。
グループホームには24時間体制でスタッフが常駐しており、ハウスリーダーと呼ばれるグループホームの責任者とサポートワーカー達が交代でシフトに入る。
朝から夕方にかけては2人から3人のスタッフが交代で配置され、夕方から翌朝9時まではSleepoverと呼ばれる泊まり勤務のスタッフが一人配置される。
正職員のスタッフが病気などの都合で働けない場合は、派遣会社から代わりのスタッフを入れることもある。
私が働くグループホームは、クライアント達の自立をサポートする目的で運営されている。
「スタッフが全部やってあげる」サポートではなく、クライアント達が出来ることは自分たちでやってもらう。
できないことはスタッフが教えたりして、クライアント達が新しいスキルを習得するサポートも行う。そして、最終的にはクライアント達がグループホームから卒業して、自分の部屋を借りて自立することを目的としている。
この仕事の一番重要な部分は、クライアント達との信頼関係を築き、クライアント達が心地よく、そして安心して暮らせるようサポートすることだと思う。
信頼関係を築くには実際、膨大な時間を要する。そのなかで諦めずに「少しずつでも前進していこう」という意欲を養わせてくれるのが、クライアント達が私達スタッフに時折見せてくれる笑顔なのである。
彼らの笑顔は私達スタッフの心を温かく、そして明るく照らしてくれる魔法の力を持っている。
Written by 野林薫(オーストラリア)