
アメリカ・フィラデルフィア在住の徳岡香織さんは、イベントやウェディングを中心に花の装飾を手がけるイベントフローリストとして活躍しています。
2023年、私が美容師としてアメリカに渡って間もない頃、SNSに投稿していたヘアの記事を見て、ヘアカットに来てくださったのが香織さんでした。
最初にお会いした時から、柔らかさの中にある芯の強さや、自分の道をしっかり歩む姿勢がとても印象的で、香織さんが積み上げてきた経験や新しいことに挑戦する姿に、私自身も力をもらっていました。
何度かヘアカットでお会いするうちに、「一緒に作品を作りたい」と思い、思い切ってコラボレーションを提案したところ、すぐに「ぜひ、やりましょう」と快く引き受けてくださいました。
そこから撮影に向けての準備が始まりましたが、香織さんはご自身のネットワークを生かしてフォトグラファーやドレスブランドを紹介してくださり、常に前向きでスムーズな進行を支えてくださいました。
完成した作品は、お互いにとって納得のいく、本当に素晴らしいものになりました。
今回のインタビューでは、香織さんがどのようにアメリカでのキャリアを築いたか、現在に至るまでの歩み、そしてこれからの展望について伺いました。

筆者(左)と香織さん(右)のコラボレーション制作の様子
もともとは東京で10年以上、会社員として働いていたそうです。仕事にやりがいを感じながら過ごす中で、2011年にアメリカ人男性と結婚し、渡米を決意。
当初はニュージャージー州で生活を始めました。しかし、結婚生活は長く続かず、1年半ほどで離婚。
「家を出る時は、手元にあった服2着を詰め、ほぼ空のスーツケースを持って家を飛び出しました。
ちょうど偶然にも目の前に『ニューヨーク行き』のバスが停まっていて、何も考えずに飛び乗ったのを覚えています。バスに乗った瞬間『どこに行けばいいんだ』と行く宛がないことに気付いたんです」
これをきっかけに、香織さんの本当の意味でのアメリカ生活が始まりました。
「ある日コインランドリーで洗濯中、すべての服を盗まれてしまい、『もう着る服すらない』と泣きながら母に電話したのを今でも覚えています。
その時に、私はアメリカに来て持っていた自分への自信、人を信じること、お金、そして心から笑うこと、すべてを失ったと感じました。
泣きながら母に電話する自分が鏡に映り、あまりにも悲しそうな姿を見て、『失ったものは、失った場所で自分の力で取り戻すしかない』と思ったんです。
そこからまずは3年間、アメリカで頑張ってみようと決意しました」

左:大好きな母との写真 右:ダンスに明け暮れていた頃。NYで活躍するベリーダンサーの友人達と
香織さんはニューヨークで新しい生活を一から築き直し、少しずつ心を立て直していきました。
「それから毎日、母が帰宅時間に電話をくれるようになり、何気ない会話に救われて少しずつ前向きになれました。そして仕事を見つけ、趣味だったダンスにも没頭しました。
ダンススタジオにいる時だけは悲しい気持ちから逃れられた気がします。
ニューヨークで支えてくれた会社の先輩方、ダンスを通して出会ったかけがえのない友人たち、そして家族が見守ってくれたからこそ、私はアメリカという土地で生きてこられたのだと思います」
ニューヨークでの仕事は金融や人材紹介、イベント業など分野は多岐にわたり、朝から夜遅くまで働き詰めの日々だったといいます。そんな日々の延長線上で、今のご主人と出会いました。
「約6年間、仕事とダンスに明け暮れた日々の中で、現在の夫と再婚しました。私にはもったいないほど素敵な人で、彼は神様からのギフトだと感じています」

パンデミックの影響で仕事を一時解雇されたことを機に、夫の家族がいるフィラデルフィアへ移住することに。
「ニューヨークには日系企業が多く就職には困りませんでしたが、日本人が少ないフィラデルフィアでは日本語や日本企業に関わる仕事が少なく、自分で何かを始めようと決意しました」
その時、香織さんが選んだのが「花の世界」でした。
「この世界に飛び込んだのは45歳の時です。それまで花を習ったこともなく、業界についても無知でした。もちろん起業も初めてです。
多くの方から『無謀だね』と言われ、最初はまったく相手にされませんでした。というより、『相手にされていない』という事実にも気付かないほど無知で必死だったのかもしれません」
それでも何とかチャンスをつかみ、ウェディング会社のフローリスト・アシスタントとして現場経験を積み、技術とビジネスの両方を学べる環境に出会いました。
同時に自身で会社Ori Floral Designを立ち上げ、フリーランスとして活動しながら自社でもウェディングのフローラルサービスを提供しています。
「花から受け取るエネルギーを大切にし、言葉とは異なる方法で思いを表現できる作品の創作を目指しています」

香織さんが海外生活を送る中で最も印象的なのは、『人々がとても正直に感情を表現する』ということなんだそうです。
「怒る時も、泣く時も、笑う時も、周囲を気にせず素直に表現する姿勢に強く影響を受けました!」
そして、海外で日本人として働くことの強みもわかってきました。
「私が携わる花の業界でも、日本のように経験年数より実力が重視される傾向があります。
ビジネスのどの分野でも”結果がすべて”という考え方が根付いていますが、その中で日本人が持つ『真面目さ』『繊細さ』『器用さ』は世界でも通用する大きな強みであり、私はそれを誇りに思っています」
今後はフィラデルフィアにとどまらず、他州でも活動の幅を広げたいと話す香織さん。
数年以内には自身のデザインスタジオを持ち、日本人ならではの感性を生かしたフローラル表現を追求していきたいという夢があります。

最後に、海外での暮らしを考えている方や今の環境を変えたいと考えている方へ向けて、メッセージをくださいました。
「今の環境が当たり前ではないと気づくことは、生きていくうえでとても大切なことだと思います。そして、それに気づけるのは実際にこれまでとまったく違う環境に身を置いた時です。
異国での生活は不安も苦労もありますが、それ以上に気づきと感謝が得られる経験を得ることができます。
人材紹介の仕事をしていた頃、どんなに優秀な方でもビザの問題で希望の職に就けず帰国せざるを得なかった方を何人も見てきました。
逆に最初は望んでいなかったけれど、ふとしたきっかけで海外生活が始まった人もいます。
海外で暮らすには『強い意志』と『運』、この両方が必要だと思っています。そして日々の中にある小さな幸せに気づける人には、きっと素敵な運が巡ってくる。私はそう信じています。
”今の自分を変えたい””もっと自分の可能性を広げたい”そう思う方は、ぜひ一歩を踏み出してみてください。その先にきっと新しい『感謝の景色』が待っています。
多くの日本人女性が自分らしく輝ける場所を自ら見つけていけるよう、心から応援しています。一緒に頑張っていきましょう!」
【Ori Floral Design】
ホームページ:https://www.orifloraldesign.com/
Instagram :https://www.instagram.com/orifloraldesign/
未経験からの挑戦も、異国での生活も、最初は誰だって不安です。でも、一歩を踏み出すことで見える世界があります。
香織さんの言葉と歩みは、誰かの背中を押すパワーになると信じています!
Written by 北村友香里(アメリカ)