
皆さん、こんにちは。ブラジルサンパウロ州に住むMariです。
「パタゴニアへ行きたい」と夫が言った時、誰かも言っていましたが、私もアウトドアブランドの名前だと思っていました。
南米に住んでから「ここにいる間にしか行けない所」と言う観点で、限られた休暇を利用して旅先を選んで来ましたが、夫が再三にわたり候補地として挙げてくるので、確かに簡単には行けそうにもないので行ってみることにしました。
私の様にパタゴニアをよく知らない方のために、基礎知識を少し。
まず、どこにあるかと言うと、南米大陸の南北に連なるアンデス山脈を境に、チリとアルゼンチンに分かれて位置します。
私が行ったアルゼンチン側パタゴニアは、北部は広大なパンパ(平原)、南部は乾燥した不毛の地からなっています。
パタゴニアの最大の特徴は「風の大地」と言われる、年間を通して吹く強風です。そのため、限られた植物しか育ちません。

風になびく様な形の南極ブナや、茎が短い花は地面に這いつくばるよう咲き、乾いた感じです。
雨が多くすっきり晴れる日が少ないのも特徴です。元々農耕に適さない土地柄、先住民は釣りや狩りをして生活していたと言われています。
ほぼ南緯40度以南の地域で、緯度で言うと日本の東北から北海道、サハリンの先までぐらいと言うので、寒くて当然。
面積は日本の約3倍、110万K㎡、それがパタゴニアです。
ところで、パタゴニアを見つけたのは誰か知ってますか?
海峡に名を残したマゼランです。先住民を見つけた時、「パタpata=足」「ゴンgom=大きい」というのが語源になったようです。

さて、そんな「最果ての地」へ行く目的は、轟音を立てる大氷河見物です。
今回は氷河見学に的を絞り、ユネスコの世界遺産に登録されている「ロスグラシアレス国立公園(Parque Nacional Los Glaciares)」を中心に回りました。
本当は少し足を伸ばして世界最南端の街「ウシュアイア(Ushuaia)」へも行き、マゼランペンギンやアザラシを見たり、名物カニ料理に舌鼓を打ちたかったのですが。
早朝のサンパウロを出発して、ブエノスアイレス経由でアルゼンチン側の「エルカラファテ(El Calafate)」という町に入りました。
カラファテ空港に着く直前、眠い目を擦りながら眼下を見下ろせば、エメラルドグリーンに光る川が濃茶の地面とコントラストを成し、「来たことのない場所へ来た!」という空気感を放っていました。
空港から車で15分ほど走ると、「氷河博物館グラシアリウム(Glaciarium)」があります。ロスグラシアレス国立公園の歴史や氷河に関する事を、豊富な資料や映像で紹介してくれるので予習をしました。
実はここ立ち寄ったもうひとつの目的は、地下にあるアイスバーへ行くためです。マイナス5度の氷の部屋で、氷河の氷を使ったドリンクを提供する、世界唯一のバーです。

室内は極寒のため防寒具が貸し出され、20分間だけの入室許可です。その間、ドリンク飲み放題!
ウォッカベースにチョコレートリキュールを混ぜたオリジナルカクテルがイチオシですが、ガブガブ飲んだ人達がその後どうなったかは説明の必要はないですね(笑)
乾いた景色を眺めながら外へ出ると、既に夕食時なのに、昼間の様です。
時期は2月。パタゴニアでは真夏なので、ほぼ白夜に近い状態です。

そのあと、地元の名物羊肉(ラム)のアッサード(焼き)料理の店へ行きました。旅行の楽しみのひとつは、地元の名物を食べることですよね。
乾いた草だけを食べて育った羊は、他のラムに比べて臭みが少なく食べやすいと言われ、「コルデーロパタゴニア」と言うブランドになっています。
が、この後、旅行が終わるまで、私はなかなか慣れる事が出来ませんでした。チャレンジ精神旺盛なので頑張ったのですが、私はパタゴニアで美食を求めることは無理かな、と思い知った夜でした。

翌日は、南米で一番美しいと言われる「ペリトモレノ氷河」を見に行きました。
全長35km、表面積は195K㎡、高さは60~70mですが、それは見えている部分だけで、下には深く何百mも伸びています。まさに「氷山の一角」目に見えることだけを信じてはいけないですね。
ここは降雪が多く比較的気温が高いので、氷河の流れは速く、平均して1日2mずつ動き成長しているそうです。特に夏である12~3月には、頻繁に崩落が起きています。
マガジャネス半島の先端部に、氷河を見渡せる展望台があります。
板張りの遊歩道は3コースあり、中心となる黄色コースは、全長35kmある氷河の14kmが正面から見渡せます。ひとつ下のコースへ降りると、視線が氷河と同じ高さになります。
ここに立ち、パリンとした空気の中でしばらく眺めていると、乾いた銃声のような爆音がしました。氷に亀裂が入ったのです。まもなくして、大きな氷の塊が崩落する様子を目撃することが出来ます。
さらに遊歩道を下りていくと、手が届きそうな近い場所から氷河を見ることが出来、なかなかの迫力です。

遊歩道は、自由に歩きまわることができるので、途中のベンチで予め準備しておいたランチボックスを広げるのもOKです。
澄んだ空気の中で、雄大な氷河を眺めながらの昼食は心地よいものです。
他に、氷山の上を歩くトレッキングツアーもあります。足腰に自信のある方は、ぜひともチャレンジしてみてくださいね。

翌日は、メインイベントである「グラシアレスグルメ号氷河観光クルーズ」です。
少し早起きして桟橋まで向かうと、思った以上に大きなフェリーが停まっていました。この船で、朝9時から夕方5時まで、アルゼンチン湖を中心に国立公園内を回ります。
昨日は上からや横からたくさんの氷河を見ましたが、今日は湖の中から見上げます。
桟橋では、すでにいくつかのグループがスタンバイしていました。係の案内に従って、グループごとに指定された席に座ります。大きなフェリー船が満席になる人気ツアーです。
最初はみんな着席したままでしたが、動き出すと甲板に出る人が多くなって来ました。外気はかなり冷たいけど、キーンとして気持ちが良いです。
出発からまもなくして、氷河の隙間に虹がかかっているのが見えました。幸先が良いですね。大きくそびえ立つ壁のような氷河は、圧巻です。所々に、崩落した氷河の一角が浮かんでいます。
昨日見たときは、さほどの大きさを感じませんでしたが、こうして間近で見ると、ちょっとした島のようです。
氷河は、印象的な水色です。氷がなぜ青く見えるのか、知っていますか?
氷河は雪の結晶が解けて出来たものに圧力がかかっているので気泡が少なく、透明度が高いため、青だけを反射して他の色は吸収してしまうからだそうです。

昼になると船内でランチボックスが配られました。残念ながら、ここでも野菜なしのバンズに肉だけ挟んだラム肉バーガーでした。
午後からフェリーは、無人島へと向かいました。20年ほど前は人が住んでいたとか、古びた小屋が有りました。この自然環境下、厳しい生活を強いられたのではないかと想像しました。
その後フェリーは、昨日行った展望台の遊歩道の下を通りました。上から見るより迫力は倍増!実物大の自然を実感しました。
日中はそこまで寒くはないパタゴニアですが、甲板では身が縮まります。真夏のブラジルから行ったので、寒さが身に染みます。
私はすっかり出不精になって、船内から氷河を眺めていましたが、夫は多くの時間を甲板の上で過ごしていました。チラッと見ると、表情こそ変えずに飽きることなく大自然を眺めています。
そもそもリアクションは薄いのですが、内心はウキウキ。本当にパタゴニアへ来たかったのだと、分かりました。確かに、この大自然は一見の価値有りです。

一日中クルーズした後、ホテルへ帰り少し休んでから、エルカラファテの町のメインストリートであるリベルダドール大通り(Av. Del Libertador Gral. San Martin)へ向かいました。
町はとても小さいので、歩いて少し回れば全体像が分かります。
お土産には、町の名前にもなっているカラファテという植物の実から作った製品が人気です。お茶やジャム等です。北海道のハスカップに似た爽やかな味です。
他にも、町にはチョコレート屋さんがたくさんあります。あちこちで少しずつ食べ比べしながらのお土産探しは楽しいですね。アルゼンチンですから、マテ茶をお土産にするのもいいですね。
買い物をした後は、夕食です。そして夕食が終わっても夏空は、相変わらず明るかったです。
冬になれば、太平洋からの強い湿った風がアンデスの山並みに当たり、大量の雪を降らせます。雪は積み重なり、押し潰され、密度や硬度を増してやがて氷河になります。
パタゴニアは全季節型氷河と言われてますが、それでも夏だからこそ氷河クルーズが出来ました。
正直、真冬の厳しさは分かりませんが、帰国日に立ち寄った「プンタワリチュ遺跡(Pinta Walichu)」で、洞窟に描かれた壁画群を見ながら、パタゴニアの代名詞である強風をもろに体験しました。
先住民の過酷な生活を少し実感しました。

Written by 岩井真理(ブラジル)