
旅行と聞くと、「癒し」「非日常」「ご褒美」といったポジティブなイメージが浮かぶもの。
でも、夫婦旅となると案外、そう単純ではありません。
ポジティブシンキングがモットーの私でも、価値観のズレ、段取りの違い、疲れと空腹による険悪ムード…!? による衝突は避けられないのです。
私たち夫婦も最初は、そんな「文句の言い合い」からのスタートでした。
それが今では、旅行するたびに「夫婦って面白い」と思えるようになっています。
今回は、過去3回の夫婦旅の記録を通して見えてきた、「夫婦・家族旅」を楽しむ3つの極意をお届けします。

新婚旅行以来の夫婦旅は、私が10年働いた会社を退職した翌月でした。行き先は、ニューヨーク!20代で『Sex and the City』を見て以来、憧れ続けた街です。
この旅は私のリクエストで実現したので、スケジュール管理は私が担当することに。
幸いなことに、私と夫は時間のペース感覚が近く、お互い積極的に行動したいタイプ。なので、1週間の旅行プランは、詰めに詰め込みました!
その結果、旅行中に3回大きく衝突することになります。揉めたきっかけは以下の3つ。
・セントラルパークでのサイクリング中、夫の体力が尽きた時
・炎天下の中、道に迷って目的地にたどり着けなかった時
・空港バスが時刻表通りに来ず、焦りながら1時間近く待った時
暑さで体力を奪われると、決まって夫の機嫌が悪くなるんです。焦りや疲れから夫は「こんなことになったのは君のせいだ」と私を非難。
それに対して私も「はぁ?人のせいにするとか意味わかんない!」と反撃に出ます。
道端で言い争いになった私たちは、通りすがりのニューヨーカーに「ヘイヘーイ、リラ〜ックス」となだめられる始末。

親切なニューヨーカーの手前、一旦落ち着きを取り戻しますが、不満は2時間は引きずります。無口になったり、どっちが先に謝るか牽制し合ったり。
素敵な景色に出会ったり美味しいものを食べたりしているうちにお互い機嫌は戻るんですが、せっかくの旅先、不機嫌に過ごす時間はもったいないですよね。
この夫婦旅1回目で学んだことは、「相手が不機嫌になるポイントを把握しておくことはとても大事だ」ということです。
お互いの不機嫌ポイントを知り、対応策を立て実行することで、揉める可能性を減らせます。
夫が不機嫌になるのは、体力を消耗するスケジュールや、時間に余裕がない時。
一方、私が不機嫌になるのは、夫が撮った私の写真がイケてない時(半目が多すぎる!)や、「君のせいだ」と言われた時。
そこで、私たちが考えた対応策は以下の4つ。
① 旅のプランは、時間と体力に余裕のあるスケジュールにする。欲張らない。
② 写真を撮る時は、カウントダウンや「はいチーズ」と声をかける。
③ 相手のせいにしない。「君のせい」と言わない。
④ 「旅は二人で作るもの」という共通認識を持って、確認し合う。
初回旅での衝突から得た学びは大きく、次回以降の夫婦旅に大きく役立ちました。

夫婦旅2回目は、台湾への温泉グルメ旅。大学時代を台湾で過ごした夫は地理にも明るく言葉の壁もないため、夫が「頼れる存在」として、がぜん輝き出します。
夫の手配のもと移動はタクシー、バス、電車を使いこなし、訪れた先々で台湾の方たちとの会話を楽しむ余裕もあります。
慣れている言葉や土地勘があると、ストレスは一気に下がりますね。
私が夫に通訳を頼む時は、都度、感謝の言葉を伝えるようにしました。夫はとても満足気です。
その結果、台湾旅2泊3日の間、トラブルも衝突も一度もなく楽しい時間を過ごすことができました。
うまく行った原因は、ストレス要因がなかったことが大きいですが、さらに主体的に動いてくれた相手に感謝を表すことで、お互い気持ち良くいられますね。
ということで、旅の極意2つめは、「相手の行動に対してリスペクトを示そう」です。
また、相手が得意とする領域には口を出さず、素直に従う方がスムーズに進むと感じました。

3回目の旅先であるタイでは、観光と食べ歩きとマッサージが目的です。バンコクはマッサージ店が多く、歩き回って疲れても、すぐに癒されてパワーチャージができるのが良いですね。
治安が良く、街歩きにもとても便利なエリアであるので、別行動でお互いやりたいことをするという選択肢も取りやすいです。食事の時に行動報告をし合ったりと会話が増えました。
そんな快適バンコク旅での気づきは、夫と自分の“意外な一面”を再発見したことでした。
宿泊したホテルには屋外プールがありましたが、うっすら緑がかった水に落ち葉がたくさん浮かんでおり、人もおらず閑散としていました。
出かけ際に、夫がフロントでプールの営業時間を尋ねると「今もご利用可能ですよ」とのこと。私は心の中で「ええ〜!」と驚き、「次はこのホテルを使わない」と即座に決めました。
しかし夫は「掃除した方がいいと思います」と、笑顔で伝えていたのです。さらに、ホテル帰館後にも「プール、掃除しました?」とこれまた笑顔で確認まで。
「よくそんなにはっきり言えたね」と驚く私に、夫は「開放している設備なら、使える状態であるのが当然でしょ」との返事。
思い返せば、イギリス留学時代の彼にはそんな一面もあった気がします。しかし、マカオ生活の中では周囲に強めな人が多くて出番がなかったのかもしれません。
一方の私は、事なかれ主義の一面を持っています。知らない人に言いにくいことは言わないし、関心がなければスルーしてしまいます。
普段は気にしていないけど、実は「それ、おかしいんじゃない?」って言える人に憧れがあるのかも。そんな人は自分軸をしっかり持っているように見えるからかもしれません。
私は「ぶれない自分でありたい」という願望を抱いているんだと気づきました。同時に、その一面を持つ夫を頼もしく思えたことが嬉しかったのです。

バンコク旅の経験から、夫と自分の意外な一面に気がつくことができました。旅は非日常であるからこそ、普段見えていなかった一面が見える機会が訪れます。
これぞ、極意その3「旅は相手を再発見するチャンス」です。
人は多面体です。相手や自分が持つ面を多く知ることで、より理解を深めることができます。相手の言動に怒りや悲しみを覚えても、自分の言動に落ち込んでも、それが相手や自分のすべてではないと一旦落ち着くことができますよね。
旅は、ふたりの“違い”があらわになる時間。だからこそ、「こうあるべき」にこだわらず、「こんな自分たちもアリかもね」と笑える柔らかさが大切なのかもしれません。
思い出は、順調な日だけじゃなく、少しズレたり、うまくいかなかった日にも生まれます。
次の旅では、どんな“極意”が生まれるでしょうか?
Written by 周さと子(マカオ)