
海外移住を考える時、多くの人がビザ、住まい、仕事、語学準備など、現地での生活のことで頭がいっぱいになってしまうかもしれません。
でも、出発前に年金のこともしっかり確認しておくべきだと強くお勧めしたいです。
「年金なんて私たちの世代はもらえないでしょ」と言いたくなる気持ちは分かります。私もそうでした。
でも、高齢になった時に、本当にゼロでもいいのしょうか?
40代になってリタイア後について少し具体的に考えられるようになってきた今、実感が湧いてきたトピックです。
今回のコラムでは、移住前に知っておきたい「年金の現実と備え方」について書いてみたいと思います。

メディアやインターネット上で、「年金は崩壊する」という声をしばしば見かけます。でも、日本の年金制度は簡単には崩壊しないと私は考えています。
支給開始年齢が上がったり、受給額が少し減る可能性はありますが、完全にゼロになることは極めて考えにくいです。
日本の公的年金は現役世代からの保険料と国庫負担で支えられる仕組みであり、制度が維持されるよう法律で定められています。
私も海外に出て、他国の状況をよりリアルに知るようになり、日本の年金制度はまだ大丈夫だと確信するようになりました。
また、年金の最大の強みは「終身で支給される」という点です。
2024年の日本人女性の平均寿命は女性87.14歳ですが、私の周りを見てもそれより長生きする人は少なくありません。
年金は長生きリスクに対応できる数少ない制度であり、物価スライドもあるので、民間の積立などでは代替しにくい部分です。

ただし、日本の年金は納付期間が10年に満たない場合、1円ももらえません。
この「10年ルール」を知らずに若いうちから海外へ出てしまい、受給資格を失う人は少なくありません。
あと数年払っておけば月数万円でも受け取れるのに、それを逃すのは本当にもったいないことです。
私の場合、20代後半に1年間留学して帰国後日本で働く予定だったので、年金を継続したまま出国していたのが結果的に正解でした。
納付期間が10年に届かない場合、海外移住後でも「任意加入」という制度を使って保険料を払い続けることができます。
この任意加入は60歳になるまで続けられるので、自分の意思で任意加入し続け、保険料を払い続ければ国民年金を積み立てることができます。
支払いは自動で行われるわけではなく、継続意思の表示と納付の管理が必要ですが、それさえできれば海外生活を続けながら日本の年金受給資格を確保できます。

では、もし「10年ルール」を満たさず、年金を1円ももらえないまま高齢になって日本へ帰国した場合、どうなるのでしょうか。
貯金や資産があればそれを切り崩して暮らすことになりますが、医療費や住居費がかかる中で資産が底をついた時、頼れるのは生活保護になるかと思います。
生活保護は最後のセーフティネットであり、必要な人が受けるべき制度ですが、資産や持ち家を手放す必要があったりと、自由度が大きく制限されます。
「国民年金は数万円しかもらえないから意味がない」と思うかもしれませんが、その数万円があれば生活保護を受けずに済むかもしれません。
年金を受給しながら働いたり、資産運用を続けたり、自分の力で生活する選択肢を残すことができます。
年金があるかないかは「自分で生きていけるかどうか」「老後に選択肢を持てるかどうか」の違いに直結するのです。

令和7年度(2025年度)の国民年金保険料は月額17,510円。保険料は毎年見直され、翌年度は17,920円に引き上げられる予定です。
この金額を高いと感じるか安いと感じるかは人それぞれですが、老後の自分を守る最低限の保険料として考えると、支払う価値は十分にあると思います。
私の住むオランダもそうですが、70歳間近になって年金支給開始の国が多い中、日本では60歳から受給可能なのは大きな安心材料です。
また、移住先が社会保障協定を締結している国であれば、一定条件で年金加入期間を合算できる場合もあります。
「年金はもういい」と思っていても、実際には老後の生活費の一部をカバーする存在として、年金の有無で安心感が大きく変わります。
つまり、年金単体で考えるのではなく、移住先の年金制度、個人年金、投資などと合わせてシミュレーションすることが大切です。

最後になりますが、若い間は海外で老後資金を準備せず、年老いて日本のお世話になる、というのは違うと私は思います。
しかも、これからの生活保護制度は、今より保障の少ないものになっていく可能性は十分にあります。
だからこそ、できる準備をしておくことが、自分だけでなく大切な人たちを守ることになると思うのです。
「今はまだ若いから関係ない」と思うかもしれません。でも、いずれ誰もが年を取ります。手遅れになる前に対策を取る必要があります。
まずは自分の年金納付年数を確認し、必要であれば任意加入で「10年ライン」を確保、可能な限り満額に近づけておくこと。
併せて、在住国の年金制度や個人年金についても理解を深め、確認しておくこと。それが未来の自分を守る何よりの自衛策になると思います。
Written by 藤村ローズ(オランダ)