
サイゴン動物園の外壁に描かれた、全長300メートルにわたるプロパガンダ壁画
Xin chào!(シンチャオ)こんにちは。ベトナム・ホーチミン在住のグローバルキャリアコーチ、Yukaです。
今年の9月2日、ベトナムは建国80周年を迎えました。
首都ハノイでは早朝から大規模な軍事パレードが開催され、数日前のリハーサル期間からすでに多くの市民が徹夜で場所取りをするほどの盛り上がりだったといいます。
私の暮らすホーチミンでも、街中に赤い国旗が掲げられ、オフィスでも国旗のデコレーションや記念撮影をするなど、温かな祝賀ムードに包まれていました。
中でも印象的だったのが、この日のために市内中心部にあるサイゴン動物園の外壁に描かれた、全長300メートルにわたるプロパガンダ壁画です。
これは4月30日の南北統一記念日のパレードの様子をモチーフにしたもの。
赤や黄色を基調とした力強いタッチで描かれた兵士や市民たちの姿からは、「国家を誇りに思う」という気持ちが今も強く根付いていることが伝わってきます。

プロパガンダアートが描かれた、カフェレストラン「Propaganda」
「プロパガンダ」と聞くと、どこか政治色が強く、戦争や統制のイメージが先に立つかもしれません。
しかし、ここベトナムで見かけるプロパガンダアートは、もっと日常に溶け込んだ独特の“味わい”を持っています。
建国記念日や統一記念日といった節目に街角に登場する告知ポスターはもちろん、カフェのインテリアや雑貨アイテム(ポスターやスマホケースなど)にも使われており、「ベトナムらしいレトロアート」としての地位を確立しているようにも感じます。
もともとは社会主義体制のもとで国の方針や価値観を伝える役割を担ってきたプロパガンダアートですが、いまの若い世代にとっては、必ずしも政治的な意味合いで受け止められているわけではなさそうです。
むしろ、「ちょっと古くて、かっこいいポップアート」という視点で、カルチャーの一部として楽しむようになってきている印象を受けます。

「自然体のナショナリズム」というと少し不思議な響きかもしれませんが、ベトナムでは「自分たちの国や歴史をさりげなく誇りに思う」という雰囲気が日常の中に根付いています。
それを象徴するのが、こうしたプロパガンダアートのあり方ではないでしょうか。
レトロで、ちょっとポップで、でも芯に“誇り”がある。そんな表現が、アートという形で街中に自然に存在しているのです。
この国の人たちが、どのように「らしさ」を守りながら次の時代にそれを表現していくのか。その変化の過程を間近で見られるのは、とても興味深く楽しみなことでもあります。
もしベトナムを訪れる機会があれば、ぜひ街歩きをしながら、そんな視点でもベトナムの風景を味わってみてくださいね。

シンガポール、タイを経て、ベトナム現地企業で働きながらグローバルキャリアコーチとしてのパラレルキャリアを実践中。プライベートでは中高生の二人息子の母。
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Written by 大野由佳(ベトナム)