イギリスの春にしては暖かく、柔らかい日差しの降り注いだ2021年4月12日。ついに、ついにパブのテラス席が解禁となった。ロンドンではクリスマス前から、全国的には1月5日から始まったロックダウン以来、今年初である。
パブをこよなく愛するイギリス人の友人らと、今年初めての再会を祝って乾杯!おお、なんという輝かしい、栄光の瞬間であったことか!
世界的にまだまだ予断が許せない状況ではあるが、いつの日か海外旅行が解禁になる明るい未来を見据えて、今回はイギリス文化の象徴であるパブについてご紹介したい。
イギリスのパブは、日本の居酒屋ともバーとも違う。もっと気軽に、ドリンクとおしゃべりを存分に楽しむところだ。
「ワンドリンク、ワンフード」などの決まりもなく、おつまみなしで飲み物だけで心ゆくまで長居ができる。無論テーブルチャージなどけしからんものも無し!地方のパブでは気さくなオーナーとの掛け合いも楽しい。
イギリスのパブといったらやっぱりビール。イギリスでビールといったら、Lager(ラーガー)とBitter(ビター)にざっくり分別できる。
Lagerは炭酸が強く、冷たくしていただく。日本の「キリン一番搾り」を想像してほしい。Bitterは炭酸は弱め、常温でいただく。色が濃いめで味わい深く、イギリスではこちらのほうが主流と言っていい。
イギリス人主人は、「Lagerはビールじゃない。イギリスのビールはBitterだ」と言い切る。
夏の短いイギリスではキンキンに冷えたビールよりも、常温でゆるゆると飲み、麦芽の味が楽しめるビターの方が向いているのかもしれない。むろん、夏の暑い日に外でバーベキューという時は、冷えたラーガーをいただくこともある。
ビールと相性がよく、まずハズレがないのがFish & Chips!
ではどのように注文するのかというと、メニューなどはないのであらかじめ何を飲むか決めておくこと。一通りの飲み物はどこにでも置いてある。
が、ここはイギリス。まずは何はともあれ、ビールを飲もう!
パブに入ったならば、まずカウンターにあるビールのパンプに近づき、そのパブが提供する、いわゆる樽から直にいただく「生ビター」の種類をチェック。瓶ビールも置いてあるが、せっかく生が楽しめるのに瓶を頼むのは悲しすぎる。
笑顔で明るく”Hello!! ”と挨拶してから、堂々と、はっきりとオーダーしよう。
”Can I have a pint of XXX please! ”感覚的には、「XXXのビール大グラス一杯お願い!」。
ビールはかならず、pint(パイントと発音/568ml)か、half pint(ハーフパイント/パイントの大体半分の小グラス)で注文しよう。ちなみに、ほとんどの男性はpintでオーダーする。ハーフパイントの小グラスでは「男がすたる」そうだ。
さて、旅行者であればどんなビターを頼んでいいやら、迷うかもしれない。
大混雑の都会のパブでいかにもアルバイトの若者には使えないかもしれないが、大体はどんなパブでもバーマンやオーナーは喜んでおすすめビールを教えてくれるはずだ。
”What bitter do you have?”「ビターは何がありますか?」
”Which one is the local bitter?”「地元のビターはどれ?」
”I would like to have bitter … What’s your recommendation?”「おすすめのビターは何?」
ノーフォークのパブにて。左がビターのパイントサイズ
おすすめを聞くとだいたいは、”Would you like dark or light ? ”「濃いのがいい?軽いのがいい?」と聞いてくるので、”I’d like something dark/light please! ”「濃いめ/軽めのやつがいいな」でOK!
おすすめを言われたら、”I’ll have that one, then. ”「じゃあ、それをいただくわ!」でオーダー完了。わいわいと立ち飲みしてもいいし、席が空いていたらどっしり座ってじっくりお酒をいただこう。
最近では食事を出すパブも増えてきたが、大体はレストラン席とパブエリアは分かれているので心配ない。心ゆくまでビターを楽しもう。
ちなみに、都会のパブと田舎のパブではだいぶ様子が違う。都会ではお店の外にちょこっとだけあるアウトドアエリアを陣取り、People watchingを楽しむ。
田舎では緑のパブガーデンが気持ちよく広がり、束の間の夏の夜にゆっくりとビターをそそる。「イギリスの夏は最高ね!」と心から言える瞬間である。
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