海外で日本語教師として10年以上日本語教育に携わってきたが、私にとってこの仕事は「職場に行くのが楽しみ!!」と心から思える最初の仕事だった。
海外に住んでいながら日本と繋がっていられる感覚は私にとってかけがえのないものだし、目を輝かせて日本文化について質問してくる学習者たちの一人一人にこの上ない愛着を感じる。
「あいうえお」から始まった学生達とのその後の日本語でのメールのやりとり、他愛のない会話に充実感がみなぎる。語学を通しての文化交流を授業のたびに満喫できる喜び。こんな楽しい仕事があるだろうか!
幼児でも社会人でも、彼らとの交流によって自分が学べることは計り知れないし、そのためなら安い月給でも、長い通勤でも構わない。
海外に長く住んでいれば「日本語教えてくれる?」と友達に頼まれることもあるだろうし、なんとなく面白そう。。。と日本語教師の仕事に興味をもっている読者も多いのではないだろうか。
が、日本人だからといって誰もが日本語を教えられるわけではない。例えば、
・「学校に行く」「学校へ行く」どっちが正しいの?
・「さらに」と「それに」の違いはなんですか?
・「は」と「が」のちがいは?
・「て形」の活用がわかりにくいです。もう一度全ての活用を教えて下さい。
と聞かれれば、案外たじたじになってしまうのでは?
どんなお仕事なのか、一体どうやって始めるのか、日本語教師珍道中まっさかりの筆者が数回にわたってその実態をご紹介いたします!
大学院の学生たちと記念写真!
今回はざっくり何が必要なのか、どのように始めるのか見てみましょう。
日本語教師になるにはなにが必要なのか。資格についてはネットで検索すれば大体のことは推察できる。行き当たる回答は、
・日本語教育能力試験に合格する
・大学で日本語教育専攻
・認定された教育機関での420時間の日本語教師養成講座終了
のどれか一つを持っていることになるだろう。
現在日本在住で「これから日本語教師を目指したい」と言う方々には、この上記のどれかを選択することをお勧めする。
というか、どれかは持っていないとまともな就職はほとんど不可能といっていいのが現状である。
では海外に住んでいて、今更大学にもいけないし、検定試験を受けにだけに里帰りもできないし。。。この場合はどうするのか?
概して、海外では日本ほど資格に縛られることがなく、日本語教師の職につくことは可能である。
ここで大卒ではあっても教育及び日本語教育とは無縁だった私が、どのようにシンガポールで日本語教師となったのかをご紹介したい。
なお、私は永住権を持っていたので就労ビザの心配がなかったという利点があったことを最初にお断りしておく。
左:SONYでビジネス日本語研修、右:シンガポールの大学でのボランティア時代
簡単にいうと、シンガポールで民間の日本語教師養成講座で修了証を取得、その後大学でボランディア、語学学校に就職、下積みをしてから、専門学校に転職。
イギリスに移住してからは大学の語学講座で教鞭をとることになった。
最初の大学でのボランティアで初めて大勢の学習者との学びがあり、なんと楽しく心はずむ職場であるのかを実感し「絶対に自分もこうやってクラスを持ちたい!!」と心に誓ったのである。
専門学校に転職してからも、フルタイムではなかったので空いている時間にさらにパートでの仕事を追加で探した。すると口コミやソーシャルメディアのLinked Inなどから短期のプロジェクトの話が多々入るようになった。
地元の中学校の課外授業、大学院での短期集中日本語クラス、日系企業からのビジネス日本語の依頼などである。
東南アジア、特にシンガポールでは概して日本語教育が盛んであるため、このような機会に恵まれたといっていい。この時期は我ながら貪欲に、どんな仕事でも進んで受けて経験を積んだ。コツコツ下積みが必要なのは他の仕事と同様なのです。
とにかく経験と実績があれば、日本で取れる「資格」について細かく聞かれないのも海外で働く利点と言える。
数年後にイギリスのノーフォーク地方へ移住。同じ日本語教師の職でも、イギリスの片田舎ではまったく様子が違った。ただでさえ少ない日本語教育の場では、すでに地元に根付いている日本語教師がいて入り込む隙はない。
痺れを切らして地元の中学校の校長に直談判して放課後の日本語クラスを開講、ボランティアで中学生のクラスを持った。もちろん「日本語のクラスなんて要らないよ」と断られること、無視されることがほとんどで、これには相当の根気が必要だった。
その後家庭教師を頼まれた時は快諾して、とにかく日本語教師としての活動を続け、やっと約1年後にロンドンに近い地方の大学に仕事を見つけた。先述の通り、長めの通勤でも構わずこの職場に飛びついたことは言うまでもない。
就労ビザ取得の必要がなければ、このように長期戦で日本語教師になることは可能である。(逆にビザが必要であれば、先述の資格のどれかを持っていることが強みになる。)
語学学校の就職も、国によってまたタイミングによって採用条件は多種多様である。
最後に海外で日本語教師として働くために必要なことまとめると、
・大卒であること:海外では日本語教育に限らず、就労ビザを取得するのに必要な場合がほとんど。
・その国の教育機関で必要とされる資格を取得していること:例えば、イギリスの公立の学校で教えるには必ずQTS(Qualified Teacher’s Status) が必要。
・日本語養成講座の修了証を持っていること:民間での講座で学んでもOK.
・ボランティアの経験:経験や実力が重視される海外ではボランティアであっても好意的に受け取ってくれることは多い。
よってまずは地元にある、もしくはオンラインの日本語教師養成コースに入って基礎を学び、ボランティアから始めてみることをお勧めする。
もし私のように「これだ!」というひらめきがあったら、突き進むのみ。長期戦でも日本語教師の道は開けてくること間違いない。「求めよ、さらば与えられん!」の精神で頑張りましょう!
次回は日本語教師の仕事の種類、シンガポール、イギリスでの日本語教師経験談をご紹介します。
Written by アレン真理子(イギリス)