
今回の世界ウーマンインタビューは、プロアナウンサーの五戸美樹さんです。
元ニッポン放送アナウンサーで、現在はフリーアナウンサーとして文化放送やJ-WAVEなどに出演していらっしゃいます。
また、トーク講師、本の執筆、オンラインサロン運営者としても精力的に活動されており、昨年には声の知識とスキルに特化した研究所も立ち上げていらっしゃいます。
ファウンダーの藤村ローズが定期的にトークレッスンを受けているという繋がりから、今回のインタビューの機会を得ました。
親しみやすい笑顔からポンポンと紡ぎだされる言葉のテンポの心地良いこと!声を自由に操りわかりやすく説明くださいます。さすが声の専門家。
周囲の人からは「タフ!」と形容されるそうですが、美樹さんの声への情熱とパワーの源をじっくり伺いました!
事務局:美樹さん、本日はどうぞよろしくお願いします。早速ですが、アナウンサーを目指したきっかけ、経緯を教えてください。
美樹:はい、大学生の時にアナウンススクールに通ったのが直接のきっかけです。
それまで演劇やミュージカルをやっていまして。将来、女優としてやっていくことは難しいだろうなと思っていたのですが、エンターテインメイント業界で仕事がしたいとマスコミ就職を目指したんです。
当時「マスコミに行く人はアナウンススクールに通うといいらしい」という噂があってですね(笑)、TBSアナウンススクールに通いはじめました。スクールでは現役アナウンサーさんが体験したことをいろいろ聞かせてくれるんです。
そこで「人の役に立てる素晴らしい仕事だ!」と感激してアナウンサーになることを決意しました。全国受けて、たくさん落ちて、ニッポン放送で初めて内定をもらいました。
事務局:やはりアナウンサーになるのは狭き門なんですね。
美樹:そうですね~、東京キー局のアナウンサーは3000人に2~3人だけ合格する割合です。試験は順番があって、東京から始まって次の大阪、名古屋の準キー局で倍率1000倍程。その次の札幌、福岡、広島などの基幹局で倍率500倍くらいです。
キー局、準キー局までは記念受験が多くて、地方局まで行くと本気でアナウンサーを目指している人達が多いです。地方局の最終面接で残るのは大体同じメンバーだったりするんですよ。

イベント司会の一コマ
事務局:美樹さんは狭き門を潜り抜けて抜けて晴れてニッポン放送のアナウンサーとして採用されるわけですが、憧れのアナウンサー生活はどのようなものだったのでしょう。
美樹:いや~正直言うと、二度と戻りたくない地獄の時代でしたね!
事務局:ええ!地獄の時代ですか?
美樹:私、本当に下手だったんですよ。箸にも棒にもかからないというか。
話す声も、原稿の読み方も、相槌も、笑い方も「全部変だ。アナウンサー向いてない」って言われ続けました。
中継リポートは「今から公園行ってどんな天気か喋ってきて!」って言われて外に出るんですけど、最初の頃なんて「いい天気です」ぐらいしか思い浮かばなかったですし、取材してきたものを原稿にまとめて話す構成力なんかも全然なかったんですよ。
先輩方のレベルがはるかに高く感じて、劣等感を抱えましたね。
事務局:そ、そんな厳しいんですね、アナウンサーのお仕事って。どうやって克服されたんですか?

担当するラジオ番組の開始直前の様子
美樹:これは一つ一つクリアしていくしかないんですよね。語彙力を上げるためには、先輩がやっている中継レポートを全部書き起こして、言葉のレパートリーを自分のものにしていきました。歩きながら今日の風はこうで、天気はこうで、、と考えて繰り返し練習しました。
原稿をまとめて話す構成力という点に関しては、番組に放送作家という喋る用の原稿を書くプロがいるんですけど、その方に軽く弟子入りして書いた原稿を繰り返しみてもらい直す力をつけました。
伝える内容に関しては、2~3年目には割と出来るようになった実感がもてました。ただ、声だけは改善できなかったんですよね。
事務局:声ですか。
美樹:はい、当時は今よりもっと高い声で話していたんですよね。その方が明るく聞こえると思っていましたし、先輩達も比較的高い声で話されていて、それに倣うように言われていたのもありました。
でも実は、高い声って喉をぎゅっと絞めるので滑舌が悪くなるんですよ。高い声を出すときは、喉頭に力を入れて、上に引き上げ、声道を短くして発声しているんですね。
外側の「喉頭筋」に過度な力が働いています。それは、喉頭筋肉群・神経群が過度に緊張するということで、舌骨に繋がる筋肉「舌骨筋」にも影響してしまい、滑舌が悪くなっていた、ということなんです。
普段の声では「ニッポン放送からのお知らせです」って言えるのに、高い声にするとそれが言えない。でも当時は、滑舌の悪い原因が高い声だとは知られていなくて、毎日2~3時間高い声での発声をひたすら練習していました。本番ではやっぱりうまく言えないんですよね。

ある時、ご一緒していた声優さんから「普段の声のほうがいい声だよ」と言われたんです。本当に驚きでした。それまでは高い声がいい声だと思いこんでいたので、そんなはずはないと。
でも実際に自分の声を確認してみると、用意された原稿を読むときと、自分の言葉でレポートするときの声が違うことに気づいて、後者のほうが緊張なく楽に出ている声だなと感じたんです。
そこからナレーションの声も普段の声に近づけるように「このくらいかな?」と声の研究を繰り返して、だんだんと自分の声を見つけていきました。普段の声でニュースが読めるようになった時、初めて自信になりました。
事務局:美樹さんの声が変わった瞬間ですね!声を変えてからの周囲の反応はいかがでしたか?
美樹:そうですね、単純に「うまくなったね!」と言われましたし、「性格変わったよね」とまで言われることもありました。それまで出来ないと塞ぎ込んでいましたからね。人のせいにしたり、うまく発声できる後輩を見ると嫉妬したり(笑)、で気分が落ち込むこともありました。
事務局:そうだったんですね。ご自身の声を見つけたあとにフリーアナウンサーとして起業されたんですよね。その経緯を教えてください。
美樹:「働き方改革」で残業規制が厳しくなったんですよ。私の入社当時は朝から晩まで働いている先輩方がいたんですけど、どんどん規制が厳しくなって仕事する時間が制限され始めました。
早朝に出演したら、昼過ぎには帰らなくてならない。平日に出演したら、土日の司会業などの依頼は全て断らなければならないんです。
良くいえば会社は従業員を守ってくれているんですけど、悪く言えばエンターテインメントに働き方改革は合わないんです。私は「もっともっと話したい!仕事させて~」と思っていました。
それと私は下手な期間が長かったので、会社の中で「あの子は下手だよね」っていうイメージがついているような気がして、他局で勝負してみたいと思ったというのもあります。

事務局:独立されてから現在まではどのような経緯があるのですか?
美樹:ニッポン放送を退社してからはavexに2年所属しました。その間、アナウンサーとしての出演だけではなく、台本も書いて出演するという放送作家のようなことをしたり、アイドルや駆け出しのアーティスト達でMCで何をしゃべっていいかわからないという方達に向けて話し方を教えたりもしていました。
avexとの契約終了後は別の会社と業務提携を結んでいます。委託される仕事と自分で取ってくる仕事の2本立てになりました。トーク講師として話し方講座も本格的に始めましたね。
事務局:自分で仕事を取ってくるというのは、どのようにされるのですか?
美樹:そうですね、出演の仕事に関しては、局や人に挨拶に行く・常に出たいと言い続けるようにしています。
例えば現在パーソナリティをやっている文化放送の「走れ歌謡曲」という番組出演のきっかけで言うと、私2018年に本を出しているんですけど、「出版した本のプロモーションをしたい」とラジオ局の知り合いという知り合いに連絡していて、立川志の輔師匠のラジオ番組に出してもらう機会を得たんです。
そのゲスト出演後に本を持って会社をうろうろして「ほかの番組にも呼んでくださーい、なんならレギュラーの仕事もくださーい」とアピールして回ったんですよね。その時の編成局次長が面白いと思ってくださって繋がったお仕事です。
事務局:ははははははは!素晴らしい営業力!そうそう、美樹さんは本も「人前で輝く!話し方」「就活のリアル」と2冊出されていますよね!

「具体的でわかりやすい」と評判の2冊
美樹:はい、本の出版に関しても出版社に企画書をもって営業にいきました。
事務局:かっこいいな~!チャンスを自らつかみに行くんですね!そこが美樹さんの魅力の一つでもありますね。
美樹:エネルギーが余っていたのかもしれません(笑)ニッポン放送時代のもっと話したいのに話せないという状況から、思う存分仕事ができるようになったからでしょうね。
事務局:トーク講師としてもストアカやオンラインサロンでの講座を積極的に開催されていますよね。ストアカ講座を拝見しましたけど、手軽な価格でプロアナウンサーにマンツーマンで指導してもらえるなんて、すごい時代になったなぁと率直に思いました。
美樹:やはり継続していただくことが大事ですので、今のところ続けやすい価格設定にしています。
事務局:美樹さんの講座では、声や話し方はもちろん、内容・構成・語彙・コミュニケーションまでトークを体系的に扱っているのも特徴ですよね。
美樹:はい、ラジオ局で培ってきた事がすべて生かされていると自負しています。プレゼンや原稿作りの構成作家要素、声の知識や話し方などのアナウンサー要素、ベストパフォーマンスを発揮するためのメンタル管理要素、オンラインでの見せ方アドバイスなどトータルサポートができます。
体系的に教えることができるという点は、ちょっと大げさですが、国内では自分が一番得意なのではないかと思います!

事務局:昨年には声に関する研究所「一般社団法人 声・脳・教育研究所 」を設立されています。設立のきっかけを教えてください。
美樹:これはね、私の無駄な正義感といいますか。
事務局:無駄な正義感(笑)
美樹:実は日本は声の研究に関して、アメリカなどの声先進国と比べて100年遅れていると言われているんです。日本には「自身の経験による発声法」を根拠として教えるボイストレーナーが多く、メディアや書籍にも正しい知識のアップデートがされていない状態です。
ニュースの読み方を得意とされている講師は多いですが、声の本質を勉強されてきたという方はほぼいらっしゃいません。
「口を大きく開けなさい」「高く明るい声で話ましょう」といまだによく耳にしますが、口をむしろ大きく開けないほうが滑舌はよくなります。
声帯の収縮を行っている筋肉は無意識下で脳が動かしている、というような「声と脳の関係」がわからないと、本物の声の知識とは言えないのですが、実際は喉で声を調整しようとする古い知識であふれています。
話し方講座を受講しでも意味がないというビジネスマンの方が多いのはそのためです。
誤った知識やトレーニングで本来の声を見失った人たちをこれ以上増やさないためにも「声とは何か」という基本にして重要な知識を正しく伝えたいと思ったのが研究所設立の目的ですね。
事務局:日本が声の後進国だなんて知りませんでした。研究所の活動としては具体的にどのようなことをされているのでしょう。
美樹:最初の事業として、ボイストレーナーの育成を行っています。一緒に研究所を立ち上げた代表の山崎広子は、長年声と脳を研究してきた専門家です。声と脳の関係を医学、音声学、音響心理学、知覚認知心理学等によって得た研究結果を根拠としたトレーニングを提供し、資格認定やその後のフォローアップを行います。一般の方向けにはオンライン教材として入門動画も発売中です!
事務局:お話しを伺っていると、自分の本来の声を見つけてみたくなります。声の魅力 ってなんでしょう?
美樹:心身を悪くする声があれば、心身を良くする声もあるんです。自分が声を出して、その声を聞いて、大脳旧皮質の本能領域でいいなと思えれば、自己肯定感は強くなります。心身の恒常性を保ち、さらにまた良い声が出る、こんなプラスの循環にすることができるのが、声の最大の魅力だと思います。
事務局:へぇ~!声って身体や生き方にも大きく関わってくるんですね。
美樹:はい、声が変われば日本が変わります!

事務局:それはすごい!美樹さんは声の先進国へ導くパイオニアですね。お仕事や活動をする上で大事にしていることはありますか?
美樹:そうですね、いつも、誰に対しても、どんな仕事でも、「自分=アナウンサー」でいることを大事にしています。ラジオ番組など出演時間が2~3時間になることが多いですが、その間ずっと演技するというのは無理なんですよね。
演技をしない素の自分を出せるほうがいいに決まっていますが、素の自分がアナウンサーでないと齟齬が生じてしまいます。アナウンサーといえば誠実で、報道姿勢があり、謙虚で素直でストイック。そんな理想像とかけ離れないように、出演する時だけアナウンサーを演じるのではなく、日常でも意識して生活するようにしています。
もちろん寝坊しちゃうことも、忘れ物することも、食べ過ぎちゃうこともありますけどね。でもやはりアナウンサーが自分のアイデンティティそのものであること、これを大事にしています。
事務局:アナウンサーが自分のアイデンティティ。声の仕事はまさに天職のように感じました。それでは最後に世界ウーマン読者へ伝えたいこと、アドバイスがあれば、ぜひお願いします。
美樹:海外で働かれているみなさんを尊敬します。私は日本語学の勉強でいっぱいいっぱいで、英語は断念してしまいました。比較言語学も興味があるので、海外の皆さんと繋がって、いつか勉強会などができたら嬉しいです。
アドバイスとしては、欧米圏の女性は特に声が低いので、日本女性は声が高すぎることに気付きやすいと思います。相手の、声という音を聞いてみてください。
本日はありがとうございました!
みなさん、「自分の本来の声ってどんなんだろう?」と気になりはじめたのではないでしょうか。
世界ウーマンでは4月10日日本時間21時~22時30分で五戸美樹さんによる「オーセンティックボイス入門講座~あなたの本物の声を知っていますか~」を開催します。
自分らしい声で話したい方、声の印象を良くしたい方、楽に話せるようになりたい方、ぜひこの機会に自分の声を知る手がかりを見つけてみましょう。