
椎茸や納豆など、バラエティ豊かなおにぎりが並ぶショーケース
ここ数年、北欧のデンマークでは日本文化への関心が急速に高まっています。
特に、健康志向の強いこの国の人々の間で「ヘルシー」というイメージが定着している日本食は、大きな注目を集めています。
そして、今コペンハーゲンの街角で新たなブームを巻き起こしているのが、日本のソウルフードです。
現地では「Onigiri」と呼ばれている「おにぎり」です。

お昼時には、店外にまで行列が続く日も
昨年、コペンハーゲンの人気商業エリアにオープンしたおにぎり専門店は、あっという間に話題の中心となりました。
ランチタイムには、まるで日本の人気店のような大行列ができます。
店外に設置されたベンチでおにぎりを頬張る人々の姿は、デンマークでこのシンプルな食べ物が、いかに関心を集めているかを物語っています。
知人のお子さんの学校でも、校外学習の際などにおにぎりを持参する現地のお子さんがいるそうで、その浸透度の高さが伺えます。
では、なぜおにぎりがここまで人気なのでしょうか。
最大の理由は、「手軽なファストフード」でありながら「グルテンフリー」という点が、デンマークの健康トレンドに完全に合致していることです。
パン文化のデンマークにおいて、小麦を使わないおにぎりはグルテンアレルギーを持つ人はもちろん、健康を意識する人々にとって非常に魅力的な選択肢となっています。
さらに、具材を選べばプラントベース(植物由来)の選択肢も豊富に用意されています。
ご飯と海苔が基本の組み合わせであるこの食べ物は、ヴィーガンの方でも安心して楽しめる、現代のウェルビーイングな食のトレンドに寄り添ったファストフードと言えるでしょう。

私が選んだのは、青唐辛子入りの味噌とツナマヨネーズ
さて、気になる味ですが、日本の定番とは少し異なる進化を遂げています。
私も噂のおにぎり店を数回訪れましたが、日本で定番の梅干しや昆布はなく、並んでいるのはツナマヨネーズや照り焼きチキン、唐辛子味噌などです。
味がはっきりしていて、パンチのある具材が好まれているようでした。
意外だったのは「納豆おにぎり」が定番として並べられていることです。
あの香りや粘り気が、まさか北欧の地で受け入れられるとは思ってもいませんでした。
これも、健康意識の高い人々が、納豆の持つ栄養価を高く評価している証拠かもしれません。
しかし、最も注目すべきなのは、使用されている日本米と質の良い日本の海苔です。
海苔はパリパリとした別添え式ではなく、最初から巻かれた、しっとりとしたタイプ。
ご飯と具材、海苔の一体感が生まれ、日本人の視点から見ても、その仕上がりは十分に「美味しい」と感じられるクオリティです。
なお、日本では「おにぎり」か「おむすび」かという議論がありますが、デンマークをはじめヨーロッパでは「Onigiri(おにぎり)」が主流のようです。
少なくともデンマークでは「Omusubi(おむすび)」という表記は見かけません。「Sushi」や「Ramen」と同様に、日本語の音がそのまま定着しつつあるようです。

店内には、お刺身やキムチなど、手軽なお惣菜も並びます
薬膳の観点から見ると、おにぎりの基本であるお米は、心身のエネルギーの源となる「気」を補ってくれる食材です。
特に、お米を主食とするアジア人にとって、なくてはならない優れた存在と言えるでしょう。
そこにミネラル豊富な海苔が加わり、具材によって自在に栄養バランスを変えられるこのシンプルな食べ物は、非常に理にかなっています。
忙しい日でも、手に持ってサッと食べられる“手のひらサイズの健康食”。
デンマークのおにぎりが持つ「手軽さ」と「栄養」のバランスは、忙しい現代人の食生活に寄り添う素晴らしい形だと感じています。
日本から遠く離れた北欧で、新しい食のトレンドとして定着しつつある「Onigiri」。
日本への愛情と現地の健康志向が融合したこのブームは、今後も目が離せません。
Written by 高見節佳(デンマーク)