各国中央銀行が資産の保全・多様化のために2010年を境に買い増しを続けているものはなんだと思いますか?
それは【ゴールド】です。
今回はゴールドについての全体像を書いてみたいと思います。
こちらは楽天証券が掲載している東京金価格の推移とその年に起きた出来事のグラフです。
東京金の取引が始まった1982年3月からこれまでを見ると、2000年頃を境に上昇に入りピークで6倍の価格がついています。
上昇のきっかけは、2001年9月に起きたアメリカ同時多発テロでした。この事件をきっかけに、アメリカと米ドルへの信頼が揺らぎ、世界的にドル建て資産からゴールドへの動きが加速。その後も、
2003年 イラク戦争
2007年 サブプライムローン問題
2008年 リーマンショック
2010年 ギリシャショック
2011年 アメリカ国債の格下げ
2016年 英国・EU離脱決定
2017年 北朝鮮のミサイル
などの世界的な経済不安が続き、ゴールド価格は長いスパンで上がり続けることとなりました。
『有事の金』という言葉があります。
東京金価格は2000年以前が下降トレンドですが、このもっと前からリスクの強い時には価格が上がる『有事の金』という考えがありました。
1989年米ソ首脳による冷戦終結宣言がなされて以降は、アメリカの強い経済を背景にドルへの信頼感が高まりました。
「ゴールドを保有しなくてもドル建て資産を持っていれば大丈夫」というドルへの信頼感・安心感が広がり、世界的に資産の内訳が、ゴールド→米ドルにシフト。
それが2001年9月アメリカ同時多発テロで一転。ドルへの信頼感が揺らぎ、再び『有事の金』が注目されるようになりました。
通貨とは発行国の信頼によって「同価格のモノと交換できるモノ」と信認を得ていますが、その価値は、発行国の債務状態や経済状態、他国との関係等によって揺らぐものでもあります。
一方ゴールドは、誰かの借金の影響を受けるわけではなくモノとしても万国共通で、ゴールドはどの国に行ってもゴールドであり、通貨とは異なる概念のある商品です。
2007年サブプライムローン問題、2008年リーマンショック、2010年ギリシャショックなどは、国と通貨に対する信頼が大きく揺らぐ代表的な事件でした。
2007年サブプライムローン問題、2008年リーマンショックを契機に世界的な経済不安が発生し、各国は景気の下支えのために大規模な金融緩和をスタートさせ、借金の規模を拡大させていきます。
国の抱える借金はその国に対する不安要素であり、その国の通貨や資産に対するリスクを感じさせるものとなりました。
2010年ギリシャ・ショックでは、ギリシャが財政赤字をごまかしていたことが発覚し、ギリシャと似た財政状況と言われていたポルトガル、アイルランド、イタリア、スペインなどの国債が暴落。
これらの国の国債を保有しているユーロ圏の金融機関も危険視され、ユーロ危機に発展しました。
国の経済不安やリスクの増大は、その国の通貨や債券などを保有している「国や投資家」の資産価値を下げます。
その場合「国や投資家」としては、高リスク資産を手放し、低リスク資産に組み替えを行いたいと考えるものですが、これらの重大事件が起きた時期、高リスク資産から資金を引いても引いた資金を移す先が限られていました。
ここで注目を浴びたのが負債0で、どの国にも属さないゴールドであり、継続的な大口のゴールド需要はゴールドの価格上昇を後押しする材料になりました。
中央銀行が積み増す裏に一連の流れから、新興国の中央銀行を中心に外貨準備政策の見直しが行われ、ゴールドの保有量が上がり始めました。
中央銀行全体規模で見ると2010年にはそれまでの売り手側から買い側に転じ、その後も中央銀行は大口買い手として、ゴールドの需給に大きな影響を与えています。
WORLD GOLD COUNCIL(WGC)の発表によると、2018年の世界の中央銀行の純購入量は651.5トンに達し、前年同期比で74%増加、全体で約34,000トンのゴールドを保有しています。
2019年現在貿易戦争や自然災害、金融ショックや様々な不安のタネが増えている中、各国中央銀行は無国籍・無借金で流動性が高く、供給が限られているゴールドの保有量を高めることで資産を多様化し、リスクに対応できる体制を整えてきています。
日々未来を考えている皆さまの、資産の内訳はいかがですか?
積極投資をしながら、資産の保全をできる体制を組んでおく必要もありますね。色々な国を知り、色々な投資を知り、ご自身の判断で自分の投資を作り上げてくださいね!
※この記事はグローバルインベストメントアカデミーのスタッフブログをリライトしたものです。
Written by 長谷川春奈(日本)